歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~

なつきいろ

第218歩目 とある休日の一日②!教え子モリオン①


 前回までのあらすじ

 アテナと休日を満喫した!

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 サブタイトルを『教え子モリオン』に変更しました。
 更に、サブタイトル変更に伴い、サブタイトル番号も『①』へと変更しました。

(変更前)モリオン⑩ → (変更後)教え子モリオン①

 以前のサブタイトルは変更しません。
 また、今後はモリオン以外にも変更になるキャラクターが登場します。

 よろしくお願いします。

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□□□□ ~モリオンの場合~ □□□□

「サクラ。アテナをよろしく頼むな?」
「はぁい。お任せくださぁい」

 のぼせてしまったアテナの介抱をサクラに任せ、俺は次なる目的地へと足を向ける。

 ちなみに、介抱をサクラに任せるのは無責任なように思えるかもしれないが......。

 あれ以上アテナと一緒に居たら、俺の理性のタガが外れる恐れがある。
 それに、介抱中にいたずらし過ぎて、アテナがア○顔ダブルピース先生にでもなったら大変だ。

 というわけで、客観的・論理的に考えて、サクラに任せるのが一番だと判断した。

 そんな訳で、ちびっこ達と共に有意義な休日を過ごすべく次なる目的地へと向かう。
 次は順番的には一の妹であるドールとなるのだが......。
 
「モリオンは自分の部屋でいいんだよな?」

 ちょっとした理由で後回しだ。
 ドールは後程存分に構ってあげる予定である。

「そうですよぉ。お昼寝してますぅ」
「......またか。モリオンも本当によく寝るよな」

 モリオンもアテナに劣らず寝ていることが多い。
 まぁ、起きていたら起きていたで、ひたすら何かを食べてばかりなんだけどさ。

 アテナの『入浴』が、モリオンの場合は『食欲』となった感じ?

 モリオンがリビング(食欲)に居ない場合は、決まって『俺の部屋で寝ている』か『自分の部屋で寝ている』かのどちらかである場合がほとんどだ。

 そうそう。モリオンは基本的に二大欲求(『食欲』・『睡眠欲』)である。
 入浴も好きではあるようだが、アテナ程ではない。性欲は言わずもがなだ。

「用事があるならぁ、モリオンちゃんを起こしましょうかぁ?」
「それはさすがにかわいそうだろ。いいよ、俺もモリオンと一緒に昼寝してくるわ。サクラ、ありがとな」

 風呂後はなんだか眠くなるもの。
 ここはモリオンと一緒に昼寝と洒落込もうかな。

 俺はサクラに礼を告げて、モリオンのいる部屋へと足を向けた。

 ・・・。

 二階へと上がり、モリオンの部屋の前へとやってきた。

 ここからは何も聞こえない。静かなものだ。
 アテナの所に向かう前は大丈夫そうだったので、

「......」

 とは言え、さすがに気にはなる。
 サクラに現状を訊ねたいところだが......プライベートの詮索はご法度だ。

 俺は気になる気持ちを振り切って、モリオンの部屋の中へ入るとする。

───こんこんッ。

 モリオンは昼寝中だというから遠慮なく扉を開けると、そこに広がるは別世界。

 まるでどこまでも続いていると錯覚してしまいそうになる程の広々とした肥沃な大地。
 ヘカテー様曰く、アルテミス様の部屋を模したという豊かな自然と生命に溢れた動植物達。

 魔動駆輪内ではあるのだが、本物の世界だと見間違えるばかりの光景がそこにはあった。

(本当、この部屋に来る度にヘカテー様の偉大さをしみじみと感じるよなぁ)

 毎度のことながら、モリオンの部屋の広さには驚かされる
 初めて見た時なんて、「物理法則とかどうなってんの!?」と驚愕したものである。

 ちなみに、モリオンの部屋のお題は『これで甘えん坊なモーちゃんもあーんみーん!(安心と安眠を掛けているとかなんとか) ドラゴンモーちゃんでもあーんみーんだよー☆』らしい。


