仮面家族

奈緒

お小遣い

中学生の時は唯一の経済収入は
お小遣いだったと思います。

お小遣いも案の定、
もらうのには相当な苦労が必要でした。

態度が悪いからなし
お手伝いをしないからなし
部屋が散らかっているからなし
成績が悪いからなし

経済制裁を受けることは
心の余裕もなくします。

こっそり1日練習に行くにも
お昼ご飯が買えない。
こっそりお弁当を作るのも
許されませんでした。

そんなみっともないもの持ってくな
ままが笑われる
そう言われながら
お弁当を叩き落とされたこともありました。

お弁当の時間、1人食べないのは
またみんなと違うことが増えてしまう。
何か特殊な理由があって
嫌々だけど帰る、みんなから
それは帰った方がいいよ
と思われる理由がないと嫌われてしまう。

そう思って、いつも嘘をついていました。

「妹が1人になっちゃうので
お昼だけは1回帰らせてください」

みんながわいわい食べている中、
1人自転車を走らせ
家に帰っていました。

もちろん妹は1人じゃありません。
母もいます。父もいます。
お昼ご飯が食べ終わると
「行くんじゃない。馬鹿になる。休め。」
という言葉を散々浴びさせられ
逃げるように泣きながら
家を飛び出したことも何度もありました。

私もみんなと同じように
普通の生活を送りたい。

私はこの家にいたら、
一生縛り付けられる。

そう思ったのは、この頃でした。

将来の夢は、
遠くへ行くこと
親から離れること

になりました。

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