歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~

なつきいろ

おまけ はじめてのどーん!


こちらは他サイト様で特典としてUPさせて頂いたお話となります。
ちょうど今章と相性がいいので、公開させて頂きます。

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【時はまだアテナが異世界旅行に行く前に遡る】


□□□□ ~主神と付き神~ □□□□

ここ神界では複数の世界を、それぞれの神が管理することによって世界の均衡が保たれています。
当然のことながら、私の主神でもあらせられますアテナ様も、複数の世界を管理する神々のお一人となっています。

「ニケー。おはよー」
「おはようございます、アテナ様。よく寝むれましたか?」
「んー」
「では着替えて朝食としましょう」

アテナ様はまだ寝ぼこ眼なのか、「ふぁ~」とかわいいあくびを一つ。
こうして、アテナ様の身の回りのお世話をこなしていくのも付き神である私ニケのお仕事です。

アテナ様は他の神々に比べればまだかなりお若く、お仕事に関してもそうですが、身の回りのこともまだおぼつかないご様子。
だからこうして、付き神と言えど特殊な力を持つ私がアテナ様の付き神に選ばれることになりました。


朝食後、

「ニケー。それじゃー、よろしくねー( ´∀` )」
「はい、お任せください。ご期待に添えるよう頑張ります」

アテナ様は全てのお仕事を私に任せ、他の神々のお部屋へと遊びに行かれました。
これがアテナ様の日常です。

アテナ様がお仕事をされることはありません。
また、私がいる以上はする必要もありません。
私が全てのお仕事を完璧にこなせばいいだけなのですから。

故に、私はアテナ様から全てのお仕事を任されています。
アテナ樣から全幅の信頼を感じます。付き神冥利に尽きるというものです。


今日も1日、アテナ様のご期待に添えるよう頑張るとしましょう!


□□□□ ~アテナとニケの奮闘記~ □□□□

「~♪」

最近、アテナ様はとてもご機嫌がよろしいご様子。
しきりに時の水晶を覗いては、はしゃいでおられるようです

その原因を知りたくもあるのですが、私にはアテナ様より任されたお仕事が.....。

(サボる訳にはいきません!)

そう思っていたのですが、

「ねぇーねぇー。ニケー。みてみてー!」

私の心を汲んで頂けたのでしょうか、アテナ様から直々に教えてもらうことができました。なんとお優しい.....。

「かわいーでしょー( ´∀` )」
「拝見させて頂きます」

アテナ様に断りを入れて覗かせて頂くと、そこには.....

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「な"ー!な"ー!」
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変な鳴き声で鳴く獣が一匹いました。
ピンっとそそりたつ二本の耳と丸みを帯びた頭部と背中、そして細長い尻尾。

この獣のことは私も知っています。
所謂『猫』という獣で、下界の人間に好まれて飼われている愛獣ペットです。

ただ.....

アテナ様がかわいいと言って見せて頂いた『猫』は、私の知るそれとは少し異なります。

そもそも鳴き声が変ですし、顔もひしゃげていると言うか、ハッキリ言ってブサイクです。
体付きも、私の知るスマートな体型ではなく、こうでっぷりと太っていてお世辞にもかわいいとは.....。

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「な"ー!な"ー!」
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「かーわいー(*´∀`*)」
「.....(ほわわ~)」

私としては、この『猫』と呼んでもいいのかどうかわからない獣よりも、にぱー☆と微笑んでいるアテナ様のほうがよっぽどかわいいです。


・・・。


「(´・ω・`)」

最近、アテナ様のご様子がおかしいです。
相変わらず、時の水晶を覗いてはおられるのですが、以前の時のようなはしゃぎようが全くありません。

アテナ様より任されたお仕事を放棄する訳にもいきませんが、非常に気になります。

「ニケー」
「どうされましたか?」
「な"ーちゃんが元気ないみたいー」
「.....?」

アテナ様に言われるがまま時の水晶を覗いてみると、

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「.....」
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確かに元気がありません。
ただその原因はすぐにでもわかりました。

猫が寝ていると思わしきその箱には『拾ってください』との張り紙が.....。
どうやら捨てられてしまったのでしょう。

(そうなると元気がない原因は.....)