 閑話休題。


 広々とした部屋内を適当に歩かずとも昼寝をしているモリオンを発見。

《......くー......くー......くー》
「......まぁ、そうだよな」

 モリオンが自分の部屋で昼寝をしていると聞いた時からある程度は予想していた。

 いま俺の目の前には巨大な黒い塊がある。
 当然その黒い塊の正体はモリオンで、所謂竜化しているということになる。

「しっかし、ドラゴンってのは本当に大きいよな。実際、どれぐらいの大きさなんだ?」

 モリオンの鋼鉄のような体をパンパンと軽く叩きながら一人ごちる。

 そう、単なる一人言に過ぎなかったのだが......。
 ここから俺はまさかの飛躍の時を迎えることとなる。

「モリオンちゃんはぁ、全長15mですよぉ。竜族の中ではぁ、まだ小さいほうかとぉ」
「うぉ!? び、びっくりした。一人言に返事するなよ。......というか、よく知ってるな?」
「今測りましたぁ。魔動駆輪わたしの中にあるものならぁ、何でも測れますよぉ」
「どんだけ優秀だッ!......ん? 今何でも測れるって言ったよね? まさかとは思うが......アテナの胸の大きさは?」
「ますたぁの世界基準ですとぉ、アテナちゃんはぁ───」
 
 本当に教えてもらえました(笑)

 真偽の程は定かではないが、一言「大きい」と。
 前々から大きいとは思っていたが、具体的な数字で出されると思わず唸ってしまう。

(うーむ。さすがはアテナだな。......ん? 待てよ?)

 その瞬間、俺は悪魔的発想を閃いてしまったのだった。

「悪い、サクラ。忙しいだろうが協力してくれ」
「暇なんでぇ、いいですよぉ」
「暇なんかい!?」

 そこからの俺はサクラに根掘り葉掘り訊ねていくこととなる。

 訊ねる内容はアテナ・ドール・モリオンについてだ。

 俺はちびっこ組の保護責任者だと自認している。
 ということは、責任を持ってちびっこ組の成長の記録を見守る必要がある。

(あれだ、あれ! 健康診断みたいなものだ!)

 そう自分を納得させて、サクラ監修のもと、ちびっこ組の健康診断を行う。
 診断内容は『身長』や『体重』、『スリーサイズ』、『肥満度』辺りでいいだろう。
 
 病気だなんだは調べる必要が全くない。
 何かあっても【ヒール】で回復すればいいだけだ。
 それに【ヒール】で治せない病気についてはどうすることもできない。

《......ぅあ? アユム......なのだ?》
「はいはい。歩さんですよ」

 そんな訳で色々と調べている間に、どうやらモリオンが目を覚ましたようだ。

 ちなみに、診断結果は比較対象が無いので何とも言えない。
 ただ、アテナがほんの少しばかり肥満ぽっちゃり気味らしいので、食事おかし制限が決定した。
 
「悪い。起こしちゃったか?」
《そんなことないのだ。アユムはどうしたのだ?》
「一緒に昼寝を......と思ったけど、なんだか目が冴えちまったな」
《じゃー、一緒に遊ぶのだ!》

(遊びか......。寝起きからお勉強も嫌だろうし、それが無難か)

 俺は「分かった」と首肯する。
 万歳をして《やったのだー!》と喜ぶモリオンの姿を見て思わずほっこり。

 問題は『何をして遊ぶのか』なのだが......。

《格闘ごっこするのだ?》
「いや、それはマジで勘弁してくれ」

 風呂でさっぱりしたばかりだというのに、汗を掻きそうな遊びは遠慮したい。
 それ以前に、格闘ごっこは俺ではなくニケさんやヘカテー様とやってくれ。

 モリオンを始め、ニケさんやヘカテー様の戦闘狂バトルマニアぶりは正直辟易としてしまう。

《お風呂入ってたのだ?》
「さっきまでアテナと一緒にな」
《......(くんくんッ)ほんとーなのだ! 良い匂いがするのだ!》
「嗅ぐな。嗅ぐな」

 お兄さんは匂いが気になるお年頃なんだからさ。

 そもそも、まだ若いからといっても油断はできない。
 匂いに関しては、毎日風呂に入っていれば大丈夫という訳でもないしな。

《じゃー、我とも一緒に(お風呂に)入るのだ!》
「遊びはどうなった!?」
《お風呂で遊べばいいのだ!》
「合理的!?」

 いや、しかし、再びお風呂に入るというのは......。

 夜にも入ることを考えれば、都合三度の入浴となる。
 風呂は好きなほうだが、一日に三度も入浴となるとさすがにね?

