努力を極めた最強はボッチだから転生して一から人生をやり直す
ドラゴン
「やっぱ、近くで見ると怖ぇな…」
ソイツは空を縦横無尽に飛び回り、たまに地面に降り立つと人を捕らえては空へと舞い戻り、空から落としたり、口から火を吹いたりを繰り返している。
それを目の当たりにした俺は、怖気付き、今すぐにでも逃げ出したくなった。
だけど、だけどよ、俺の背後には守らなきゃならねぇもんがいんだ!
だから、ここで引くわけにはいかねぇ!
「グランズ。俺も一緒に行くぜ」
なっ!?
「な、何してんだよ!アーク!」
「ふっ、なに。友を差し置いて俺だけ逃げるなんて、恥ずかしい事が出来るかよ」
そう言って強がっているアークだが、俺と一緒で、剣の柄に置いている手が震えている。
…そうだよな。
怖いのは俺だけじゃねぇんだ。
「く、くはははははっ!」
思わず、笑いが込み上げてきた。
「やってやろうじゃねぇか!」
そうだ。
息子達を守る為に、そして、息子に尊敬される親になる為に、命ぐらい賭けてやろうじゃねぇかよ!
「おう!俺達の父親魂!見せてやろうじゃねぇか!」
俺とアークは互いの意思のこもった目を合わせ、同時に頷く。
そして、空を縦横無尽に飛び回る魔物ーードラゴンを睨みつける。
「「いくぞぉぉぉ!!」」
ーーー
「ふむ」
父達が無謀にも竜へと挑みに行ってしまったな。
別に父達が向かわなくとも、竜は何かと戦っているように見える。それに、オレが討伐するつもりだったのだが…それでも向かうようだ。
いや、その事に気が付いていないのか?
まぁ、良い。
少しばかり急がなくてはならなくなっただけだ。
他人が死のうと今のオレにとっては関係のない事だが、親しき者が死ぬのは見ていられないのでな。
オレは、近くの露店に売り出していた外套を拝借し、羽織って姿を確認できぬようにしてから、父達の向かった竜の元へと一足先に向かう。
ーーー
「こっちに回復ポーション頂戴!」
「ダメだ!鱗が硬すぎる!」
「怪我人を早く医療班に回せ!邪魔だ!」
「ヤバイ!また来るぞ!」
「退避!退避!!」
ズシィィンッとドラゴンの巨体が音を立てて地面に降り立ちます。
それだけで、逃げ損ねた兵士や冒険者の数名がドラゴンの下敷きとなって瀕死となりました。
もしかすると、死んでしまった人もいるかもしれません。
「攻撃だ!ブレスを吐かすなっ!」
ドラゴンが攻撃の届く地面に足を付けたのをチャンスと見た冒険者達は果敢にも攻撃を仕掛けます。
ある者は魔法を。ある者は剣や槍を。ある者は矢を放っています。
でも、どれもドラゴンの硬い鱗に傷一つも付けれてません。
そんな事をしてる間に、ドラゴンの持つ最大の攻撃手段…人々からすれば脅威とも言えるブレスが放たれました。
真っ赤な炎が放射状にドラゴンの口から放たれ、冒険者や兵士。その背後にある建物の数々が赤く燃え盛ります。
それだけで大半の冒険者や兵士が行動不能となりました。
「やっぱり、無理なんですよ…」
それでも果敢に立ち向かう兵士や冒険者達は居るのですが、ドラゴンが軽く身動ぎするだけで、軽々と吹き飛ばされます。
私は、その有様を、呆然と見つめる事しか出来ません。
時が経つにつれて、冒険者と兵士の数は減り続け、遂には私一人を残して全滅してしまいました。
最後に残った私は、死体や瀕死となった人達の中で腰を抜かせて座り込んで動けないでいます。
そんな私をドラゴンはギロリと睨み付け、口を大きく開きました。ブレスを吐こうとしているのでしょう。
どうやら、私の一生はこれで終わりのようです。
まるで、他人事のように感じますが、走馬灯が頭を駆け巡ります。
〜〜〜
私は冒険者の一人。
だけど、一介の低ランク冒険者にすぎません。
冒険者ランクは最低の”H”で、戦闘では何の役にも経たない雑用係や荷物持ちです。
でも、孤児である私が生きて行くには、年齢を気にせずに就職できる冒険者しかなかったのです。
そんな私がこの街に来た理由は、神の祝福を受ける為です。
