歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~
第119歩目 はじめての接触!
前回までのあらすじ
初の異世界ライヴで大盛り上がり。
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□□□□ ~フェスティバルのその後part.1~ □□□□
武器フェスティバルと呼ばれる一種のお祭りは計3日間行われる。
その3日間は8時頃から会場が騒然となり、21時頃まで都市全体がお祭りムードとなる。
中央区ステージに於いても、
初日 ・・・武器フェスティバル、アイドルライヴ
二日目・・・旅の一座による演劇、アイドルライヴ
三日目・・・オークション、アイドルライヴ
以上のように演目が決まっていて、常に観客を楽しませる工夫がなされている。
初日はナイトさんが武器フェスティバルを優勝するという慶事だったにも関わらず、サキたその見事な一発に気絶させられてしまい、そのまま目覚めることはなかった。
近くにトキオさん夫婦がいたから良かったものの、もしいなかったら、成体ドールのお世話になるところだった。
(サキたそ許すまじ!絶対に目にもの見せてやる!)
とまぁ、俺はすっかり、キモぶ.....いや、同志の言う通り、熱狂的なファン?へと変貌してしまっていた。
気絶する前に、サキたそが何か気になることを言っていたような気もするのだが、今ではそんなことはどうでもいい。
とにかく大人を、ファンをなめくさった態度に一言申してやりたいとの思いで、俺の頭の中はいっぱいだった。
だから、
「今日もライヴに行くぞ!」
「うぇいうぇいふーo(≧∇≦)o」
「主!主!妾はグッズとやらが欲しいのじゃ!」
二日目もアイドルライヴに行くことが決まった。
ドールの要望もあったので、シャツにハチマキ、ペンライトを整えての完全武装スタイルで乗り込みだ。
そして、会場が一つの時代のうねりと化したライヴショー後の握手会にて、
「.....マ?ぉっさんまた来たの?マジきもぃんだけどー」
再び毒舌派アイドルサキたそと再会を果たすことになった。
「おっさんじゃない。俺はまだ26だ。なんとか青年の範疇だ」
「はぁ?サキから見たら、ぉっさんもぉっさんっしょー。20過ぎたらじじぃばばぁだっつーの」
なんという生意気な態度。
その様子から、どこか俺の甥と姪を彷彿とさせる。
確かにサキたそは見た目高校生ぐらいに見えるので、高校生からしたら俺なんておっさんに入るのかもしれない。
しかし、まだ爽やかさが通用する青年、つまり『お兄さん』の範囲内だと思う。そう思いたい。.....そうだよね?
日本でもそうだったのだが、この高校生ぐらいの年代の子達はなぜか『我が天下』みたいなドヤ顔で、日常生活を我が物顔で送っている光景を帰宅中の電車内で度々見掛けることがあった。
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あれはそう、日もとっぷりと暮れた電車内での一幕.....。
「ぎゃははははは。それウケるw.....なんだよ、席空いてねーじゃん」
「はぁ?ずっと立ってるとかマジ勘弁」
「ここはあれだ!今日習ったあれでいこうぜ!」
「なんだよ、あれって」
「えーっと、なんだったかな.....。歴史で習ったやつだよ。確か.....『空かぬならどかしてしまえ』とかの」
「おー!あれかー!坂本龍馬!」
「ちげーし。それを言うなら夏目漱石だろ」
どっちも違うわ!豊臣秀吉だろ!と心の中でツッコんだ俺は、その後標的にされて座席を譲らされることになった。
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くっ。嫌なことを思い出してしまった.....。
俺はイジメの対象になりにくい普通な人だと思っていたが、実は陰キャだったのだろうか。
そんなことが度々あった。そしてそういう場合、決まって周りは知らんぷり。.....現代の闇は深い。
.....え?俺が注意しろって?
無理無理!だって、怖いんだもん.....。
・・・。
「ちょっとぉっさんさぁー。物思ぃにふけんのは後にしろってのー」
「.....はっ!?」
「キモ豚どもが待ってるから、今日もとりましんどけー」
「ちょっ!?待て!まだはなしが.....」
───ドゴッ!
「ぶひ~~~~~!.....え、、る、、おう、、ぶ、、い、、いい、、らぶ、、りい、、ニケ、、さん、、、」
こうして二日目も、俺は何がしたかったのかわからないまま、再び夜空のお星様へと昇華した。
その後は結局、成体ドールのお世話になったらしい。.....主人の面目丸潰れ!
(ごめんよ、ドール。後でいっぱいブラッシングしてあげるからな!)