(うーん。何も温泉旅行に来てる訳じゃないしなぁ......)

 そんなことを考えていたら、モリオンの沈んだ顔が目に入る。

《我と一緒は嫌なのだ?》
「ち、違うぞ!? モリオンと一緒のお風呂は楽しいから! 楽しいから!!」
《じゃー、一緒に入るのだ!》
「待て待て。俺はさっき入ってきたばっかりなんだよ」
《じゃー、また入ればいいのだ!》
「じゃー、じゃない。じゃー、じゃ」

 モリオンの攻勢はとどまるところを知らない。

 このままでは押しきられてしまう。
 何かモリオンでも納得できる理由を考えないと。

「えっとな。......そうだ! お腹いっぱいになったらもう食べられないだろ? それと一緒なん───」
《我は食べられるのだ!》
「ア、ハイ。ソウデスネ」

 上手い説得方法だと思ったが、余計にモリオンの目を輝かせる結果となってしまった。

(......そうだよなぁ。モリオンって満腹になったことあまりないんだよな。迂闊だった)

 いつもあっけらかんとさせられる程バクバクと食べている(人間ver.の)モリオンを見て「あんな小さな体のどこに入っているんだ?」と思っていたが、このドラゴンの姿を見ると「人間基準で考えている俺のほうが間違っているんだよなぁ」と思わされてしまう。

 とりあえず、埒があかないのでお風呂以外で遊びたいと伝える。

《お風呂がダメなら、何して遊ぶのだ?》
「そうだな......」

 そして、俺が選んだ遊びはというと───。


 ※※※※※


───ゴシゴシゴシ。
───ザシュザシュザシュ。

 飛び散る流水に、煌めく光沢。

(ふんふんふーん♪)

 俺は口笛を軽快に吹きながら、その光景を楽しんでいた。

 この状況が楽しくて楽しくて仕方がない。
 今の俺は銭湯絵師もびっくりな程の軽快な動きを見せていると思う。

「モリオンさーん。気持ち良いですかー?」
《あぁぁああ。気持ち良いのだぁぁあああ》

 その答えに満足した俺は再び口笛を軽快に吹きながら、それを持つ手に力を入れる。

───ゴシゴシゴシ。
───ザシュザシュザシュ。

 現在俺は『神聖なるたわし』を片手に洗車もとい洗竜をしている。

 モリオンがお風呂で遊ぶことにこだわった理由。
 それは「さっぱりしたいのだ!」とのことだった。

 そこで、モリオンの巨体から車を連想した俺が洗竜を提案したという訳である。
 さすがに車のサイズとしてはちょっとばかし大きいが......HAHAHA。

(ふぅ。この巨体、やりごたえがあるなッ!)

 額を拭う仕草をして、歯をニカッと見せる俺はどこか好青年に見える......はず。

 元々、洗車は趣味の一つでもある。
 というのも、俺が地球もとい日本に居た時の休日の過ごし方は、専らウォーキングをするかドライブ、はたまた車&バイクの洗車をするかのいずれかだった。

 そのうち、ウォーキングと洗車については休日には必ず行っていたものだ。
 ちなみに、引っ越してからはウォーキングとバイクの洗車が主な趣味となる。

 そういえば、洗車頻度のあまりの多さに見兼ねたお袋からは、よくこう言われていた。

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「まるで彼女に対する愛情ぶりね」
「まぁ、間違ってはないな。車&バイクこいつらは俺の相棒パートナーだしさ」
「うーん。物を大切にするのは良いんだけどね。母親としては、そろそろ本当の相棒パートナーも見つけて欲しいものだわ」
「う、うるせぇな! 余計なお世話だ!」
「居ないなら、お母さんがなってあげようか? まだまだ十分イケると思うの」
「はぁぁあああ!? イケる訳ないだろ!......というか、お袋が彼女とか泣けるわッ!」
「ふふッ。あっくんたら照れちゃってかわいい♡」
「お母様!? それ、本当に止めてくれます!?」
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 うっ......。頭痛がしてきた。
 お袋のことを考えるのは止めにしよう。溜め息しか出ない。

