異世界を追い出された俺は──元の世界でハーレム作りに勤しみます【凍結】

決事

プロローグ

やっとこさ終着点の魔王城に入り込んだ俺たち勇者御一行。
ここまでの道のりで鍛えた俺たちにとって、この最後の砦である魔王城にいる魔物たちでさえ敵ではなかった。
さくさく障害なく進み、最上階のとんでもなく大きい扉の前で、
「みんな……これが、最後の戦いだ。異世界から召喚されて右も左も分からなかった俺について来てくれて、本当に、言葉に出来ないくらい感謝している。──ありがとう」
今の気持ちを伝えた。
言葉足らずではあったが、涙を見せないよう俯く俺の背を叩く仲間達の顔を見れば、全部伝わったと分かる。
俺なんかが彼らに返せるものなんてないけれどここで魔王を倒せば僅かばかりの恩返しとなるだろう。
「──よし、行こう!」
開いた扉から禍々しい魔力が溢れ出た。

「これで終わりだ!」
テンプレートも甚だしい台詞と共に愛剣を突き出す俺。
後々振り返ってみると、これがいけなかったんだ、と最も後悔する場面だ。
こんな時に一級フラグ建築士並のチカラを発揮しなくて良かったのに、と。
「ま、待て! 待ってく」
魔王は何か喋っているようだったが奴の言葉になど耳を貸さずそのまま足を踏み出した。
しかし、魔王が跪いた所為で心臓を狙っていた剣はーー彼女が着けていた仮面を叩き割った。
「……は? 女?」
唖然呆然としたのは十秒程度。
性別を無視して今度こそ、と剣を振りかぶった。
「待て待て待て待て! 待ってください!」
すると、彼女は切迫した調子で制止を叫んだ後額を床に擦り付け、土下座した。
ド・ゲ・ザ。
土下座。
ジャパンで誠意を込めて謝罪する際はこの体勢が一番良いと言われている。
「頼む! 命だけは!」
尚も叫び続ける魔王。
その姿はまさにド三流のチンピラそのもの。
魔物たちの頂点に立つ王としての威厳の欠片もない。
「まだ私はーー恋愛をしていない! 母の遺言なんだ! 頼むから命だけは取らないでくれ!」
顔を上げた美人顏。
それを見てしまったことが直接の最大の原因だろう。

「オーケー! 俺のハーレムの一員となれ!」

日本にいる時からハーレムに憧れていた健全な男子中学生である俺は。
何も悪くない!

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