「アテナ様。この猫は餌を食べていますか?」
「んー。.....ぜんぜん食べてないかもーr(・ω・`;)」

やはりでした。
1日中この猫を眺めているアテナ様がそう言うのならば、間違いなくこの猫は餌を食べてはいないでしょう。

「アテナ様。この猫はお腹を空かしているみたいです」
「いつもご飯あげる人はー?」
「残念ながらもういません。この猫はどうやら捨てられてしまったようです」
「えーーーーー!.....じゃー、な"ーちゃん死んじゃうのー?(´;ω;`)」

その質問に、私は答えることができませんでした。

本来獣ならば、お腹が空けば自ら餌を求めるものなのでしょうが.....。
この猫、見た目通りの性格をしているのか、全く動こうともしません。

きっと餌を与えられ待ちなのでしょう。
そうなってしまうと、もはや.....。

「なんとかならないー?ねぇー、ニケー!」

うっ.....。

主神のご期待に添えるのが、私達付き神のお仕事。
アテナ様にこうまで頼まれてしまっては見過ごすことなどできません。

「で、では餌を与えてみてはいかがでしょうか?」
「そっかー!でもー、な"ーちゃんはなに食べるのー(。´・ω・)?」

1日中眺めているアテナ様が知らないのに、私が知る由もありません。
ここは常識的に考えてみましょう。

「そうですね.....。獣ですし、お肉でしょうか?」
「ふーん。じゃー、お願いねー( ´∀` )」
「畏まりました。今すぐご用意致しますので、少しお待ちください」

こうして私は、アテナ様のご期待に添えるべく猫の餌を求めて部屋を後にしました。


・・・。


10分後。

───ドサッ

「お待たせしました。この猪なら、味、量ともに問題ないでしょう」
「おっきーねー(o゜ω゜o)」
「アルテミス様より頂戴致しました。最高級の猪なのだとか」
「そっかー!ならな"ーちゃんも喜ぶねー!」

アテナ様の姉であるアルテミス様は多数の神獣をペットとされています。
その為、部屋の一隅が群生林となっており、そこには神獣達の餌となる様々な獣が用意されているのです。

(猫の餌ということであれば、別にどの肉でもいいのでしょうが.....)

そこはアテナ様のご期待以上にお応えすることが私のお仕事です。
だから、敢えて肉としては評判の高い猪をアルテミス様より一匹譲って頂きました。

そして、結果はご覧の通りです。
アテナ様も大変満足されたようで、私としても頑張った甲斐がありました。

「では私は仕事に戻りますので、後はよろしくお願いします」
「うんー!ニケ、ありがとー( ´∀` )」

こうして私は猪をアテナ様に託し、仕事に戻ることにしました。
あの猪の大きさならば、でっぷりと太った猫であっても1、2ヶ月は十分に持つことでしょう。





・・・。





そう思っていたのですが、

「ニケー(´・ω・`)」
「どうされました?」
「な"ーちゃん食べないよー?」
「そうなのですか?」

アテナ様の言葉を伺い時の水晶を見ると、確かに猫が猪を食べた形跡はありません。

と言うよりも.....。

「.....?猪がいないようですが?」
「なんかねー、起きたらどこかに走っていっちゃったよー(・ω・´*)」

これは迂闊でした。

アルテミス様より「獣の餌は生きたまま与えたほうが喜ぶ」と言われたので、気絶させたままでいたのですが、あの猫は狩りすらもしないようです。
本当にどこまでも怠け者な猫です。


ちなみに、逃走した猪は人間の手によって山へと帰されたのだとか。
姿や大きさなどが今まで見たこともない種だった為、新種扱いで世間を大いに賑わせたみたいです。

閑話休題。


・・・。


さて、再びアルテミス様にお願いして猪をもう一匹頂戴し、猫に与えてみたのですが.....

「食べないねー(・ω・´*)」
「.....」

結局、猫が猪を食べることはありませんでした。

その後、肉がダメなら野菜を、と思って与えてみましたが、これも功を奏しませんでした。
獣の分際でなかなか手強いです。

(と言うよりも、これではアテナ様のご期待に応えられないではないですか!)

