歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~

なつきいろ

第86歩目 はじめての降臨!女神アルテミス①


前回までのあらすじ

女神アルテミス様の降臨が決まった。それにしてもアルテミス様の匂いはたまらん!

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□□□□ ~神と獣人族の関係~ □□□□

本日は狩猟の女神アルテミス様が降臨される日だ。
待ち合わせは教会で、朝8時と言われていたのだが.....時は10時。既に2時間近く待っている。

「おい、アテナ。アルテミス様が来ないんだが?」
「アルテミスお姉ちゃんは約束を守ったことがないからねー( ´∀` )時間を守るだけ無駄なことだよー」

.....そう言うことは最初に言えよ!時間がもったいないだろ!

俺とアテナ、ドールは何をする訳でもなく、ただただベンチに座り、ぼ~っとしていた。
あまりにも滞在時間が長いせいか、ザビエルこと神父さんに敬虔な信徒だと思われ、既に何度も話し掛けられている。

「そもそも、そのアルテミスという者は主のなんなのじゃ?」
「俺じゃなくて、アテナの姉だよ。今日遊びに来る予定なんだ」

アルテミス様が降臨されるということは、ドールには今朝の朝食時に話した。
その時は全く興味なさそうな態度だったのだが、今の状況には腹を据えかねているようだ。
高慢なドールのこと、待つ、という行為はあまり好きではないのだろう。

「ふ~ん。姉さまの姉上か。だからこんなに非常識なのじゃな・・・。
 む?姉さまの姉上!?そ、それはつまり.....女神様なのではないか!?」
「その通り。悪かったね。非常識でさ。あひゃひゃひゃひゃひゃw」
「「!?」」

アルテミス様が、あまりにも普通に登場してきたので、俺もドールも一様に驚いた。

「やっほー!アルテミスお姉ちゃん( ´∀` )」
「待たせたね。アテナっち。ちょっと寝坊しちゃってさ」
「わかるーわかるー!私も旅行前日はねれなかったからねー!」
「そうそう。興奮しすぎて、ぐっすり寝ちゃったよ」

話し噛み合ってねえ!それに普通に会話してんな!

それにしても、想像していたのとは全然違った。
普通神様の降臨と言ったら、神々しいオーラが放たれて、その場にいる全員が思わずかしづいてしまうようなものを想像していたのだが・・・

「アユムっちもずいぶん待ったみたいだね。殊勝、殊勝。昨日のお説教が効いているようでなによりだよ」
「は、はぁ・・・。
 それにしても、普通に登場しすぎじゃないですか?もっと神らしいのを想像していたのですが・・・」
「規定では一応、決まりがあるんだけど、めんどくさいじゃないか。そんなのは無視だよ、無視」

アルテミス様は相変わらずアルテミス様らしい。
そして相変わらずなのはそれだけじゃない。.....香ばしい!

・・・。

挨拶も一通りし終えたので、早速遊びに繰り出そうとしていたら・・・

「なんだい?言いたいことがあるなら言いなよ?」

突如アルテミス様が、ドールに向かって悪魔の如くにやけた表情で話し掛けた。

「ひ、人を.....主を待たせたのであるから、いくら女神様と言えど詫びるのが筋であろう?」

しかし、強気な言葉とは対照的に、当のドールは少し異様だ。
全身の毛が逆立ち、ぶるぶると震えている。
警戒.....とは少し違い、なんかこう恐れているような、いや、畏れていると言ったほうが正しい気がする。

「お、おい、よせ。俺はいくら待たされても大丈夫だから・・・」

ドールがそんな異様な状態になっているからこそ、敢えて止めに入ったのだが・・・

「あたしがアユムっちに詫びる?神が人間に?あひゃひゃひゃひゃひゃw」
「な、なにがそんなにおかしいのじゃ!例え神であっても、詫びる必要があれば詫びるのは当然であろう!」

「だから、よせって。俺は別に気にしていないから」
「主が良くても、妾は許せぬ!我が主に無礼を働いたのじゃ!詫びるまで許さぬ!」
「!?」

正直かなり驚いた。
ドールの忠誠心がここまで高いとは予想すらしていなかった。
だからこそ感激したし、愛おしくもなった。.....今すぐぎゅ~ってしたい!

