歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~
第139歩目 はじめての別れの挨拶!④
前回までのあらすじ
ナイトさんについて真剣に考えろと指摘された!
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□□□□ ~魔境~ □□□□
「は~~~。つっかれた~~」
「お、おつ、お疲れ様でしゅ」
ナイトさんが申し訳なさそうに、でも感謝とも取れる表情をしてお茶を出してきた。
現在俺達はナイトさんのお店にて一休みしている最中だ。
もともとはナイトさんに旅に出ることを伝えにきたのだが、いざお店に着いてみると、そんな悠長なことを言ってられる状況ではなかった。
どういうことかと言うと.....。
時は数時間前に遡る。
・・・。
ドールに「今後についてよく考えろ」と指摘されてから数分後。
今日は中央区がなにやら騒がしいな?と感じつつも、ナイトさんのお店に到着した。
そして、そこで俺が目にしたのは.....。
───がやがやがや
───ざわざわざわ
人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。
人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。
人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。
人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。
人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。人。
「うそ、、だろ!?」
思わず、嘆息してしまいそうになるほどの人の群れ、客の数だった。
こんな人の群れ、開場前のTDLでしか見たことがない。それぐらい明らかに異常な状況だった。
しかし、
「別にこれぐらいいつものことじゃぞ?」
「だよねー。むしろ今日は少ないぐらいだよー(・ω・´*)」
「ふぁ!?」
アテナやドールが言うにはいつもこんな調子らしい。
最近はあれだったが、二人をバイトに出す時はいつも開店前だったから、盛況状況なんてまるで知らなかった。
それに、俺がダンジョンから戻ってくる頃にはいつも完売していた後だったから尚更だ。
(.....と言うか、どう考えてもお店のキャパ越えてないか?これを捌けるものなのか?)
ナイトさんのお店自体は特段大きい訳ではない。
例えるなら、コンビニぐらいの大きさだと思ってもらえれば想像しやすいだろう。
そこに人の群れが押し寄せている.....。
いくらなんでも、こんな状況での仕事なんて既にバイトとかのレベルを遥かに越えていると思う。
(.....え?俺ってこんなのをアテナ達に任せていたの!?)
俺があまりの状況にしどろもどろしていると、ナイトさんのお店は更に混迷極まる状況に陥ろうとしていた。
「店員さーん。これもっと安くならなーい?」
「そ、それ、それは原材料が.....」
「あー、いたいた。店員さん。この武器を強化したいんだけど、必要な素材教えてくれる?」
「ボ、ボク、ボクのお店に.....」
「店員さん。これ修理してもらいたいんだけど、どれぐらいかかる?」
「え?そ、それ、それなら買い.....」
「ドワーフの嬢ちゃん。早く会計してくれよ。いつまで待たせんだよ」
「はわわわわわ。ご、ごめ.....」
次から次へと押し寄せてくる客に、俺に負けず劣らずしどろもどろに対応するナイトさん。
傍目から見ても、ナイトさんの目からは汗がじんわりと滲み出ているように見える。
しかも、その他にも客を待たせているようで、店の中は喧騒と怒声が入り雑じる混沌世界。
まさに魔境。
この世の地獄とはこういう状況をいうのだろう。おぉ、怖っ!
そんな状況を見て、
「はぁ.....。あのドワーフは相変わらずじゃな」
「はわわわわわー。あーははははは( ´∀` )」
「.....」
溜め息を吐くドールとナイトさんが困っている様子を楽しそうに再現するアテナ。
こんな終末的な光景を見ても飄々としている二人の姿から、これすらも日常茶飯事レベルだということが自然と伝わってくる。
(す、すげえな。二人とも.....)