 そんなことよりも、今は楽しい楽しい洗車もとい洗竜の時間だ。

───ゴシゴシゴシ。
───ザシュザシュザシュ。

 久々の趣味なせいか、『神聖なるたわし』を持つ手にも自然と力が入る。

「どこか痒いところはないか?」
《......んぁ?》
「......おぃ。今寝てただろ?」
《ね、ねてな───》

 またバレバレな嘘を吐こうとする。
 目が微睡んでいるのが良い証拠だ。

 それに、寝るほど気持ち良かったということであれば嬉しくもある。
 
「嘘吐いたらご飯抜きだぞ?」
《ご、ごめんなさい、なのだ。寝てたのだ》
アテナダメな姉を見習うな、と何度も言っているよな? 悪い子になるぞ?」
《わ、我は悪い子なのだ?》

 青ざめた顔をして、ぶるぶると震えているモリオン。

 最近はアテナに限らずモリオンにもあまり構ってあげられなかったので、知らぬ間にアテナのダメなところが伝染しつつあるようだ。

(なんだかんだ言っても、義務教育って重要だよなぁ......)

 教育の大切さをしみじみと考えながら、再び痒いところを訊ねる。

「このへんか?」
《もうちょっと上なのだ》
「上ね───っと、これか」
《そこなのだ!》

 一際キラキラと光沢を放つ場所を発見。

 やっぱりあった。
 痒いと言っていた時点である程度の予想はしていた。

 俺はそのキラキラしたものに手を掛ける───前にやらなければならないことがある。

「あー、テステス、テステス。本部、応答願います。本部、応答願います」
《アユムは何を言っているのだ?》
「いいんだよ。こういうのはシチュエーションが大事なの。......(ごほんッ)では、改めて───モリオン隊員! これより回収作業に入ります!」
《の、のだ!》

 俺が軍人さながらのビシッとした敬礼をすると、それに合わせるかのように慌ててビシッと敬礼を返すモリオン。

 巨体ながらもかわいい。
 本当、モリオンはアテナとは良い意味でベクトルの方向が異なる癒し枠である。

(さてと、それじゃあ回収していきますか)

 ほんわかしつつも、キラキラしたものをペリペリッと剥がしていく。

《......んぁぁあああ! そこ! そこ、気持ち良いのだ!!》
「はいはい。変な声を出さないの」
 
 モリオンの言う痒い場所とは、所謂脱皮のことを指す。
 だから、こうして皮(?)───というか、鱗(?)を剥がしていく。

 まぁ、人間でいうところの日焼け後の皮向けみたいなものだな。
 
───ペリペリッ。
───ペリペリッ。

 一枚、また一枚と
 丁寧に剥がしていく必要がある理由がちゃんとあるからだ。

《ぅあうッ!》
「おぉ! これはきれいに取れたぞ!」
《はぁ......はぁ......はぁ......。き、気持ち良かったのだー》
「会心の剥がしっぷりだ。ナイトさん、喜んでくれるといいな」

 実は脱皮後の鱗(?)はとなる。

 そもそも、モリオンは竜族の端くれ───というか、お姫様である。
 なので、鱗(?)に限らず、体のあらゆるところが貴重な素材だったりする。

 そして、こうして得た貴重な素材を手紙と一緒に、武器のメンテナンスやねこみ、ねここの面倒を見てもらっているなど、大変お世話になっているナイトさんにお礼として都度送ることにしているのだ。

《売らないのだ?》
「あぁ。売らない」
《お金いっぱいなのだ》
「でも、売らない」

 目先の利益よりも、感謝の気持ちを伝えることとビジネスパートナーとしての信頼を培うほうが大事だからな。

 と言っても、思ったほど金策という金策にはなったりしない。
 毎日脱皮する訳ではないし、脱皮したところでたくさん取れる訳でもないからだ。

 良いとこ、一ヶ月に2~3枚取れて、2~3億稼げるかどうかという感じである。
 そこに、アテナ達に掛かる経費のことを考えれば、収支+5000万~1億だとすると大した利益にもならない。