しかし謝罪を要求されたアルテミス様は・・・

「わ、詫びるまで許さない?そうかい。そうかい。
 .....ぷwあひゃひゃひゃひゃひゃw腹痛い~wひぃ~ひぃ~w
 ぽんぽん痛いから~もう笑わさないでくだちゃ~いwごめんなちゃ~いw
 こ、これでいいかい?あひゃひゃひゃひゃひゃw」

謝罪という名の嘲りをドールに浴びせ続けた。
予想通りすぎて何も言えない。

アルテミス様のこの態度に、ドールはさぞや憤懣やるかたない様子になっているだろうと思ったのだが、やはりどこかおかしい。
表情は間違いなく激怒しているのだが、体が先程までと一緒で毛が逆立ち、ぶるぶると震えている。
アルテミス様が怖いのはわかるが、それでもこれは異常だ。不安になる。

「か、勘違いするでない!詫びるのは妾にではなく、主に、じゃ!はようせんか!」
「あひゃひゃひゃ・・・へ~。あまりにも神に対して不遜すぎるから、面白くて笑って許していたけど、さすがにちょっと頭にくるね」

アルテミス様の目付きが嘲りから猛禽類かの如く豹変した。これはやばい!
俺が恐怖を抱いた目付きのそれと同じものだ。

俺が恐れを抱くのだから、当然ドールも同様に恐れを抱いている。
全身の毛が逆立ち、ぶるぶる震えているのは一緒なのだが、それに加え、歯がカチカチと激しくかち鳴り、見目麗しい双眸には涙をいっぱい溜めている。
とても人には見せられない顔をしているのだが、それでも絶対に引かない!との断固たる決意が窺える。

どうしてそこまで俺に忠誠を誓えるのかはわからないが、それでも強くて美しい姿だと思ってしまった。

「.....いや、本当に驚いたよ。まさか眷属に、ここまで反抗されるとは思ってもみなかった」
「眷属.....ですか?」

「そうだよ。あたしは狩猟を司っているけど、その他には森の神も司っている。
 つまり森の神を敬い、信仰する獣人族は等しくあたしの眷属になるというわけ」
「ではドールの様子がおかしいのも・・・」

「当然、森の神であるあたしに逆らっている影響だろうね。
 獣人族は身体的特徴が優れているけど、言ってみれば、身体に対しての影響に敏感だということになる。
 だからこそ、体が自然とあたしには逆らってはいけないのだと認識して、拒絶反応を起こしているんだろうね」
「そ、そこまで・・・」

「その狐は特に、だろうね。先祖である九十九尾があたしのペットになっている訳だし」
「・・・」

アルテミス様の言葉を聞いてゾッとした。

先祖代々敬ってきた存在であるアルテミス様に逆らうという決して行ってはいけない行為。
それをすることが、どれだけドールの体に負担をかけているのだろう。
無宗教である俺なんかでは、恐らく想像がつかない苦しさ、痛み、不快さを感じているに違いない。

それだけに・・・どうしても疑問が残る。
ドールはなぜ、そんな辛い目に合ってまでも、アルテミス様に逆らうのだろうか。
ドールはなぜ、そんな辛い目に合ってまでも、俺に忠誠を誓おうとするのだろうか。

ドールのことが.....ドールの気持ちが.....全くわからない。
でも主人として、ドールの為に今すべきことはわかっている。

「アルテミス様、申し訳ありません。
 ドールの無礼な振る舞いは許されることではありませんが、何卒お許しください。
 ドールの主人として、俺がドールの代わりにその罪を償います」

