努力を極めた最強はボッチだから転生して一から人生をやり直す

九九 零

詮索

神秘の塔を後にしたオレ達は、宿屋に戻った。

だが、帰宅してすぐ、オレの手の甲に神の紋様がない事に気付いたラッテンは納得のいかなさそうに、終始疑問を投げかけてきている。

「本当に宜しかったのでしょうか?神の祝福は、10歳になるその年にしか受けれませんが…?」

「構わない」

「しかし…」

「なに、問題あるまい。そんな子供騙しの事をした所で、オレには何の意味も為さないのだからな」

「そうですか…」

そう。オレには何の問題もない。
力など、楽をして手に入れる物ではないのだ。

努力を積み重ねてこそ、本当の力が手に入る。
何年掛かろうが、何百年掛かろうが、努力さえしていれば必ず報われると言うものだ。

だから、ラッテンが悲しむ必要など、どこにもない。オレも気にしていない。

例え、転生したにも関わらず魔導機に嫌われようと、気にしない。

人にまで嫌われてないだけマシだ。

「して、父達はまだ戻らぬのか?」

「そのようでございますね。先程、使いを寄越したのですが…」

「そうか。まぁ良い。オレは少し出掛けてくるので、帰ってきたら伝えておいてくれ」

「…畏まりました」

少し困ったような表情を浮かべたが、どこ行くのかは聞かぬのだな。
まぁ、その方がオレにとっては都合が良い。

この街にある神殺しの塔…いや、今は神秘の塔だったな。
それが有ると言う事は、前世のオレの死体がこの付近にあると言う事だ。

あれから、どれぐらいの月日が経過してるかは定かではないが、どうしてもアレ・・だけは誰かの手に渡る前に回収しておきたい。

そうしなければ、アレを使用されると、使用者だけではなく、周りにも少なくない被害が及ぶ。

全部が揃わないと本来の力は出せないのだが、オレは死ぬ寸前まで身に着けていた装備だ。
使い方によっては鉄屑同然だが、力を引き出せない事もないのでな。

そんな訳で、街の外に出ようと思ったのだが、門兵に止められてしまった。

「この先は危険だから、子供を一人で行かせる訳にはいかないんだ。親とか一緒じゃないのか?」

ふむ。困ったな。

外に出るには保護者が居るのか。
この辺りの魔物など、たかが知れてるだろうに。
サリアでも片手間で倒せる程だぞ。

しかし、人間の作ったルールだ。そして、オレとて前世共に人の子だ。
…守らなければならぬのだろうな。

「ふむ。父は居るが、生憎と倒れているのでな。なに、少しだけだ。探したい物があって外に出たいのだ。それでも通してくれぬか?」

「そうか。父親が倒れちまったのか。お前も大変だな。…今回だけだぞ」

何を勘違いしたのかは分からぬが、門兵は道を開けてくれた。
これで、心置きなく捜索が出来ると言うものだ。

それから、探し続けて2時間程が経過した。

「ふむ。見つからぬものだな」

そう簡単に見つけれるとは思っていなかったが、予想以上に見つからなかったのだ。

オレが捜した場所は分かりやすい跡が残っている。なにせ、地上を見渡す限り見つからなかったので、穴を掘りまくったのでな。

「仕方ない。アレを使うか…」

余り信憑性はないが、そうも言ってられない。

近くに落ちている石を拾い集めて一箇所に集める。

石の中に混ざっている鉄鉱石が必要なのだ。
剣などを作れるまでの量は求めていないが、それなりに欲しい。

ある程度集めてから、錬金魔法で球体型の鉄の塊を作る。

不要になった石の残骸は捨てるが、鉄鉱石内に含まれている不純物は残したままだ。
それがある方が今から行う事にとっては都合が良い。

鉄の塊に再度、錬金魔法を掛けてL字型の棒を二本作る。