こうなっては、私も付き神としての意地があります。
そこでいろいろと調べた結果、キャットフードなる餌の存在を知ることができました。

早速、下界より取り寄せ、アテナ様に手渡します。

「下界では猫にこれを与えているようです。これならば大丈夫でしょう」
「これおいしーのー(。´・ω・)?」
「それはわかりません。.....食べてはダメですからね?」
「Σ(・ω・*ノ)ノ」

注意して正解でした。

興味を持たれるお気持ちはわからなくもないですが、獣の餌を神が食べるなどあってはならないことです。
仮に、こんなことが他の神々に知られでもしたら、尊敬すべくアテナ様のご評判が地に落ちてしまいます。

「私は仕事に戻りますが.....。食べたら本当に怒りますからね?いいですね?」
「う、うんーr(・ω・`;)」

アテナ様からのお答えがどうにも不安だったので、私はアテナ様をそっと抱き寄せ、

───ギュッ!!

「約束です」
「うんー!やくそくー( ´∀` )」

約束のハグをすることにしました。

アテナ様はまだお若いせいもあるでしょうが、目を離せないことが多いです。
そんな時、この約束のハグをすることでお互いを信じ合うようにしています。

私が約束を破ることは決してありませんが、アテナ様も今のところ破ったことはありません。
約束のハグの効果はてきめんと言えるでしょう。

こうして猫の餌も確保でき、安心して仕事に戻ることになりました。


.....しかし、その1時間後。

「.....ニケー」

またしても問題が発生したようです。
どこかアテナ様のお声も暗いような.....?

「今度はどうされました?」
「.....な"ーちゃんやっぱり食べないよー?」
「.....え?」
「.....え?じゃなーい!食べないじゃーん!もーヽ(`Д´#)ノ」

そして、ついには怒ってしまわれました。

(.....ええええ!?え?え?え?ど、どういうことですか!?)

これにはさすがの私も驚きと衝撃を禁じ得ません。

私達付き神にとって、主神からのお怒りはとても不名誉なことにあたります。
付き神としての存在価値を問われるだけではなく、神としての存在意義を失う恐れがあるのですから.....。

こうなると、私自身の名誉と存在意義に関わることになるので原因を追及しないといけません。

まず、解せないのはあの猫です。
色々と調べた結果、下界の猫は間違いなくキャットフードを食べています。
ならば、あの猫も例外ではないはずです。それなのに食べないとは一体.....。

(それにしても.....。あの猫はどれだけ神である私の手を煩わせば気が済むのでしょうか?)

少し不満に思いつつも時の水晶を覗いてみると、

「ねー?食べてないでしょー?」
「.....」

確かにアテナ様の言う通り、猫はキャットフードを食べてはいませんでした。
と言うよりも.....、食べることができませんでした。

そもそも、

「.....アテナ様」
「なにー?」
「あれでは、あの猫も食べることができません」
「えー Σ(・ω・*ノ)ノ」

手渡したキャットフードの袋が封を切られず、そのままの状態で下界に転送されていました。

さすがに獣であるあの猫が、袋の封を切ることは難しいでしょう。
と言うよりも、怠け者であるあの猫が封を切れるとは到底思えません。

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「な"ー!な"ー!」
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結局、転送したキャットフードを回収し、開封後再び転送をしたら猫も勢いよく食べ始めました。

それはいいのですが.....。

なんと言うか、顔がブサイクなだけではなく食べ方も汚ないです.....。
アテナ様は本当にこれがかわいいのでしょうか。私にはわかりかねます。

「よかったー(*´∀`*)」

しかし、アテナ様が満足されているようなので良しとしましょう。

それにしても.....。


よかったー(*´∀`*)じゃないですよ、もう!ひやひやしたじゃないですか!


□□□□ ~日常の変化~ □□□□

猫騒動から数日後。

「アテナ様。最高神ゼウス様より有給休暇の許可が下りました」
「ほんとー!?やったーo(≧∇≦)o」
「私はこれより付き人の選定に入らせて頂きます」
「よろしくー!はやくしてねー!たのしみー!」

アテナ様が以前より渇望していた有給休暇の許可が下りました。

有給休暇とは下界の視察という意味を兼ねてのちょっとした息抜きのことを指します。
たかが50年程度のことなので仕事にそこまでの影響はないのですが、それでも取得にはなかなか至らないのが現状です。

それだけ下界というところは不完全であり、不安定でもあるのでなかなか目が離せないのです。
それをいくつも管理している訳ですから、取得が難しいのはある意味仕方がないのかもしれません。