と、そんな時、呆けている俺にドールが当たり前のことを尋ねてきた。
「主。ドワーフの手伝いをせんでも良いのか?」
「あ、あぁ.....。そうだな。ナイトさんも困っているみたいだし、二人とも頼めるか?」
「はーい!まっかせなさーい( ´∀` )」
「まぁ、主の頼みなら仕方があるまいの。今日もいつも通り完売させまくるのじゃ!」
そして、アテナとドールが意気揚々と走り出すその後ろを俺も遅れまいと付いていく。
こうして、俺達は半べそ気味なナイトさんを助けるべく、魔境と化しているお店に足を踏み入れたのだった。
そして、冒頭に戻る。
□□□□ ~営業の問題点~ □□□□
ようやく一息ついたところで、ナイトさんに気になる点を幾つか尋ねてみた。
本来なら別れの挨拶をしたいところではあるが、それよりも確認しなければならないことがある。
まずは、
「本当に良かったんですか?」
「な、なに、なにがでしゅか?」
「いえ、求めていた武器と違う武器を客に販売していたことです」
アテナとドールの販売方法についてだ。
結果を言えば、店の品物が完売したのだから大成功と言えよう。
ただ、その売り方があまりにも雑すぎたので気になってしまった。
俺の考える販売とは、客の求める物をより良い状況でより良い状態で販売するものだと思っていた。
だが、アテナとドールの二人は己らの魅力を最大限に利用して、客が求める物ではなく二人が売りたい物を売り付けていくスタイルだった。要は、剣を求めている客に槍を売るようなものだ。
当然、二人のやり方は誉められたものではない。
しかし、注意するべき案件かと問われれば難しいところではある。
何故ならば、客が合意した上で購入しているからだ。
詐欺ではなく合意の上での取引だからこそ、利益を上げている以上、注意するべきか迷ってしまう。
(はぁ.....。以前、コシーネさんが言っていた悪魔ってのはこいつらのことだったのか.....)
ドールもそうだが、アテナにかわいくお願いなどされてしまったら、世の中の9.9割以上の男は断ることなど不可能に近い。
アテナに対する耐性が付いている俺ですら、成功率5割台なのだから押して知るべしだろう。
だからこそ、二人に注意できない以上、被害を被りかねないナイトさんに尋ねてみた訳だ。
そして、ナイトさんの口から出た言葉は───。
「ぜ、ぜん、全然問題無いでしゅよ?」
「え?本当にいいんですか?評判が悪くなったり、信用を失ったりしませんか?」
「う、うし、失った信用は実績で取り返せばいいんでしゅ。そ、そう、そうすれば自ずと評判も高まるでしゅ」
おぉ.....。
まさに職人一徹な考え方だ。
自分の腕に自信があるからこその発言なのだろう。
いちいち信用や評判を気にしている職人は三流。
一流の職人は黙って実力を示せばいい。そうすれば結果は後から付いてくるものだ。
それを愚直に行っているのが、超一流の職人であるナイトさんなのだろう。
きっとアテナやドールも、それがわかっているからこその無茶苦茶な販売方法だったに違いない。
(.....いや、二人に限っては有り得ないな)
ただ単におもしろおかしく売り付けているに違いない。
たまたま、ナイトさんの職人気質と二人の販売方法が上手く合致した結果に過ぎないはずだ。
ともかく、アテナとドールがナイトさんに迷惑をかけていない?ことが分かっただけでも一安心だ。
ともすると、どうしても気になることがある。
それは.....。
「他のバイトはどうしたんですか?ドールに聞いた話だと、アルバイトを雇ったと聞きましたが」
「.....」
俺の言葉を聞いて、悔しそうな、悲しそうな、なんとも言えない表情で俯くナイトさん。.....あれ?どうした?
俺が気になっているのは、どう考えてもナイトさん一人で回すことのできないこの現状だ。
開場前のTDLクラスの客数なんて、例え健常者であろうと、それこそ超有能な人材だろうと、一人で回すことなど到底不可能な話だ。
それ相応の店員数がいなければ、本日のようなカオスな状況になるのは誰だって予想がつく。
当然、ナイトさんもそれが分かっているからこそアルバイトを雇ったのだろうが───。
「.....」
「.....」
沈黙が辺りを支.....。
───バンッ!
───バンッ!
「セラフィー!お菓子ー!お菓子ー!」
「姉さま!静かにせんかっ!」
「.....」
こ、こいつら.....。
今、俺とナイトさんがとても大切な話をしているというのにこの騒々しさ。
なんというか.....こう腹立たしい。
だから、
「お前ら、うるさいっ!」
───ギュム!