そうすれば、少しは力を得て、少しだけでもランクを上げれると思ったからです。
でも、私一人では到底この街には辿り着けません。ですから、無償で冒険者の方々の荷物持ちとして追随させてもらって、ようやくこの街に辿り着きました。
でも、神様は神の祝福を受ける事さえも許してくれませんでした。
豪雨の中この街に着いた私は、すぐに神の祝福を受けに行こうとしたのですが、そんな時、突如、警報が鳴り響きました。
冒険者にはルールがあります。
その中に、警報が鳴った際には必ずギルドへ集まらなければならない、と言った事があるのです。
そんな事を無視してでも、私は神の祝福を受けに行きたかった。でも、そうすると、私は冒険者として失格の烙印を押され、これから一生冒険者をさせてもらえなくなります。
そうなると、私が生きて行く術を失う事になります。
ですから、私は嫌々ながらギルドへ向かいました。
そして、告げられました。
ーードラゴンが来た、と。
豪雨の為に視界が悪く、発見が遅れた。
それがギルドの言い分でした。
そして、そのドラゴンは既に街のすぐそばまで来ている。と続いて報告が上がりました。
ギルド内に居る冒険者達に震撼が走りました。
なにせ、ドラゴンはランク8のベテラン冒険者が束になっても敵わない格上の存在なのです。
それに、冒険者は誰も逃げてはならないと言う事に他ならず、私みたいな低ランクも戦闘に参加しなければならないのです。
私は、神の祝福を受けれない。そう告げられたように感じました。
豪雨で視界が悪く、対応が遅れた為に街の外で撃退できずに侵入を許してしまったドラゴンを街中で討伐する。
それが、この街の存亡を賭けた緊急依頼と言う名のギルドからの強制依頼でした。
私に逃げ場はありません。
もし逃げてしまえば、孤児である私は冒険者として失格させられてしまい、餓死してしまう事でしょう。
とは言え、私は低ランク冒険者。
緊急依頼に参加しますが、役目は荷物運びで、直にドラゴンと戦うわけではないのです。
まだ助かる余地はありました。
ですが、それは無理と言うものでした。
ドラゴンと言う存在は、人間が敵う相手ではなかったのです。
絶対的な力。圧倒的な存在感。
どうしようもなく、格上の存在だったのです。
そんな相手に、どうやっても格下の人間が勝てるはずもなく、結果はーー私一人を置いて全滅。
そして、そんな私も、今にも殺されそうになっています。
ドラゴンとの距離が建物の2つ分も離れていても、ドラゴンが口内で溜めている炎の熱は私の皮膚をチリチリと焼きます。
今すぐにでも逃げ出したい。
そう思いますが、私の足は恐怖に竦んでしまって全く動きません。
死にたくない。
これまで何度となく行ったように、私は神様に祈ります。
でも、どれだけ祈ろうと神様は助けてくれません。分かりきっていた事ですが、今の私が出来る事はこれしかないのです。
遂に、ドラゴンはブレスを放ちました。
それは、これまでと違い、炎球となって放たれました。
「誰か…助けて…」
強く拳を握り締めて祈ります。
悪魔でも、魔王でも、誰でも良い。何でもします。だから、助けて下さい、と。
迫り来る炎球が怖くて私は目を強く瞑りました。炎球の猛熱が私の身を焼こうとしているのが感じ取れます。
とても熱くて、とても怖いです。
私の人生は、これで終わりなのでしょうか…。
「ふむ。少々甘く見過ぎたようだな」
炎球の発する熱が消えると同時に聴こえてきた声に、私は顔を上げて目を開けました。
死を直前にした私が目にしたのは、可愛らしいハートマークが背に描かれたブカブカの外套を着た子供でした。
「あぁ…」
どうやら、死を直前にして、恐怖で私は気でも狂ったようです。
ソイツは空を縦横無尽に飛び回り、たまに地面に降り立つと人を捕らえては空へと舞い戻り、空から落としたり、口から火を吹いたりを繰り返している。
それを目の当たりにした俺は、怖気付き、今すぐにでも逃げ出したくなった。
だけど、だけどよ、俺の背後には守らなきゃならねぇもんがいんだ!
