歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~

なつきいろ

第229歩目 ぶっ放すだけの簡単なお仕事!


 前回までのあらすじ

 私を踏み台にしたー!?Σ(・ω・*ノ)ノ

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《各隊、清聴》

 俺とアテナが城壁の上でしょうもないコントを繰り広げていると、突如として頭の中に一つのメッセージが流れてきた。

《敵の数はおよそ50000。3方向より侵攻予定である。各隊は指示があり次第、速やかに移動されたし》

 ムッシュさんからもたらされた情報に、一気に緊張感が高まる。
 というか、50000もの大軍とか、シャレにすらならないような気がするのだが......。


 そうそう、戦闘に入る前に軽く『紫の三連星』の役割を紹介しておこう。

 まず、『飛翔の勇者』の名の如く、その『飛翔』の加護を使ってガイヤさんが空から偵察を行い、更には『測定』という加護を用いて魔物の軍勢を調べる流れだ。
 また、常に上空より状況を確認しつつ、都度情報をもたらす役目も担っている。
 
「あの空を飛べる加護は便利そうだよなぁ」
「だねー! 空から爆弾とか落として無双できそうだよねー(o゜ω゜o)」
「それは無理なんだってよ。『例え相手が誰であろうと命は奪わず』というのが、ガイヤさん達の上司であるマザー・キャリアの教えなんだと」
「教えとかー(笑) よく言うよねー、原───」
「不謹慎だからやめろッ!」

 ガイヤさん達世代には関係のない話だ。
 いつまでもグダグダと根に持つのは友好関係的にもよろしくない。


 さて、現状を調べるのがガイヤさんの役目だとすると、それを全員に通信するのが『伝達の勇者』ことムッシュさんの役目である。
 加護である『伝達』を駆使して、レベル数だけの人数に情報を素早く伝えることが可能となっている。その効果範囲はレベル数=kmと、恐ろしく有能な加護だ。

「『伝達』も良いよねー! いつでもどこでも歩と話せるー( ´∀` )」
「アテナ......なんていじらしい奴なんだ、とか思わないからな? 四六時中やかましいのはマジで勘弁」
「まったくもー、照れちゃってー! 歩は私のこと好き過ぎでしょー(〃ω〃)」
「ねぇ!? どういう流れでそうなったの!?」

 きゃっきゃと本当に嬉しそうにしながら、俺の首にぶら下がっているアテナ。
 ここまで自信過剰で図々しいのもアテナクオリティーといったところか。


 最後に、前線で戦っている人達が安心できるよう、拠点及び民草を守る役目を担っているのが『防衛の勇者』ことコルテガさんだ。
 加護である『防壁』を駆使して、指定した地域に巨大な防壁を展開して敵からの攻撃及び侵入を防ぐものとなっている。言うなれば、『鉄壁の勇者』キャベツさんの建物ver.といったところだろうか。

「この3人の加護は本当に徹底しているよな。裏方役のスペシャリストだもんな」
「だねー。そーいうのが好きなんでしょー(・ω・´*)」
「ん? どういうことだ?」
「加護ってのはねー、その人の好きなものが反映されるからねー(`・ω・´)」
「え!? そうなの!? だから、俺も『ウォーキング』なのか!?」
 
 ここにきて、俺も知らない新事実。

 確かに、俺やナイトさん、時尾さんやサキ、キャベツさんなどなど、今考えてみれば加護持ちの多くは自分にとって都合の良すぎる加護を所有していたような気がする。

 そして、それが神の意図するところだったということは......。

(勇者が特別な存在、神の使い、神の駒であるというのも、あながち間違いではないということか)

 とても考えさせられる内容だ。
 ということは、勇者達は得られる加護にすら制限もありそうな気がする。

 まぁ、勇者ではない『付き人』である俺には全く関係ないことだろうが。

「そういう認識でいいのか?」
「(´・ω・`)」
「おい」
「しーらなーいヽ(o・`3・o)ノ」
「なに、その雑なはぐらかし方!?」

 もしかして、知られてはいけないことだったのだろうか。
 アテナの「やっちまったなーr(・ω・`;)」みたいな表情が、それを物語っている。

(......というか、この駄女神はダメ過ぎるッ!)