───ギュム!
腹に据えかねた俺は鬱陶しい二人の頬をつねって黙らせた。
「ふえええええん(´;ω;`)い、いたーいよー!ごめんなさーい!」
「ふぬぬーーー!な、なぜじゃ!?妾は注意しただけであろう!?」
なぜもくそもない!
二人ともうるさいから連帯責任だ!!
二人を黙らせた後、店内の様子を窺うとガランッとしている。
まるで無人な如く、静かで寂しげな様子になんとなくだが事情を察することができた。
つまり───。
「み、みん、みんな辞めちゃったんでしゅ.....」
「.....」
そういうことらしい。
ただ、アルバイトの子達が辞めていく気持ちも正直分かる。
「み、みん、みんな何日かは来てくれるんでしゅが、げ、げき、激務なせいかしゅぐ辞めちゃうんでしゅ」
「でしょうね.....」
俺は今日一日しか手伝ってはいないが、それでも恐ろしく疲れた。
これがほぼ毎日だと思ったら.....ゾッとする。
正直、命の危険性がある冒険者のほうがよっぽど楽な仕事だと思う。
とにかく疲労感が半端ない。
とにかく精神的な何かがごっそりと抜け落ちていく。
真面目な性格の人だと、よほど芯が強くない限りは軽く鬱状態になっても仕方がない仕事量だ。
かと言って、テキトーな人を雇ったところで、あまりの激務に嫌気が差して逃げ出してしまうだろう。
そう考えると、アテナやドールの販売方法は一見無茶苦茶なように見えるが、実は合理的なのかもしれない。
『客の為に』なんて商売をしていたら、とにかく圧倒的大多数の客を捌ききれない。
それならば、『合意を得た上でバンバン売りまくる』という戦略も一つの解決策になり得るだろう。
さて、ここまで説明すると、疑問に思う人も出てくるだろう。
「入場制限をしろよ」などや「客なんて多少待たせればいい」などなど。
残念ながら、そんなことは普通である俺がとっくに試している。
そして、結果は尽く失敗に終わった。
普通である俺が考えうることなんて、日本だから成立することであって、異世界では到底通用しないものだ。
店に入れる余地があれば客はどんどん入ってくるし、店員が接客中であろうと客は空気を読んで待つなんてことはしない。
『謙遜、遠慮なんていうものは日本人特有のものである』と今回の一件で散々に思い知らされてしまった。
そして同時に、改めてアテナの凄さを思い知ることにもなった。
有無を言わせぬ絶対的な神力というべきか、はたまた、全てに愛される存在の尊さというべきか.....。
とにかく、アテナ一人で全てが解決できたと言っても過言ではないほどの圧倒的カリスマ力を見せつけられてしまった。
閑話休題。
とにもかくにも、今回はなんとかなったが、今後はどうするつもりなのだろうか。
解決策がないのなら、いっそのこと一緒に旅に出てしまうというのも有りなのではないのだろうか。
だから、ナイトさんに今後のことを尋ねてみた。
「そ、そう、そうでしゅね.....。ま、ま、また時給を上げてみるとか.....」
「時給を.....ですか。ちなみに今はいくらなんですか?」
「い、いち、10000ルクアでしゅ」
「時給10000ルクア!?」
あまりにもぶっとんだ時給に驚いてしまった。
いや、ナイトさんが扱う品々は一級品の物なので、売上げ的にも問題無いと言えば問題は無いのだろう。
それにしつこいようだが、今日一日業務を経験した身から言わせてもらうと、業務内容的にも妥当だと言える。
しかしそれでも、時給10000ルクアとは.....。
異世界では週休なんて概念はないので基本年中無休となっている。
1ヶ月が30日となっているので、仮に毎日8時間働いたとしても月給240万ルクアとなる。
この金額はAランク相当の冒険者が稼ぐ金額なので、一般市民からしたら破格の給与となる。
それでも、アルバイトが続々と辞めていってしまうのだから、ナイトさんのお店の過酷さが窺い知れるだろう。
と言うわけで───。
「時給を20000にしようが30000にしようがダメでしょうね.....」
「そ、そう、そうでしゅか.....」