それを両手に持ち、オレの欲す物を思い浮かべながら魔力を少し込めると、棒の先端が動いて一箇所を指し示した。

これは、俗にダウジングと呼ばれる物だ。

早速反応があったが、しかし、そこは既に掘り出した場所だ。
ちなみにだが、そこにあったのは腐った鉄製のフライパンだ。

「ふむ。やはり、これは精度が低いな。だが、アレを捜すにはこれしか方法がないと来た…ふむ、困ったな」


〜〜〜


あれから、太陽が傾き始めるまで探したのだが、やはり、見つからなかった。

薄々と予想していたが、一部すら見つからないとなると、さすがに困る。

アレは全部揃って力を発揮する。一つでも足りなければ、鉄屑と同義だ。
力を引き出す方法は無くもないが、それぐらいならばオレでも対処可能だから問題はない。

しかし、その全てが誰か一人の手に渡るとなると、さすがのオレでも手に余る。
その者に善の意思があろうと、悪の意思があろうと、アレには関係ないのだからな。

アレは、人間如きが扱える代物ではないのだ。

できれば、朽ち果ててくれていれば良いのだが…。

そんな淡い願いを抱きながら、オレは空を見上げる。
既に時刻は夕刻。夕焼けが美しい時だ。

もう少し捜していたいのだが、オレの帰りが遅いと父が心配するかも知れぬ。
だから、アレ…もとい、”虚無の鎧”の捜索は一時中断し、街に戻るとしよう。

無論、心残りはあるがな。


〜〜〜


「ふむ。父よ。また行くのか?」

「当ったりめぇだ!呑める時に呑む!それが、男の生き甲斐だ!」

ガッツポーズを取りながら力説されたが、オレにはイマイチ納得のいかない言葉だ。

なにせ、オレは酒を飲めない。いや、少し語弊があるな…。オレは生まれてこの方、酒を呑んだ事がないのだ。

これまで力ばかりを求めていた為に、そう言うのには疎いのだ。

だから、父の言葉に理解ができないのだ。

ふむ…。

「また呑みに行かれるのですか?」

「おうともさっ!こう言う時に呑まなくちゃ、いつ呑むって言うんだ!?今だろ!今しかないだろ!?なに、新しく出来た友人と呑みに行くだけだ。何も問題ない!」

どうやら、隣でも二児の父であるアークがラッテンと言い合っているようだ。

話を聞く限りだと、オレの父と同じように、酒を呑みに行く事についてだ。

「問題大有りです。また、他の方達に御迷惑をお掛けするつもりですか?」

「大丈夫だ!その時は、その時だ!」

そう言うとアークは顔をこちらに向け、オレの父と目が合うと二人でニカッと笑いあった。

「よしっ!話は着いたぞ!」

「俺もだ!」

「「いざっ、新天地へ!!」」

ふむ。二人仲良く肩を組みながら夜の街へと繰り出して行ってしまった。

この感じだと、明日もまた寝込んでいそうだ。そうなると、オレはどうすれば良いのだ?

外で鎧探しに励んでも良いのだが、アレは効率が悪すぎる。
しかし、アレ以外に方法が……ふむ。あったな。

”ライブラリ”に行けばいいのだ。

この世界の情報を総て集められた異界の図書館。だが、あそこに行くとなると色々と準備が必要になるな…。

これからの事を考えていると、玄関の扉が勢い良く開かれた。

「イクス!言い忘れてたけどよ、帰るのは一週間後だ!”トレール”で帰るぞ!」

父だ。

言い終えると忙しそうに走り去って行ったが、一つの疑問が浮上した。

トレール。
それは、なんなのだ?

名前から察しようにも、想像が付かぬ。

「お困りのご様子ですね、イクス様。何か私に出来る事はありますでしょうか?」

ラッテンか。
少し気を逸らすだけで見失ってしまうが、気配は感じ取れるようになった。

「ふむ。トレールとは、なんだ?」

「そちらでございましたか…」

何やら残念そうな表情を浮かべるラッテンだが、それ以外に何かあったか?