 ※※※※※


 まぁ、そんなこんながあって、舞台を戦場に戻そうと思う。

「いやいや。50000って......」
「すごーい! すごーい! あーははははは( ´∀` )」

 きゃっきゃと楽しそうにしているアテナとは異なり、俺は茫然自失となっていた。

 魔物の軍勢が大地を埋め尽くす光景を見ただけでは「すげー」という感想しか抱かなかったが、さすがに50000という数字を改めて聞いてしまうと肝が冷える。

 昔、魔物部屋で100近くもの魔物と死闘を繰り広げたことはあるが、それとは雲泥の差だ。

(......というか、本当に勝てるのか?)

 思わず、そんな考えが浮かんでしまう。

 ガイヤさんの調べが間違っていなければ、魔物の数は約50000。
 対して、こちらは騎士が500に、冒険者が1500ほどだ。

(25倍とか......HAHAHA)

 ただ一つ注意しないといけないのは、騎士の仕事は都市の防衛という点である。
 所謂、専守防衛というやつだ。

 そもそも、魔物の撃退は冒険者の仕事だから仕方がない。

 非常事態に「そんなバカな!」と思われるかもしれないが、騎士と冒険者とはそういう違いがあり、この世界ではそういうものだと認識されている。(※世界編! 【冒険者】参照)
 
 つまり、魔物の軍勢50000に対して、俺ら1500の冒険者が撃って出ることになる。

「いやいやいや! 25倍もの相手に撃って出るとか正気かよ!?」
「正気だよーΣヾ(´∀`*」
「なんで!?」

 世界の管理者であるアテナ曰く。

 この世界の常識には籠城という概念は存在しないらしい。
 戦とは、互いが戦場に出て戦い合うものなんだとか。

「公平にってお前な......要はあれか? 籠城ズルしてんじゃねー! ってことか?」
「とーぜーん! ズルをしていいのは私と歩だけだからねー(`・ω・´)」

 以前にも説明したと思うが、この世界は少し特殊となっている。
 
 まず、相手の弱点を突くことは禁止的かつ禁忌とされている。
 それを行うと、周りからは卑怯者扱いされ、嫌悪・侮蔑の対象ともなる。
 常に真っ向勝負が美徳とされ、それが常識であり、当然と認識されているのだ。

 つまり、今回に関して言うと、籠城という手段は押し寄せる魔物に対して非常に有効的ふこうへい───それ即ち、ズルになり得るということだ。

「本当にお前は人生イージーモードだな! ありがとうございますッ!」
「ほーんとー感謝してよねー! あーははははは( ´∀` )」

 俺の異世界生活は非常にベリーハードだが、アテナと一緒ならば非常にベリーイージーとか......。

 アテナには感謝しかない。
 いや、この駄女神はすーぐ調子に乗るから、ほどほどの感謝にしておこう。

 話を戻そう。

 結局のところ、数の不利はどうしても否めない。
 あまりにも圧倒的な戦力差に、ただただ不安しか抱けない。

(......これが烏合の衆とかなら問題ないんだけどなぁ)

 確か、モートマ伯爵曰く、敵の総合的な強さは推定Sランクだったはず。
 一方、こちらは騎士がAランクに、冒険者はA~SSランクの玉席混合PTだ。

 おまけに、魔物の大軍を統率しているとおぼしき指揮官の強さは不明ときている。

(......これ、無理ゲーじゃね?)

 そんな考えが俺を暗い気持ちにさせる。
 どうあっても勝てるビジョンが全く見えない。

「ハァ..................」
「どうしたのー(。´・ω・)?」

 そんな絶望している俺に一条の光を与えてくれたのは、やはりこいつだった。

「いやさ? 50000の大軍とか、さすがに勝てなくないか?」
「よゆーでしょー(o゜ω゜o)」
「だよなー。キリのいいところで逃げるか───って、え? 余裕?」
「よゆー! よゆー! むしろ、なんで勝てないと思ったのー(。´・ω・)?」
「よ、余裕......だと!? だってさ、圧倒的に不利じゃないか?」

 豊満な果実を俺の背中に「これでもかーヽ(o・`3・o)ノ」と押し付け、そのかわいい顔を俺の肩に「よっこらせー(・ω・´*)」と乗せて、全身から甘い香りを漂わせているアテナの発言に耳を疑った。

(確かに、SSランクである俺ならSランク相当の魔物など相手にすらならないが......)