俺のダメ出しに、シュンと項垂れるナイトさん。
可哀想ではあるが、きっとお金の問題ではなく、働く環境が問題なのだと思う。
つまり、根本的な問題が解決しない以上、時給を上げたところでどうしようもないはずだ。
「そ、そう、そうなると、ま、また、また冒険者ギルドに相談しにいかないといけないでしゅね」
「また?」
「は、はい、はいでしゅ。こ、これ、これで5回目でしゅ」
「おおぅ.....」
誰が担当しているのかは知らないが、ギルド側からしてみればいい迷惑でしかないだろう。
ナイトさんには申し訳ないけど.....。
ギルド側からしてみれば、すぐに仕事を放棄するような人を紹介したという風評被害が巷に流れる危険性がある。
ナイトさん側からすれば、すぐに辞めたくなるようなブラック企業だという風評被害が巷に流れる危険性がある。
どちらにとっても、デメリットしか生まれないマズい状況だ。
コシーネさんにも、ナイトさんにもお世話になっている以上、両者が不利になるような状況はどうしても避けたい。
ここもやはり───。
「既に5回も相談しに行っているとなると.....。厳しいでしょうね」
「そ、そう、そうでしゅか.....」
またも俺のダメ出しに、シュンと項垂れるナイトさん。
(ようやく日の目を浴び出したと思ったら、また別の問題が発生するとか.....。
ナイトさんという人はどんだけ持ってない人なんだろう)
可哀想ではあるが、もはや万策尽きてしまった。
こうなったら、本来の用件を済ますと同時に、一緒に旅に出ることを提案する他ない。
(他に打開策が無い以上、ナイトさんもそうするしかないよな.....)
そう思って切り出そうとしたら、
「お、お、お客さん!お、おね、お願いしましゅ!!」
「はひっ!?」
ナイトさんが真剣に、それでも双眸にめいっぱい涙を溜めて身を乗り出してきた。
その行動が、いつもどこか控えめなナイトさんにしては珍しいものだったので、俺は驚くあまりに思わず声が裏返ってしまった。恥ずか───。
「はひっ!?だってー。へーんなのー!あーははははは( ´∀` )」
「う、うるせえな!」
本当に下らないことばかり真似する駄女神だ。
やはりこいつは置いてくるべきだったか.....。今さらちょっと後悔。
バカには構わず、ナイトさんのお願いとやらに耳を傾ける。
俺には思い付かないが、他に打開策があると言うのなら聞きましょう!
「ア、アテ、アテナちゃんと妖狐ちゃんを雇わせて欲しいでしゅ!」
「あ~.....」
なるほど。これは盲点だった。
確かにこの二人を雇うのが一番現実的だろう。実績的にも、売上げ的にも。
俺は旅に出るつもりなので、その考えはなかった。
しかし───。
「すいません.....」
「え!?」
ナイトさんは、まさか断られるとは思わなかった、という表情で驚き固まっている。
こういう光景は漫画でしか見たことがないので、実際に見られるとは思わなかった。
とりあえず、このままでは話が進まないので、ナイトさんに正気に戻って貰う必要がある。
だから、
───ペシペシ
軽く頬を叩いてナイトさんに呼び掛ける。
「ナイトさん。ナイトさん。早く現実に戻ってきてください」
「はぅ!?」
何がなんだかわからない様子であわあわしているナイトさん。ほっこりする。
アテナやドールのような美少女にはない、この素朴な雰囲気がなんとも和む。
しかし、和んでいる俺とは対照的に、
「な、なん、なんででしゅか!?お、おか、お金でしゅか!?
じ、じき、時給の2倍!い、い、いや、3倍出しましゅでしゅ!!」
ナイトさんは這い寄る混沌のように勢いよく詰め寄ってきた。
それだけこの問題に対して真剣だということだろう。.....本当のこと言い辛いなぁ。
かと言って、言わない訳にはいかないので正直に話すことにした。
「すいません。お金ではなく、旅に出るつもりなんです」
「た、た、旅!?」
「はい。だから二人をアルバイトには出せないんです」
「お、お、お客さんも旅に出るんでしゅか!?」
ナイトさん動転しすぎ!
