俺の魔法科学園生活

お湯

第2章:中間試験【14】

俺たちはあれから数分木々が立ち並ぶ森林の上を飛んでいた

「ここじゃ」

魔王がそう言うと同時俺たちは地面へ着地する

俺が降りたところは森の中で人や建物がある気配はない

「おい、本当にここなのか?何も見当たらないぞ」
「そう急かさないでほしいのう。ほれこっちじゃよ」

そう言われ魔王について行きまた歩くこと数分

「?」

なんだいまの。
何か近くで魔法が発動したような…
いや、それにしては魔力の波動が弱すぎる

「これは…幻影魔法か…」
「ははっ、気付かれるとはの。これも我が張った魔法なんじゃがの」

幻影魔法とは想像で本物とは別の景色を作り出し、術者以外の者に別の景色を見せる魔法だ
そしてこれは設置型の幻影魔法だ
ある一定領域内が全て、外から見ると幻影魔法がかかっているように見えるようになる
簡単に言えば景色を変える結界だ

「ほれ、家が見えてきたのじゃ」

魔王が指差す先には木で出来た大きくも小さくもない普通の家が1件建ってあった






学園側

「今日アーグ君休みかな」

ルーニェが退屈そうにそう呟いているのを聞いてエルナは苦笑する

「そんなに会いたいなら家に行ってこれば?」

「でもアーグ君の家知らないよ」
「それはほら、先生に聞いてさ」
「うーん…」

「ま、なんにせよアーグ君なら多分大丈夫だって。なんか用でも出来たんだろうね」
「そうだね…」

(はあ…アグナ君いないと学園なんて面白くないのになあ…)




アグナ側

俺達がその家の前につくと魔王がその家の扉をトントンと叩いた

しかしいくら待っても返事がない

「おかしいのう…お〜いエルノア〜!」

俺の鼓膜が破れそうになるほど大きな声で魔王が叫ぶと扉がゆっくりと開いた

ぎぃぃぃ…

「す、すみません魔王様」

そうニコッと笑って出てきたのはハンサムなおじさんだった



あれから俺と魔王は家の中へ入れてもらい、家に入ってすぐにあった部屋の中に案内された

「これ、座っていいのか?」

そこには木で出来た丸いテーブルと、その周りに5つほどの椅子があった

「どうぞおかけになってください」

そうおじさんに言われ俺は腰を下ろす
流石に初対面相手じゃ礼儀正しくするさ

「それでは飲み物を取ってまいりますので少しお待ちください」

そう言っておじさんは部屋から出て行った

「あれがエルナの父親か。いや、確かエルナの父はライドネ=ラールだったはず…」
「そうじゃよ」

俺の独り言に突然返事を入れてくる魔王に俺は続けろ。と言ったような目線を送る

「ライドネ=ラール。あやつは魔国で暮らす唯一の人間。エルノア=ラールの夫じゃよ」

やっぱりか。

「そのエルノアってやつはいないようだが死んでるのか?」

「誰が死んでるって…?」

そんな声とともに俺の後ろからナイフが飛んできた
もちろん避けましたともはい。

俺が声のした方へ振り返るとそこには一人の女が立っていた──

──かなりしんどそうな表情で。


「ど、どうしたのじゃエルノア?!」

いつになく慌てた様子でそう駆け寄る魔王

こいつがエルノアか、それにしてもしんどいなら無理して攻撃してくるなよ…

「ああ、いや、少し体調が悪いだけだ。それで?そこにいる人間は?」

気だるそうに俺を見てくる女
この女、かなり強い。
赤く長い髪は学園の担任に似ているが顔の額から左目を通り左頬までに描かれた黒い龍のような紋が特徴的だ

「こやつは人類の英雄での。我と同等の力を持っておる」

「なっ?!」

その言葉にかなり動揺したのか声を上げて驚いている

「いやしかし確かにその筋肉質な体、かなり鍛えられていると見た。そして我が目をしてでも計り知れない魔力の量…確かにこれなら…そして何より魔王が認めているということは…」

一人で何やらぶつぶつ言っているエルノアだが、それを無視して俺は質問をぶつける

「確かに何も言わずここへ来たのは悪かった。だがひとつ聞きたい」

「なんだ?しょうもない質問だったら許さないからな」

魔王が椅子を運んで座らせている中そんな事言われてもなあ

「まあ話は聞いてくれるんだな、それで質問だが」

そこでエルナの父親ライドネがカップを幾つか持って戻ってきた
どうやら中には既に飲み物が入っているようだ
そしてそのカップをテーブルに置き、俺たちの方へそっとずらしてくる
そのカップを受け取り口に運びながら俺は質問した