□□□□ ~フェスティバルのその後part.2~ □□□□
そして、フェスティバル最終日。
長いようで短かった武器フェスティバルも本日で終わりとなる。
終わりとなるのだが.....、既に完全武装に身を固めた俺は歯軋りしながら、
「今日もだ!今日もライヴに行くぞ!あの生意気な小娘に物申してやる!」
アテナ達に本日の行動予定を宣告した。
オークションにも参加する予定なのだが、それよりも、サキたそに一言物申してやりたい気分だ。
俺の心の中は小娘に目にものを見せてやることで熱く熱く燃えたぎっていた。それはまるでマグマの如し。
しかし、そんな俺とは対照的に、
「ねぇーねぇー!みてみてー!これであってるー(。´・ω・)?」
───くるくる~
俺の目の前で、曲の振り付けを器用に真似しているアテナ。かわいい。
と言うか、振り付けがほぼ完璧なように思える。.....アテナ凄いな!?
そればかりか、
「ラ~♪ラ~♪ララララ~♪」
これこそ今世紀最大の美声だろ!と思わず唸ってしまうほどの歌唱力で、サキたその曲を楽しそうに唄うドール。かわいい。
と言うか、歌自体がほぼ完璧なように思える。.....ドールいつの間に!?
そして、そんな二人が楽しそうにしている姿を見て、俺は.....。
この二人の方が、俺よりもよっぽど純粋にライブを楽しんでいる事実に気付かされた。
これではドルヲタ失格だ。.....あっ。いや、違う。俺はドルヲタじゃないんだけど。
だから、今日は心穏やかに俺も二人と一緒に楽しもうと思う。
・・・。
オークションでは、あのミステリアス少女モリオンの登場に驚いたが、とても不思議な現象が起こって何事もなく終了した。
本当に不思議すぎて、いまだに夢を見ているようだ。
そして.....
「.....いや、ぉっさんマジなんなの?マジでサキのストーカーとか?」
「いやいや。純粋に応援して何が悪いんだよ」
再び、毒舌派アイドルサキたそと相まみえることになった。
(と言うか、俺よりも熱心な同志はいっぱいいるだろ!なんで俺だけストーカー扱いなんだよ!)
「下心みぇみぇっつーかー、ぅざぃんだよねー、そぅぃぅのー↓」
「下心?そういうの???どういう意味だよ?」
「ヤリ目とかマジ冷めるー↓そぅぃぅこと考えてるのがバレバレだよ、ぉっさんさー」
「ふぁ!?」
どんな勘違い!?
サキたそからは、それはもうゲスを見るかのような軽蔑的な眼差しだ。
この視線、どこかで見覚えが.....。そうだ、ゼオライトさんが俺を見るときの眼差しにそっくりなんだ。
「なんか誤解しているようだが、全く違うぞ?」
「はぁ?ぉっさんのなにを信じろっつーのー?
異世界にまでサキを追っかけてくるとか、ストーカーもストーカーじゃん。マジきもぃんだよ」
俺がサキたそに拘った理由はこれだ。
別に一言物申してやりたかった訳では.....。少しはあるが、一番の理由はこれ!
「それだ!それ!お前も.....」
「ぁのさー、サキにはサキって名前がぁるんだけど?ぉっさんのくせに失礼じゃね?」
「.....ぐぅ。す、すまん。えっと.....、サキも.....」
「はぁぁ!?ぉっさんマジふざけんなし!!呼び捨てとかマジきもっ!きもっ!きもっ!マジしねっ!!」
話が.....、全然進まねえ!
サキたそは呼び捨てにされたせいか、先程よりも更に冷たい氷点下0℃よりもぐっと冷たい眼差しを向けてきている。
もはやストーカーとか、そんな生易しいレベルではないぐらいの警戒っぷりだ。
さすがに、ゼオライトさんである程度慣れたとは言え、ちょっと、いや、すごく傷付く.....。
「え、えっと.....。じゃあ、サキちゃん?」
「サキちゃんとか馴れ馴れしぃんだよ、ぉっさん。マジあり得ないから」
!?