《よく分からないのだ》
「ちょっと難しかったか。......そうだな。モリオンの鱗(?)をあげると喜んでくれる人がいるんだよ」
《こんなもので喜んでくれるのだ? 我は偉いなのだ?》
「そういうこと。ありがとな、モリオン」
《おー! 我は偉いのだー!》
「おおぅ......。ご、豪快だな」

 人間ver.のモリオンだったら、きっと「のだー!」とかわいく万歳をして喜んでいたのだろうが......。
 今のドラゴンver.のモリオンだと、《のだー!》と叫ぶだけで、まるで《GAAAAAAAAAA!》と吼えている竜の咆哮のように聞こえてしまう不思議さよ。

《じゃー、我はいっぱい脱皮するのだ! アユム、よろしくお願いします、なのだ!》
「いっぱい脱皮するって......。マトリョーシカじゃないんだし、そんなことできるのか?」
《だいじょーぶなのだ! 我ならできるのだ! ふぬぬぬぬぬ..................!》

 脱皮をする為に踏ん張るモリオン。
 その影響で周辺の大気がかすかに震えた。

 というか、踏ん張ったところで脱皮はしないと思うのだが......。

《アユム! アユム!》
「はいはい。歩さんですよ。どうした?」
《大変なのだ! 全然脱皮しないのだ!》
「そりゃあ、脱皮は『する』ものではなく『なる』ものだしな」
《のだー?》

 ドラゴンであっても首を傾げる様はどこかかわいらしい。


 こうして、おバカなモリオンを洗竜しつつ、楽しい休日を過ごしていくのだった───。


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後書き

 次回、『とある休日の一日③』!

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 今日のひとこま

 ~脱皮との因果関係~

「あれ?」
《アユム、どうしたのだ?》
「いや、いつもよりも取れる鱗(?)の数が多いな、と......」
《そうなのだ?》

「あぁ。いつもは2~3枚なのに、今日は4枚も取れたぞ」
《そういえば、いつもよりもたくさんむずむずしてたのだ!》
「いやいや。俺に言われるまで絶対に気付いていなかっただろ?」
《いっぱいむずむずしてたのだ!》

「はいはい。分かった。分かった。......でも、増えるなんて初めてだな」
《多分、あれなのだ!》
「心当たりがあるのか?」
《ア......ア......お姉ちゃんが言ってたのだ!》

「まだ名前を覚えていないのか。これは......そろそろ本腰を入れないとダメか?」
《な、なにをするのだ!?》
「秘密。それで? アテナがなんだって?」
《ご飯抜きは嫌なのだ! ご飯抜きは嫌なのだ! ご飯抜きは嫌なのだ!》

「シ○ジ君になっていないで早く言え」
《お姉ちゃんが「温泉はいいよねー! お肌がきれいになるー( ´∀` )」って言ってたのだ!》
「まぁ、間違ってはいないが......え? なに? 美肌効果が増すと脱皮も進化するの!?」
《我もツルツルになるのだ。だから、ヌギヌギになるのだ!》

「どんな理論やねん!?」
《あと、あれもなのだ!》
「まだあるの!?」
《ヘカテーお姉ちゃんが言ってたのだ!》

「あッ。ヘカテー様は覚えたんだな。モリオン、偉いぞ!......それで?」
《「寝る子はねー、育つんだよー☆」と言ってたのだ!》
「それも間違ってはいない。......というか、それを言った本人はまるで育ってないけどな?」
《そんなことないのだ! ヘカテーお姉ちゃんはとーっても大きいお姉ちゃんなのだ!》

「それ......存在が、的なやつだろ? 寝る子うんぬん関係ないぞ?」
《そうなのだ? でも、我はドラゴンでお昼寝するようになってから大きくなったのだ!》
「あー。そういう意味なのか。分かりづらいわッ!......というか、取れる鱗(?)の数が増えた理由はそれなんじゃないか?」
《我が大きくなったからなのだ?》

「いや、そうじゃなくて......」
《じゃー、どういうことなのだ?》
「気兼ねなくドラゴンになれるようになったことで、明らかにストレスが軽減したからかと」
《すとれす......? すとれすとはなんなのだ?》

 そうだった。モリオンはそこからだったな。
 その後は久々のお勉強タイムへと突入していくのだった。

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