さて、早速アテナ様の有給休暇中の付き人を選定しようと思ったのですが、その前に.....。

「その人間、ここ最近毎日見ますね」
「ねー!な"ーちゃんもすっかりなついてるみたいだよー( ´∀` )」

アテナ様が夢中になっている猫の様子を窺ってみたところ、例の人間がまた来ていました。

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「お前まだ拾われていないのか.....」
「な"ー!な"ー!」
「う~ん。誰かが毎日餌をあげているようだけど.....。その人には飼ってもらえないのか?」
「な"ー?」
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ここ最近、よく見かける人間です。

他の人間はこの猫の姿を見たら、大抵はすぐに離れてしまうのですが、この人間だけは違いました。
散乱していたキャットフードを集めてあげたり、汚れてボロボロになってしまった箱を取り換えてあげたりなど、それはもう猫を大切にしていました。

「ねぇー、ニケー。な"ーちゃん飼っても.....」
「ダメです」
「ふえええええ(´;ω;`)」
「うっ.....。ダ、ダメなものはダメです!神界規定で決まっておりますので」
「ぶー(´-ε -`)」

ぶー(´-ε -`)ではありません。

ここ神界は神の住まう場所。
神と一部許された存在だけが生活を許された特別な場所です。

人間はおろか、獣風情が住んでいい場所ではありません。

また格式の問題だけではなく、そう神界規定にも記されているのでこれは絶対です。
いくら主神であるアテナ様のお願いであろうと、神界規定に背くことは決してできません。

そういう意味でも、この人間に飼ってもらうのがベストなのでしょうが.....

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「本当なら飼ってあげたいんだけど.....。ごめんな?うちのアパートはペット禁止なんだよ」
「な"ー?」
「早くいい人に拾われるといいな?」
「な"ー!な"ー!」
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人間には人間の事情があるようです。
いつものように猫の身の回りの世話をして、そのまま立ち去っていきました。

「な"ー.....」
「ダメです」
「まだなにも言ってなーいヽ(`Д´#)ノ」


なんと言われようとダメなものはダメです!規定を守ってください!


□□□□ ~どーん!~ □□□□

アテナ様の有給休暇が下りて、更に数日が立ちました。

日々の生活は平穏そのものなのですが、

「付き人まだー?」
「も、申し訳ありません。まだ選定中でございます.....」
「早くしてよー、もーヽ(`Д´#)ノ」
「い、いましばらくお待ちください!」

アテナ様はご立腹そのものです。

有給休暇中のアテナ様の身の回りの世話をする付き人選びが思った以上に難航しています。
人間などにはもともと期待してはいないのですが、それでも私の代わりを務めるものです。

(一切の妥協はできません!)

そう、妥協はできないのですが.....。
ただそうなると、どの人間も一長一短、五十歩百歩、帯に短し襷に長しな状態です。困りました.....。

困った言えば、こちらもそうです。

「ニケー。また人間がー.....」
「またですか.....」

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「君、君!何度も言っているだろ?その猫に餌をあげるな、と」
「それこそこちらのセリフです。何度も言っていますよね?早くこの猫を保護しろ、と」
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最近になって別の人間が現れるようになったのですが、この公園という場所では、どうやら猫に、獣に餌をあげてはいけない決まりとなっているようです。
それで、ここ最近は人間同士で言い争っている光景をしばしば見掛けるようになりました。

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「俺は何度も市役所に訴えていますよ?早くこの猫を保護しろ、と。
 あなた方役所の人間がちゃんと仕事をしていれば、俺だって餌をあげたりはしません。
 それとも今日は保護しに来たんですか?そうでないなら文句を言われる謂れはありません」
「くっ.....。言いかい?注意したからね?今後も続くようなら然るべき対応を取らせてもらう」

「.....」
「.....ふん。たかが猫一匹で何を意地になっているんだか」
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「むきーヽ(`Д´#)ノな"ーちゃんいじめるなー!」
「アテナ様.....」
「あのバカな人間に神罰あたえるー!」
「ダメです。私的な理由での神罰は神界規定に違反します」

アテナ様はどうやら猫を庇う人間に肩入れしているようですが、私は正直なところ微妙です。
餌をあげてはいけない決まりとなっているのなら、それに従うべきです。その為の決まりなのでしょうから。

ちなみに、私達が人間の決まりに従う謂れはないので、猫には餌を与え続けています。

ただ.....