どう考えても、この二人だけで旅に出せる訳ないでしょ!
「そ、そう、そうでしゅか.....。な、な、なら仕方がないでしゅね.....」
「.....」
打開策も絶たれ、恐らく気の許せる友人だと思っていた俺とも別れることになったナイトさんは、いまだかつて見たこともない程に落ち込んでしまった。
背景にはどよ~んの文字がくっきりと見える.....ような?
「.....」
「.....」
うぅ.....。
ナイトさんのその落ち込みようがあまりにも激しかったので、どうしても居たたまれない。
胸が締め付けられるというか、なんだったらなんとかしてあげたくなるようなそんな気持ちだ。
「あ、あの.....」
「?」
ナイトさんが怪訝そうな表情で見つめてくる。
確かに、ドールの言った通りだった。
俺にはこんな悲しそうにしているナイトさんを見過ごすことなど到底できない。
だから───。
「ナイトさんさえ良ければ一緒に旅に出ませんか?」
「!?」
ドールに見透かされた通り、結局旅に誘ってしまった。
そして、沈黙がしばらく続いた後にナイトさんが出した答えは───。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後書き
次回、外伝『アテナとヘリオドール⑤』
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今日のひとこま
~圧倒的カリスマ力~
「呼んでるのになんで来ないんだよ!」
「早くしろよー!いつまで待たせんだよ!」
「あー!もう鬱陶しいな!お前邪魔なんだよ!」
「お前のほうが邪魔だろ!ふざけんなよ!」
ナイトさんを手伝おうと、いざ店内に入ったものの、カオスな状況は相も変わらずだった。
そもそも、たかが3人店員が増えたところで、この圧倒的大多数の客数の前では焼け石に水でしかない。
とりあえず、まずは入場規制をしないと───。
「あ、あの!申し訳ありません!店内が非常に込みあって.....」
「あぁ!?兄ちゃん!何言ってるのかわからねえよ!腹の底から声出せや!」
「で、ですから.....!」
「そんなことより早く接客しろや!いつまで待たせんだ!このボケがっ!!」
くっ!!
こ、これは.....。
「何をしておるんじゃ?主」
「何って.....。客がキレ始めてるじゃねえか。下手したら暴動になるぞ?」
「なんじゃそんなことか。それなら心配はない。まぁ、見ておれ」
「見ておれって.....。何を見ろって言うんだよ?」
ドールが指差す方向を見ると───。
「いい加減にしろや!店員どこだよ!?さっさと会計しろ!」
「暑苦しい店だな、本当!てめえら、みんな店から出ろや!」
「お前が出ろや!このダボがっ!!俺はもう10分も待たされてんだぞ!」
「店員さん困ってるじゃねえか.....。ちったぁ待ってやれや!このハゲ頭!」
怒号を撒き散らす客と対応に困惑するナイトさん。
これの何を見ればいいというのか.....。
と、そんな時。
「うるさーいヽ(`Д´#)ノ」
「「「「!?」」」」
「私が話せないでしょー!みんな外でてー!」
「「「「はぁ?なーにがうるさーいだ!いいかげ.....」」」」
え?なんだこれ?
いまだ店内は騒々しいのに、何故かアテナの声だけがハッキリと聞こえる。
「いいからでろーヽ(`Д´#)ノ」
「「「「!?」」」」
「早くでないと怒るよー!」
「「「「はい.....」」」」
「まぁ、こういうことじゃな」
「ど、どういうことだ?」
「どんなに騒々しくとも、何故か姉さまの声はハッキリと耳に届くのじゃ。
こればっかりは女神様として認めざるを得なかろう。こればっかりはの」
「な、なるほど。確かに声さえ届けば、後はアテナの独壇場だもんな」
「そういうことじゃな。姉さまは天性の売り子というところかの」
「売り子~?そうとは思えないけどな」
「物を売っておるのだから立派な売り子であろう」
「売っているというよりも押し付けているようにしか見えないぞ?」
「合意の上だから問題ない」
「.....」
本当、この姉妹は.....。
最凶最悪の店員とはまさにこいつらのことだろう。
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