だから、ここで引くわけにはいかねぇ!
「グランズ。俺も一緒に行くぜ」
なっ!?
「な、何してんだよ!アーク!」
「ふっ、なに。友を差し置いて俺だけ逃げるなんて、恥ずかしい事が出来るかよ」
そう言って強がっているアークだが、俺と一緒で、剣の柄に置いている手が震えている。
…そうだよな。
怖いのは俺だけじゃねぇんだ。
「く、くはははははっ!」
思わず、笑いが込み上げてきた。
「やってやろうじゃねぇか!」
そうだ。
息子達を守る為に、そして、息子に尊敬される親になる為に、命ぐらい賭けてやろうじゃねぇかよ!
「おう!俺達の父親魂!見せてやろうじゃねぇか!」
俺とアークは互いの意思のこもった目を合わせ、同時に頷く。
そして、空を縦横無尽に飛び回る魔物ーードラゴンを睨みつける。
「「いくぞぉぉぉ!!」」
ーーー
「ふむ」
父達が無謀にも竜へと挑みに行ってしまったな。
別に父達が向かわなくとも、竜は何かと戦っているように見える。それに、オレが討伐するつもりだったのだが…それでも向かうようだ。
いや、その事に気が付いていないのか?
まぁ、良い。
少しばかり急がなくてはならなくなっただけだ。
他人が死のうと今のオレにとっては関係のない事だが、親しき者が死ぬのは見ていられないのでな。
オレは、近くの露店に売り出していた外套を拝借し、羽織って姿を確認できぬようにしてから、父達の向かった竜の元へと一足先に向かう。
ーーー
「こっちに回復ポーション頂戴!」
「ダメだ!鱗が硬すぎる!」
「怪我人を早く医療班に回せ!邪魔だ!」
「ヤバイ!また来るぞ!」
「退避!退避!!」
ズシィィンッとドラゴンの巨体が音を立てて地面に降り立ちます。
それだけで、逃げ損ねた兵士や冒険者の数名がドラゴンの下敷きとなって瀕死となりました。
もしかすると、死んでしまった人もいるかもしれません。
「攻撃だ!ブレスを吐かすなっ!」
ドラゴンが攻撃の届く地面に足を付けたのをチャンスと見た冒険者達は果敢にも攻撃を仕掛けます。
ある者は魔法を。ある者は剣や槍を。ある者は矢を放っています。
でも、どれもドラゴンの硬い鱗に傷一つも付けれてません。
そんな事をしてる間に、ドラゴンの持つ最大の攻撃手段…人々からすれば脅威とも言えるブレスが放たれました。
真っ赤な炎が放射状にドラゴンの口から放たれ、冒険者や兵士。その背後にある建物の数々が赤く燃え盛ります。
それだけで大半の冒険者や兵士が行動不能となりました。
「やっぱり、無理なんですよ…」
それでも果敢に立ち向かう兵士や冒険者達は居るのですが、ドラゴンが軽く身動ぎするだけで、軽々と吹き飛ばされます。
私は、その有様を、呆然と見つめる事しか出来ません。
時が経つにつれて、冒険者と兵士の数は減り続け、遂には私一人を残して全滅してしまいました。
最後に残った私は、死体や瀕死となった人達の中で腰を抜かせて座り込んで動けないでいます。
そんな私をドラゴンはギロリと睨み付け、口を大きく開きました。ブレスを吐こうとしているのでしょう。
どうやら、私の一生はこれで終わりのようです。
まるで、他人事のように感じますが、走馬灯が頭を駆け巡ります。
〜〜〜
私は冒険者の一人。
だけど、一介の低ランク冒険者にすぎません。
冒険者ランクは最低の”H”で、戦闘では何の役にも経たない雑用係や荷物持ちです。
でも、孤児である私が生きて行くには、年齢を気にせずに就職できる冒険者しかなかったのです。
そんな私がこの街に来た理由は、神の祝福を受ける為です。
そうすれば、少しは力を得て、少しだけでもランクを上げれると思ったからです。