役所の人間とやらが仕事をしていないというのも気に掛かります。
手本となるべき人間が仕事をサボっているのであれば、決まりを守らない人間が出てきても文句は言えないでしょう。

(どうしてこう人間は、ちぐはぐな行動を取るのでしょうか?全てを完璧にこなせばいいだけですよね?)

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「これだから公人ってのは.....。無駄かもしれないが、もう一度市役所に訴えてくるよ」
「な"ー!な"ー!」

「じゃあ、またな。
 と言うか、少しは運動しろよ?肥満は健康に毒だぞ?それとも俺と一緒に歩くか?(笑)」
「な"ー?」
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人間のその意見には賛成です。
ぜひ、この猫はダイエットに精を出してもらいたいものです。ダラダラしすぎです!


・・・。


更に数日が過ぎました。

アテナ様の付き人選びの進捗はあまり芳しくはありません。
本当に、相当に、かなり妥協をしてようやく数人を絞りましたが、そこからが思わしくありません。

(う~ん.....。いっそのこと私が.....。いや、それだとお仕事が.....)

アテナ様の突きだしが日々強くなっていくので、胃が痛む毎日です。
そんな状況のこちらに対して、猫のほうはどうやら進展があったようです。

「みてみてー!な"ーちゃん保護されるんだってー( ´∀` )」
「良かったですね、アテナ様」

アテナ様も大変お喜びになっているようでなによりです。

これで心配事が一つ減りました。
私としても猫にあやかって、付き人選びに進展を得られるよう精を出そうと思います。






そう思っていたのですが、事態は思わぬ方向に.....。

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「.....業者の方ですよね?一つ伺ってもいいですか?」
「なんでしょうか?」
「その猫はどうなるんでしょうか?」
「保護します」
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「んー(。´・ω・)?なんかこの人間の様子おかしくないー?」
「確かに.....」

アテナ様の言う通り、今まで猫を庇ってきた人間の様子がおかしいです。
本来なら役所の人間が仕事をしたことに喜ぶべきなのでしょうが、この人間にはそれが一切感じられません。どういうことでしょうか?

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「見当違いだったら申し訳ないんですが、以前テレビかなにかで見たことがあるんです」
「なにをでしょうか?」

「増えすぎた野良犬や野良猫を保護という名目で殺処分しているのを.....。
 まさかとは思いますが、今回は違いますよね?」
「.....」
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え?

どういうことでしょう。
人間の訴えを聞いたからこそ、保護しにきたのではないのでしょうか。

「え?え?え?.....な"ーちゃん殺されちゃうのー!?」
「.....わかりません」

アテナ様も驚かれているようですが、私も驚きました。

今の段階では、単なる仮説の域を出ません。
ただ、役所の人間が否定しないところをみると.....。恐らくは人間の言う通りなのでしょう。

(なんの罪もない猫を処分するとは.....。人間とはなんと残酷な生き物なのでしょう。
 こんな残酷な生き物に、アテナ様のお世話を任せることなど出来ません!やはり私が!)

「ニケー!な"ーちゃんだいじょぶだなんだよねー?ねぇー!ニケー!!」
「.....」

私のワンピースをグイグイッと引っ張って必死に尋ねてくるアテナ様に、私はどう答えたらいいのかわかりませんでした。
ここで迂闊なことを言えば、アテナ様がどのような行動に出られるか、それはもう火を見るに明らかだったからです。

恐らくは、今いる役所の人間を一人残らず神罰にて葬り去ってしまうでしょう。
そして、今後も役所の人間が来る度にそのような行動を取られるに違いありません。

たかが人間如き残酷な生き物に、アテナ様の御名を穢させる訳にはいきません。
ここは慎重な答えが求められる重要な場面です。

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「.....ちっ!これだから公人ってのは嫌いなんだよ。
 口では綺麗事ばかり言って、実際やることは汚ないことばかり」
「.....」

「あなた方も大変ですね。仕事とは言え、公人のバカ共に尻尾を振らないといけないんですから」
「.....」

「な"ー!な"ー!」
「.....悪い。俺のせいだ。ごめんな?やっぱり公人なんて信じるべきじゃなかったよ.....」
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猫を庇い続けてきた人間も、事ここに至ってはどうしようもないみたいです。
ただ猫に誠心誠意謝っている辺り、残酷な生き物ではないようです。.....こういう人間もいるのですね。

私も人間も、最早どうにもならないと諦めかけていたその時、

「ダメーヽ(`Д´#)ノ」
「アテナ様!?」

アテナ様が突如大声を上げられました。
それは悲痛というよりも大きな怒りでした。

これは非常にマズい流れです。
なんとかしないと、このままではアテナ様が暴走してしまいます。





ですが.....