サキたそから漂うこの雰囲気はマジなやつだ。
明らかに俺に対する嫌悪、拒絶反応が表れている。
「.....じゃ、じゃあ、サキさん?」
「.....」
何も言われないようなので、どうやらこれでいいみたいだ。
それにしても、どうして年上だと思われる俺のほうが、こうも気を遣わないといけないのだろうか。
別に年上だからと言って偉そうにするつもりはないが、こう、もう少し目上に対する礼儀と言うものを.....。
「はぁ?説教とかマジぅざぃし。そぅぃぅのはやりたぃやつがやってろって感じー」
「.....そ、そんなんじゃ社会に出てから.....」
「社会wとかwマジゥケるw.....ぉっさんさー、そぅぃぅのをなんてぃうか知ってるー?」
「な、なんだよ?大きなお世話とでも言いたいのか?」
「ちげーしwそぅぃぅのを『ぉやじくさぃ』っつーのw」
「おやじ、、くさいだと!?」
もうなんと言うか、あれだ。
考え方が違うと言うか、世代の壁を感じる。
もし俺が鋼の精神を持つ大人だったら、ここで社会の厳しさというやつをガツンっとわからせていたのだろうが.....。
生憎とそんなものは持ち合わせてはいなかった。
持っていたのは脆くて儚い、純粋なピュアピュアハートのみ。
(この子もうやだ~。
何言ってるのかところどころわからないし、いちいち言葉が汚すぎて限界だよ~、ニケさ~ん)
今すぐにでもニケさんの胸に飛び込んで、この傷付いた心を慰めて欲しいぐらいだ。
・・・。
既に俺の心は警鐘を鳴らしていたが、ここは踏ん張ってでも確認しなければならないことがある。
その為に、わざわざこんなギャルみたいな苦手なタイプの女の子に、何度も何度も会いに来ているのだから。
その確認したいこととは、
「.....サ、サキさんも勇者なのか?」
「そんなん鑑定すればぃぃだけっしょ?ぉっさんマジでバカな感じ?」
ぐふっ.....。
(そ、そんなことは言われなくともわかっている。
この子はいちいち人をバカにしないと気が済まないのだろうか?本当に口が悪すぎる!)
では、なぜ俺が指摘されるまで鑑定を使わなかったのか?
.....それは単純に気が引けるからだ。
魔物や男性相手なら気にしないのだが、女性相手だとどうしても無断で鑑定を使うことに気後れしてしまう。
別に女性差別をしているわけではない。
ただ鑑定をすると、どうしても年齢的なものが見えてしまうので、こう、無断で女性のプライベートを覗き見ているような気がしてならないのだ。
例えば、
アテナの時はマナー違反だと注意された。
ラズリさんの時は事情が事情なだけに仕方なかった。初のレベル3取得で浮かれてもいたし。
ナイトさんの時は旅の仲間になるにあたって確認する必要があった。それに許可も貰っていた。
当然、ドールの時もナイトさん同様、しっかりと許可を貰った上でステータスを確認している。
なので、これまでに勝手に見てしまったのはアテナとラズリさん、そしてゼオライトさんの3人だけだ。
しかも、ゼオライトさんの場合は明確な敵意を向けられていたので、身の安全を図る為には必要な処置だった。
強いて言うなら、魔物に対するそれと同じようなものだ。すごい殺気だったしね.....。
つまり、やむを得ない状況で無断で見てしまったのはゼオライトさんのみとなる。
では、このサキたその場合はどうかと言うと.....。
仕方ない事情だった?.....そんなことはない。
確認の必要があった?.....そんなことはない。
許可をもらっていた?.....する前に殴り飛ばされた。
やむを得ない状況か?.....向けられたのは殺気ではなく、嫌悪と拒絶なだけだ。
とまぁ、こういう理由があったので今まで使わずにいた。
しかし、サキたそ本人から「使えよ、バカ」との許可を貰ったことで使うことにする。
許可でいいんだよな!?はぁ.....。鑑定!
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『キララ・ホシゾラ』 レベル:550(Aランク) 危険度:中
種族:人間族
年齢:16
性別:♀
職業:勇者
称号:アイドル
体力:12000
魔力:15000
筋力:198888
耐久:3000
敏捷:3000
装備:なし
【一言】ふわぁー。歩まだー?ねむいー(^-ω-^)Zzz
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(なんだ!?この筋力の数値!約20万、、だと!?
それにこのステータスの歪さ!まるでサキたその性格をそのまんま表現しているような.....)
いろいろとツッコミどころ満載なステータスのようだ。
レベルの割りに異常に高い筋力。反面、異様に低い耐久と敏捷。
そして、ゼオライトさんと同様に危険度が『中』という悲しい事実。
だが、何よりも一番気になったのが.....
「サキ、ちょっと聞きたいことがあるんだが.....」
「.....また呼び捨てだし」
サキたそから一気に放たれる嫌悪感。
いくらなんでも嫌われすぎだろ!理不尽だ!