でも、私一人では到底この街には辿り着けません。ですから、無償で冒険者の方々の荷物持ちとして追随させてもらって、ようやくこの街に辿り着きました。
でも、神様は神の祝福を受ける事さえも許してくれませんでした。
豪雨の中この街に着いた私は、すぐに神の祝福を受けに行こうとしたのですが、そんな時、突如、警報が鳴り響きました。
冒険者にはルールがあります。
その中に、警報が鳴った際には必ずギルドへ集まらなければならない、と言った事があるのです。
そんな事を無視してでも、私は神の祝福を受けに行きたかった。でも、そうすると、私は冒険者として失格の烙印を押され、これから一生冒険者をさせてもらえなくなります。
そうなると、私が生きて行く術を失う事になります。
ですから、私は嫌々ながらギルドへ向かいました。
そして、告げられました。
ーードラゴンが来た、と。
豪雨の為に視界が悪く、発見が遅れた。
それがギルドの言い分でした。
そして、そのドラゴンは既に街のすぐそばまで来ている。と続いて報告が上がりました。
ギルド内に居る冒険者達に震撼が走りました。
なにせ、ドラゴンはランク8のベテラン冒険者が束になっても敵わない格上の存在なのです。
それに、冒険者は誰も逃げてはならないと言う事に他ならず、私みたいな低ランクも戦闘に参加しなければならないのです。
私は、神の祝福を受けれない。そう告げられたように感じました。
豪雨で視界が悪く、対応が遅れた為に街の外で撃退できずに侵入を許してしまったドラゴンを街中で討伐する。
それが、この街の存亡を賭けた緊急依頼と言う名のギルドからの強制依頼でした。
私に逃げ場はありません。
もし逃げてしまえば、孤児である私は冒険者として失格させられてしまい、餓死してしまう事でしょう。
とは言え、私は低ランク冒険者。
緊急依頼に参加しますが、役目は荷物運びで、直にドラゴンと戦うわけではないのです。
まだ助かる余地はありました。
ですが、それは無理と言うものでした。
ドラゴンと言う存在は、人間が敵う相手ではなかったのです。
絶対的な力。圧倒的な存在感。
どうしようもなく、格上の存在だったのです。
そんな相手に、どうやっても格下の人間が勝てるはずもなく、結果はーー私一人を置いて全滅。
そして、そんな私も、今にも殺されそうになっています。
ドラゴンとの距離が建物の2つ分も離れていても、ドラゴンが口内で溜めている炎の熱は私の皮膚をチリチリと焼きます。
今すぐにでも逃げ出したい。
そう思いますが、私の足は恐怖に竦んでしまって全く動きません。
死にたくない。
これまで何度となく行ったように、私は神様に祈ります。
でも、どれだけ祈ろうと神様は助けてくれません。分かりきっていた事ですが、今の私が出来る事はこれしかないのです。
遂に、ドラゴンはブレスを放ちました。
それは、これまでと違い、炎球となって放たれました。
「誰か…助けて…」
強く拳を握り締めて祈ります。
悪魔でも、魔王でも、誰でも良い。何でもします。だから、助けて下さい、と。
迫り来る炎球が怖くて私は目を強く瞑りました。炎球の猛熱が私の身を焼こうとしているのが感じ取れます。
とても熱くて、とても怖いです。
私の人生は、これで終わりなのでしょうか…。
「ふむ。少々甘く見過ぎたようだな」
炎球の発する熱が消えると同時に聴こえてきた声に、私は顔を上げて目を開けました。
死を直前にした私が目にしたのは、可愛らしいハートマークが背に描かれたブカブカの外套を着た子供でした。
「あぁ…」
どうやら、死を直前にして、恐怖で私は気でも狂ったようです。
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