 いかんせん、魔物の数が多すぎる。
 数は力だ。圧倒的な数の暴力の前には抗えないだろう。

 しかし、アテナの答えは違うようで───。

「なにが不利なのー(。´・ω・)?」
「なにって......敵は50000もの大軍だぞ!? 圧倒的に不利だろ!」
「んー? それのなにが不利なのー?r(・ω・`;)」

 アテナは心底分からないといった表情をしている。
 様子を窺うに、ふざけているとか、おちゃらけている訳でもないようだ。

「え? それはどういう───」

 そこまで言い掛けて、俺は言葉をつぐんだ。
 いま、この場に相応しい言葉はそんなものではないだろう。

「......勝てるんだな?」
「50000程度ならー、らくしょーだねー(・ω・´*)」
「ご、50000程度って......マジかよ」

 戦慄を禁じ得ない。
 50000もの大軍を全く意にも介さないアテナに───正直ドン引きだ。

「なーんでドン引きなのー! 私を敬えーヽ(`Д´#)ノ」
「はいはい、アテナは偉い偉い」
「にへへー! ありがとー(*´∀`*)」
「......」

 ちょろかわいい。
 今は背中にいて、ぽんぽんできないのが惜しまれる。

「それで? その「らくしょーだねー(・ω・´*)」とやらの策を伺おうか」
「えっとねー、ぶっ放すだけの簡単なお仕事だねーo(≧∇≦)o」

 タイトル回収、ありがとうございますッ!

 ・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・。

 その後、アテナの作戦通りに従った俺は───。

「うぅ......ハッ! ど、どうだ!?」
「魔物は全滅、ううんー、消滅したねー(o゜ω゜o)」
よね!?」

 ものの見事に50000もの大軍を蹴散らすことに成功した。

 後に、勇者がもたらした奇跡の勝利とも謳われるこの大戦おおいくさは『狂飆きょうひょうのハロウィン』と、そう語り継がれていくことになる。

 これは後世において人類史の転換点と評されている。
 軍事史の転換点であり、歴史の転換点とも見做されている。

 ■■と■■に対する、■■の優劣を決定づけた事件であり、■■こそが勝敗を決する力だと、明らかにした出来事。俺という人間の、栄光と苦難の歴史の、真の始まりの日である。

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後書き

『紫の三連星』のステータス一覧です。

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『ガイヤ』(SSSランク) レベル:880

種族:人間族(アメリカ人)
年齢:42
性別:♂

職業:正統勇者
称号:『飛翔』の勇者/ゴーレム破壊者クラッシャー/スライム討伐者バスター
   インキュバス征討者キラー

体力:32000
魔力:88000
筋力:4000
耐久:30000
敏捷:33000

加護:『飛翔』 Lv.880 534/881
   『測定』 Lv.775 429/776
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『ムッシュ』(SSSランク) レベル:880

種族:人間族(アメリカ人)
年齢:40
性別:♂

職業:正統勇者
称号:『伝達』の勇者/ゴーレム破壊者クラッシャー/スライム討伐者バスター
   インキュバス征討者キラー

体力:4000
魔力:120000
筋力:3300
耐久:3800
敏捷:3600

加護:『伝達』 Lv.880 534/881
   『連携』 Lv.775 429/776
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『コルテガ』(SSSランク) レベル:880

種族:人間族(アメリカ人)
年齢:41
性別:♂

職業:正統勇者
称号:『防壁』の勇者/ゴーレム破壊者クラッシャー/スライム討伐者バスター
   インキュバス征討者キラー

体力:30000
魔力:80000
筋力:3800
耐久:44000
敏捷:3200

加護:『防壁』 Lv.880 534/881
   『強固』 Lv.775 429/776
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