私の心配は時既に遅かったようです。

「きめたー!な"ーちゃんは私が飼うー!」
「ダ、ダメです!それは神界規定に違反.....」
「うるさーいヽ(`Д´#)ノ.....どーーーーーん!」
「アテナ様!?」

アテナ様の「どーーーーーん!」と言う掛け声とともに放たれる、まばゆいばかりの神光。
世界が、公園が、人間達が、そして猫が、その大いなる神光に包まれました。

そして.....

「な"ー?」

神界に姿を現した一匹の猫。

「かーわいー!よろしくねー!な"ーちゃーん(*´∀`*)」
「.....」

やってしまいました.....。

これこそ恐れていた事態です。
とは言うものの、役所の人間を葬り去るよりかはマシですが.....。

こうなってしまったのでは、私も覚悟を決めるしかありません。
起こってしまった結果に対して、どうこう言うことは無駄なことです。

(.....仕方がありません。無かった事として、事実を揉み消すことにしましょう)

そうなると、やらなければいけないことがあります。

「.....アテナ様。その猫を飼われるということなら『神獣』ということにしますが、よろしいですね?」
「んー!お願いねー( ´∀` )」
「な"ー!な"ー!」

アテナ様と猫にお願いされた以上、付き神としてご期待に応えるだけです。
ブサイクな猫ではありますが、お世話を焼いていたせいか、なんだかんだ言って今では少しだけかわいく見えます。

(アテナ様とこの子の為にも、頑張るとしましょう!)


さて、『な"ー』についてはこれでいいのですが、大問題が一つ残っています。

それは.....

「.....」

アテナ様と私の目の前で気を失っている一人の人間。

「どうしましょうか?」
「うーんr(・ω・`;)」

そう、猫をずっと庇い続けてきた人間です。

どうやら猫を召喚する際に、誤って一緒に連れてきてしまったみたいです。
アテナ様はそこまでお力が強い女神様ではないので、力を行使するとこのような事が度々起こってしまいます。

さて『な"ー』のような獣の召喚なら、簡単に事実を揉み消すことが可能ですが、人間となると話は別です。
なんの理由もない人間の召喚は、神界規定に違反する恐れが十分にあります。

(.....仕方がないですね。ここは無難に対処するほうがいいでしょう)

「先ほど新たな勇者を送ったばかりではありますが、この人間も勇者にしてしまってはいかがでしょうか?」
「うーん(・ω・´*)」

「.....?なにかご不満な点がございますか?」
「付き人って決まったー?」

「いえ、まだではございますが.....。え?まさか!?」
「うんー!この人間でいいよー( ´∀` )」

ええええ!?

いや、それでも残酷な人間が多い中で、この人間ならば確かにアテナ様を任せられるような気もします。
少なくとも、私が選んだ人間よりかはずっと信頼できます。

「本当によろしいのですか?素性もなにもわかりませんが」
「いいよー!猫ちゃんを好きな人に悪い人はいないってー( ´∀` )」

あぁ.....。
さすがはアテナ様。

美しくも聡明で、それでいて大胆にして豪放.....。
まさに私がお仕えするにふさわしき女神樣です。

(不肖ながら、あなた様に一生の忠誠を.....)


「畏まりました。至急、この人間の素性を調べることに致します」
「よろしくー!じゃー、な"ーちゃんお風呂いこー( ´∀` )」
「な"ー?」

こうして、無事『な"ー』と『付き人』の問題が解決することになりました。


めでたし。めでたし。


(この人間、『舞日 歩』.....樣というのですか。
 『な"ー』を庇い続けて頂き感謝します。アテナ様に代わって御礼申し上げます)


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後書き

色々な伏線と言いますか、重要なシーンを回収させて頂きました。
以下は回収した具体的な内容です。

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アテナが主人公を付き人として選んだ理由。
ニケが主人公に対して心を開いていた理由。
神獣達がどのように食事をしているかの理由。
アテナと約束を交わす時、なぜハグなのかの理由。
主人公が本編中になんども政治家を揶揄する理由。
第123歩目の主人公の『気になるヤツ』の正体。

以上、これだけのものを回収させて頂きました。


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