「エルナはお前らの子供だな?」

「「っっ!!」」

驚いたような顔をする魔王以外の2人に俺は文を続ける

「俺はエルナと同じ学園に通っていてな、気付いたのはこの前だが、かなり高位の魔族の魔力を感じた。そして気になって魔王を尋ねてみればお前達かもってことでここに来た。」

「「……」」

黙り込んでいる2人

「どうなんだ?」

別に何か怒っているわけでも感情的になっている訳でもないが少し圧を込めて言う

「それは…」

エルノアが下を向きバレてはいけないものがバレてしまったような、少し気まずそうな顔をする

すると俺の視界の端から

「そうです。エルナは私達の娘です」
「ライドネ!?」

しんどそうなのにそれも忘れた様子で立ち上がりライドネの方を驚きの表情で見る

「ライドネ!バラしたらあの子は!」
「もう無駄です。そもそも今までバレなかった事の方が不思議なんですから」
「でも!」

「そこまでじゃ」

「魔王様まで!」

そう感情的になっているエルノアの方をも見ずに、カップを口に運ぶ

「こやつはお前達の娘を殺そうなんぞしとらんよ」

「「え?」」

「その通りだよ、俺がそんな酷いことするやつに見えるのか?」

俺がそう言うとエルノアはバツが悪そうな顔で

「でも!人類と魔族のハーフだぞ?!私の血が入ってるんだぞ?!魔族の血が入っているやつなんて、人類じゃない…排除されてもおかしくないはずだ…」

最初は力強く叫んでいたものの、後半になるにつれ力が抜けていき、上げていた腰も徐々に下がり今はもう力なく座っている

「普通ならそうかも知れないが俺はそんなことするつもりはないぞ。そもそも娘を殺されたくないならなんで人類の国に住ませてるんだよ、ここの方が安全だろ」

「それは…娘に…平和で楽しい日々を送って欲しかったんだ…」

エルノアは突然そう語りだした

「私は幼い頃から戦いばかりでな、こんな生活に飽き飽きしていたんだ、そんな時に森で遭難していたライドネと遭遇してな。人類だったからすぐ殺そうとしたよ。でもその前にライドネに言われて心が揺らいだんだ「綺麗だ…」なんて言われてな。戦ばかりだった私には新鮮でとても…嬉しかったんだ」

自分で語り出したことだというのに顔が真っ赤じゃないか、ライドネも微笑んではいるが少し頬が赤い

「そしてその後、私は殺すのをやめてライドネを見逃したんだ。するとこいつは、次の日から毎日私に会いにくるんだ。私だってずっと同じ場所にいたりしない。探して見つけてくれるんだ。それがたまらなく嬉しくて、私は、いつの間にか…惚れていたよ…」

聞いていて恥ずかしい、そういう惚気は他でやってもらいたいものだ
それにしてもライドネのやつ、ほとんどストーカーじゃねえか…

「それからは戦いもせずにずっとライドネのことばかり考えていて、ライドネが来れば沢山話して、いつの間にか一緒に暮らしていて、それがすごく幸せで、その後に産まれたエルナにも、こんな幸せな生活を送ってほしいと、そう思ってのことだったんだがな…」

なるほどな。外の結界について何故魔王が張ったのかは不明だが、魔王が観察対象にしていると見て特に気にすることもないだろう

「まあ、それで?エルナがハーフって知ってるのは多分俺だけだ。どうするつもりだ?ここへ戻らせるか?エルナはお前のことを知らないみたいだけどな」

するとエルノアとライドネは少し悩んだ顔になる

「…初めは色々考えて私はあの娘と距離を取っている。が今更よりを戻そうとしても魔族の母親なんて怖がられるだろうさ」

そう自虐的な笑みを浮かべる

確かにエルナも魔族が母親だなんていきなり言われても信じられないだろうな。

「まあわかった。急に来て悪かったな。今日は帰るよ。また色々考えたら来る」

俺がそう立ち上がると魔王も立ち上がる

そしてエルノアとライドネも立ち上がり、2人は頭を下げてきた

「どうか…どうか娘を…」

まだ言ってるのかよ

「殺さないし周りに言ったりもしないからな。なんて言ったって俺の友達なんだ。学園内に数少ない友達をそんな酷い扱いするわけないだろ。
それと、ライドネ。あんたはもう少し娘に会う回数を増やしてやれ。寂しがってる。それだけだ。おい、魔王行くぞ」
「ほい」

俺は部屋を出ようと歩き出す

「ありがとう…」

後ろから少し泣きそうな声でそう聞こえたが返事はしなかった

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