「わ、悪い.....。と、ところで本名は『キララ』.....さんなのか?『サキ』さんってのは芸名?」
「.....」
「あれ?なんか違うのか?」
「.....」
訊ねられたサキたそは何故か俯いてしまった。.....どうした?
俺としても、ステータスを覗いて一番最初に目に入った『キララ』という名前に思わず、おや?と思ってしまった。
そもそも自他共に『サキ』と呼んでいただけに、てっきりそういう感じの名前なのだと思っていた。
だから、芸名なのか?と訊ねたのに、当のサキたそ.....いや、キララたそ?は俯いたままだんまりだ。
「.....サキの名前は『サキネ』だし」
「.....?それは芸名なんじゃないのか?本名は『キララ』.....さんなんだろ?」
「.....ぉっさん。マジ最悪.....」
「!?」
再び、サキネたそ?キララたそ?から放たれる嫌悪感。
いや、先程のオーラよりも一段と.....。
いやいや!数倍とも思える嫌悪感に、多量の怒気までもが混じっている。
そして、何よりもマズいのが.....
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『キララ・ホシゾラ』 レベル:550(Aランク) 危険度:大
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何故か『中』から『大』へと変化を遂げた危険度だ。
ドールの一件から、本人の感情によって危険度が変化することは知っていた。
ドールも助けた当初は『中』だったものの、俺に信頼を置くようになった今では『極小』になっている。
つまり、感情によって危険度が下がるということは、その逆もまた然りということになる。
(なんだ!?なにがまずかった!?なにがこの子の逆鱗に触れた!?)
状況が理解できずに困惑していたら、
───ドゴッ!
「ぐぶっ!?.....ちょ、、え、、?」
なんの通告もなく、いきなり腹に強烈で鈍い痛みが.....。
「.....ぉっさん。マジしねし.....」
「.....、、?」
握手会のそれとは明らかに異なる激痛に、俺は悶絶するどころか気持ちよく意識を刈り取られてしまった。
さすが戦闘力50万.....、いや、筋力20万の実力だ。
ただ.....
意識を失う間際に、サキネたそ?キララたそ?の怒気を孕みつつも、どこかもの悲しそうに聞こえなくもない呟きだけが妙に耳に残った。
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後書き
次回、真相!
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今日のひとこま
~アイドル志望~
「のぅーのぅー!どうじゃ?妾の唄は?」
「すごくよかったぞ。少なくとも、あのアイドルよりかはずっといい」
「そ、そうか?なんだか照れるのじゃ///」
「(おぉ!尻尾が凄い振られてる。かわいいなぁ)」
「ただのぅ.....。唄はよいのじゃが、どうにも踊りは上手くいかぬのじゃ」
「踊り?」
「姉さまが踊っておるあれなのじゃ」
「あぁ、振り付けね。別に踊れなくてもいいんだよ。唄えるだけでもすごいことなんだぞ?」
「う~む。しかしの?姉さまを見てると.....」
「(くるくる~)ラー♪ラー♪ララララー♪あーははははは( ´∀` )」
「マジか!?アテナは唄えもするのかよ!?しかも、なにげに上手い!?」
「.....む!う、唄だけなら、妾のほうが上であろう!?」
「そ、そうだな.....。(どうだろ?五分?いや、若干アテナの方が上手いような.....)」
「なにか違和感を感じるのぅ。.....それにしても唄は面白いのじゃ!」
「そうか。てか、この世界の音楽ってどうなってるんだ?」
「歌姫や吟遊詩人じゃな。昨日のようなステージ上で唄うのじゃ」
「ふ~ん。そう言えば、昨日の音楽ってどういうふうに流れてたかわかるか?」
「知らぬな。なんか不思議な感覚だったのじゃ。聞くと言うよりかは耳に入ると言うか.....」
「そうなんだよなぁ。でも、楽器とか設備は見当たらなかったし。なんなんだろうな?」
「なにか特別な力なのかもしれぬな。あの力が妾にもあれば、アイドルとやらになれるかの!?」
「なれる、なれる」
「本当か!?なら、たくさん練習するのじゃ!」
「なんで?」
「主ならその力を手に入れられる可能性があるであろう!
勇者様が持っておるのじゃ、勇者様よりも万能な付き人である主なら十分可能性はある!」
あっ。なるほど。
てか、マジでアイドル目指すの!?
どうやら俺の不用意な発言が『眠れる獅子』ならぬ『眠れる狐』を呼び覚ましてしまったようだ.....。
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