謝罪をしつつ、俺は頭を下げた。

俺にできること.....それは一刻も早く、ドールの苦しみを取り除いてやることだ。
ドールの意にそぐわないことはわかっている。もしかしたら失望されてしまうかもしれない。

それでもドールの体が最優先だ。
ドールの怒りは甘んじて受け入れるつもりだ。

.....情けない主人でもいい。それでも俺はドールを助けたい。

そんな俺の気持ちが通じたのか、アルテミス様は・・・

「奴隷は主人を想い、主人は奴隷を想う。美しい主従愛だね~.....でも、ダメだね」
「・・・」

主従愛は認めつつも、当然のように俺の謝罪を撥ね付けた。
予想はしていた。だって俺とアルテミス様は対等ではないのだから・・・。

「その狐はアユムっちの奴隷である前に、あたしの眷属なんだよ?
 絶対的主人であるあたしに逆らうなんてあってはならないこと。
 尻尾を振る眷属は可愛がるけど、牙を剥いてくる眷属にはお仕置きと立場をわからせる必要がある」

最早、万事休す。
ドールは折れるつもりはないだろうし、アルテミス様はなおのこと諦めるつもりはないだろう。
アルテミス様が降臨して早々、こんな展開になるとは思ってもみなかった。

かくなる上は、アルテミス様打倒か!?と思われたその時、

「コンちゃんをいじめたらダメーヽ(`Д´#)ノ」

あまりの急展開に、その存在すらも忘れていたアテナから待ったがかかった。

「いじめるんじゃないよ。お仕置きと言う名の躾をするんだ。必要なことなんだよ」
「躾は私がするのー!アルテミスお姉ちゃんはじゃましないでー!」
「邪魔って・・・。その狐はあたしの眷属なんだよ?あたしがしっかりと管理する義務がある」
「アルテミスお姉ちゃんの眷属であっても私の妹だよー!妹の面倒をみるのはお姉ちゃんのやくめー!」

わがままアテナ』対『傍若無人アルテミス様』。
なんと言う、恐ろしさしか生まない対決なのだろうか。

「.....アテナっち。いい加減にしないと、あたしも怒るよ?」
「アルテミスお姉ちゃんこそいいかげんにしてよねー!ニケにいいつけるよー!」
「!?」

おぉ!あの傍若無人なアルテミス様が一瞬怯んだ。
アテナの虎の威を借りる作戦は効果バツグンみたいだ。
虎の威ってのが釈然としないが、神は.....世界は.....アテナに優しい。相手の弱点をつくのは、アテナに許された特権だ。

それにしても、あのアルテミス様を怯ませるニケさんっていったい・・・

「あ、あたしは自分の仕事をだね・・・」
「妹の面倒をみるのが私のしごとだよー!じゃましないでー!アルテミスお姉ちゃんのこときらいになるよー!」
「!?」

おぉ!あの神にふさわしい存在であるアルテミス様が、膝から崩れ落ちそうなほどのショックを受けている。
アテナの伝家の宝刀『きらいになる』の前では、神すらも敵わないらしい。
しょうもない宝刀だが、神は.....世界は.....アテナを愛している。相手の急所を抉るのは、アテナに許された特権だ。

それにしても、あのアルテミス様を絶望の淵に追いやるアテナっていったい・・・

「ご、ごめんね。もうしないから許して?」
「もうコンちゃんのこといじめないー(。´・ω・)?」
「あぁ、いじめない。狐はアテナっちの妹だからね」
「約束ねー!今度コンちゃんをいじめてるの見たら絶交だからねー!」
「ぜ、ぜっこう・・・。や、約束する!お姉ちゃんは他の何よりもアテナっちとの約束を守るよ!」

神陥落。アテナ強し。
しょうもない戦いが、くだらない聖戦が、どうでもいい大戦が今ここに終結した。

そして同時に、一つの真理にたどり着いた。
アルテミス様が暴走したら、アテナに頼めばいいだけだと。

そう考えたら、最早アルテミス様は恐ろしい神様ではなく、単純にちょろい神様だと思えるようになった。
アルテミス様に復讐されない程度に、アテナを今後は活用していこう。


こうして、波乱の幕開けとなったアルテミス様の降臨劇は終幕を迎えた。

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後書き

次回、アルテミスとのデート?