まぁ、いい。
ラッテンならば知っているだろう。

「トレールとは、地面に埋め込まれたレールの上を走るアーティファクトの事です」

地面に埋め込まれたレール?
ああ、魔道式列車の事か。

『範囲指定』と『空中浮遊付与』の術式を描いたレールを地中や水中に設置し、その上を浮くように列車を走らせると言うものだ。

地上にレールを置かない理由は、魔物に壊される可能性があったからだ。
それに、少し特殊な金属を使用していたので、他の者にレールを盗まれる可能性もあったからな。

とは言え、作ったのは良かったのだが、使ったのは少しの間だけで、新たな魔法を開発してからは一度も使用しなかった代物だ。

まだ残っていたとはな。

「”神代の時代”に作られたとされる遺物でして、他国まで利用している便利な移動手段です」

む?そうか。
移動手段として扱われているのか。
確かに移動手段として使用する事は出来なくはないな。

本来の用途は似ても似つかぬものなのだが…。

まぁ、それはそれで良いのだろう。
争い事などない方が幸せと言うものだ。

それにしても、神代の時代とは…。まさかとは思うが、魔導歴か?

ふむ。それが一番しっくりと来るな。
だとすれば、古代歴とやらは神魔歴になるのか?

しかし…その時代に魔王が出現したのは一度だけの筈だ。にも関わらず、オレと同名の何者かが魔王を討伐した事になっている。

これは一体どう言う事だ?

また神の悪戯か?それとも、未来ではなく、また・・異世界へ渡ってしまったか?

「納得頂けませんかったでしょうか?」

ふむ。ラッテンの表情を読む技能に関しては感心するな。しかし、それが元で勘違いも起きるようだ。

「いや、なに。新たな疑問が浮上しただけだ」

「私めに答えれるのであれば、なんなりとご質問下さい」

それは助かるな。

「では聞くが、神代の時代の勇者オルタナとは、どう言った者だったのだ?」

「勇者オルタナ様ですか。彼は偉大で歴代勇者の中でも最強とされる太陽と神々と精霊達に愛された勇者様でございます」

オレではない別人だな。神族と精霊とは敵対していた。愛されるなど、絶対に有り得ない話だ。

だとすれば、神々の悪戯か?
それとも、オレの居た世界とは違う世界なのか?

「ふむ。新たな質問だ。この世界の名はなんと言う?」

「”ラグトム”でございます」

ふむ。オレの居た世界と同じ名だ。

この世に、一つとて同じ名前の世界は存在しない。それが、この世の理。
なので、異世界と言う線は消えた。

残る候補は神の悪戯か、未来か、だな。

「ふむ。これで最後だ。神代の時代とは、神魔歴ではないのか?」

「しんまれき…ですか?確かに、そのような名前で呼ぶ方もいらっしゃいますが、余り知られない名前でございますね」

ふむ。これで合点がいった。
ここはオレが居た世界の未来で間違いがない。僅かばかりの不安が残っていたが、転生は成功していたのだ。

そして、これが神の悪戯でない事も分かった。

アイツ等は、強欲で強情だ。
もし、そうであったならば、オレが質問している最中に邪魔をする筈なのだ。

だとすると、この時代に至るまでの間に、オレと言う存在の伝承が変わった可能性がある。

「もう一つ良いか?」

「はい。なんなりと」

「神代の時代から、何年が経った?」

「おおよそ、5000年でございます」

ふむ。そうであったか。
それならば納得が行くと言うものだ。

それだけの時間があれば、言い伝えなど容易く変わってしまうと言うものだ。

「ふむ」

だとすると、オレは遥か遠くの未来に転生したのだな。
まぁ、その方が都合が良い。

少しばかり寂しい気持ちもあるが、オレを知る者はとうの昔に居なくなっているのだ。
生憎と脚色された伝承だけは残されているが、なに、問題はない。

オレがオレだと知られなければ良いだけの話だ。

新たな人生を歩むには、オレの過去などない方が良いのだ。一から全てをやり直す。それが、オレの転生した本当の目的なのだからな。

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