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今日のひとこま

~外伝の始まり~

「アテナっちには敵わないね~」
「にへへー(*´∀`*)ありがとー!アルテミスお姉ちゃん」
「あぁ~!もうかわいいね~!お持ち帰りしたいくらいだよ!」
「んー?休暇終わったら帰るよー(。´・ω・)?」

「アルテミス様。ドールを許して頂き、ありがとうございます」
「アテナっちとの約束だしね。それにそんな状況じゃ、どうしようもないだろ?」
「.....え?」
「あああああ!コおおおおおおおおおおンちゃああああああああああん(´;ω;`)」

アルテミス様の指差す先とアテナの絶叫の先にあるのは・・・
白目を剥き、口から泡を噴き、体が硬直して倒れているドールその人だった。

「相当無理していたみたいだね。気力だけであたしに逆らっていたみたいだ。.....いやはや、本当に驚いた」
「ドール・・・」
「正直、アユムっちにはもったいない奴隷だよ。昔の偉人じゃないけど、アユムっちに過ぎ足るものが2つある。
 アテナっちにその狐。そこのところをよく考えて、よく感謝をして、日々を生きていくんだね」
「・・・」

そんなことは言われなくとも十分理解している。それに俺は足らないことが多い存在だとも・・・。

「.....ドール、どうしましょうか?」
「宿に連れ帰って、休ませるしかないだろ」
「そうですね。じゃあ・・・」
「おっと!アユムっちはあたしの案内役になってもらうよ。見ず知らずの土地に放り込まないでおくれよ」

「ではドールを宿に連れ帰ってから・・・」
「時間は有限なんだよ。早く案内しな」
「.....え?いや、でもドールが・・・」
「私がコンちゃんの面倒見るから安心してー(・ω・´*)」

安心できねえええええ!安心とは最も対極にいる存在じゃねえか!

「ど、どうやってドールを連れ帰るつもりだよ?」
「んー・・・アルテミスお姉ちゃんー、お願ーい」
「任せな!.....おいで!フェンリル!」

アルテミス様の掛け声とともに、その姿を現した狼のような獣フェンリル。

『お呼びでしょうか?アルテミス様』
「そこの狐とアテナっちを宿まで連れていくこと。またあたしが戻るまで、二人の護衛をしな」
『畏まりました。この命に代えましても、まもりぬき・・・』
「ご託はいいから、さっさといきな!」

アルテミス様に一喝された多分神獣であろうフェンリルは、きゃいん!、と怯えるように鳴いて、アテナとドールを背に乗せ走り去っていった。

「え、えっと.....町にあんな獣が出たら混乱するのでは?」
「あ~。あの子は大丈夫。透明になれるスキルを持っているからね」
「な、なるほど。でも指示してませんでしたよね?大丈夫ですか?」
「あたしのペットはそこまでバカじゃないからね。猿王がいい例さ」

あのボス猿を例に出されると、妙に納得してしまう自分がいる。基準はいつもボス猿だ。

「じゃあ!張り切っていこうか!案内頼むよ、アユムっち!」
「お手柔らかにお願いします」

こうして、アルテミス様と不安しかない二人っきりの観光が始まった。

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ドールの必死の頑張りにより、これ以降たまにではありますが、本編や閑話とは異なる『外伝』が登場します。
近々、外伝①を掲載予定です。

ドールの頑張りが報われました。良かった・・・

コメント

  • なつきいろ

    コメントありがとうございます。

    いえいえ!
    主人公は臭いフェチなのではなくて、アルテミスの臭いが好きなだけですから!(主人公談)

    0
  • 葛餅太郎

    どMにハードな臭いフェチとは、、、レベルが高いw

    1
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