《未来視》で一命を取り留めまくりました
第21話 スキスキ、大好きなんです
グゥオオオオオオオッ!!
それは、怒声が混じった愛の雄叫び。
膨張した身体は、元の小さな美少女とは思えないような容姿になっており、一本一本が武器に思える体毛、使用人統一の綺麗な姿勢は背中が丸く曲がっている。
キラリと光を反射して輝く牙、人の身ならば容易く二つに割れそうな、長く鋭利な爪。生半可な攻撃では効かない高い防御力を持った硬い皮膚。
三メートルにも及ぶ巨体で、圧倒的強者の貫禄が肌で感じられる。
”やはり満足な変身はできませんか。ですが、魔物たちを始末するには十分です!”
この変身は持って、数分。普段なら獣人の血によって意識を失い、血の本能のみに身を任せるが、コータがいるということもそうだが、体力や血を消耗しすぎて、本来の五分の一の実力すら満足に出すことがいかない。
だけど、それで十分。
負けるかもしれない、けど勝てる。根拠のない自信が心の中から湧き出てくる。一体どこからでているのかは、考えなくとも解るが。
グゥオオオオオオオッ!!
”死ねぇえええええええ!!”
魔獣の一匹は下段からの攻撃によって、肉塊へと姿を変える。
一匹は顔をつぶされるが、身体は自分の死に気付かずビクビクと痙攣のする。
一匹は死ぬギリギリのダメージを与えられ、苦しみながら絶命する。
数匹はまとめてプレスのようにプチっという効果音をたてて藻屑となる。
 魔獣たちはなにもすることができない。逃げ道を塞いで追い詰めたつもりが逆に逃げ場を失い、せめて自棄になって突撃して断末魔をあげることのみ。
 グゥオオオオオオオオッ!!
 ほとんどの魔獣たちが逃げ出しているが、イリスはそれを追撃はしない。
 ”くっ!もう、限界ですか。あとは魔熊のみ!さっさと終わらせて殺ります!”
 グゥオオオオオオオオッ!!
 身体は既に悲鳴をあげている状態で魔熊に突進する。最初のと比べて動きが悪くなっているのは一目瞭然だ。だが、イリスは自信があった。魔熊位ならば、半獣化で手加減しても勝てる。    
 はずだった…………
 ベァアアアアアアアッ!!!!
 今出せる力を振り絞った渾身の下段からの拳は、魔熊のレベルを遥かに越える拳によって粉砕される。イリスは驚きのあまり何泊か目をパチパチさせる。
 グゥオオオオオオオオッ!!
 悲鳴にも似た鳴き声が森に響き渡る。
「はぁ…………はぁ…………はぁ…………………」
 気付けば獣化は解けていて、魔熊の目の前にいるのは今にも倒れそうなズタボロの人の状態になっていた。頭からは血が流れ、粉砕された右腕は腕なのかと疑ってしまうほどに原型を留めていなかった。
「………し…しぜんち……」
 ベァアアアアアアアッ!!!!
 スキル:自然治癒を使おうとした瞬間。それを憚るかのように魔熊が攻撃を仕掛ける。それにはっと気づいたイリスは目を見開く。
「固有スキル:『部分獣化』!!」
 腕を獣化させ、腕をクロスして魔熊の攻撃をガードする。が、そんな抗いは雀の涙だった。
 ガードした腕は無事なものの、腕を伝って脳にダメージが入り、イリスの視界が震盪する。そして攻撃の勢いに耐えきれず身体は後ろに大きく飛ばされ地面を豪快に転がる。
 やっと、止まったと思えば獣化後よりも酷い有り様だった。口から大量の血を吐き出し、全身からは血が吹き出ている。視界は赤くなり意識が遠退いていく。
 ズドォオオオオオンッ!
 魔熊が一歩イリスに近づく。
 …や、やばい、です、ね。……なにか、手段を…探らない、と。
 イリスは何か使えるものがないか脳をフル回転させて辺りを見回す。
 その時、自然と目に留まったモノがあった。
「……………コ、コータ…さん………」
「…………………………………」
 二人の周りだけ時間が止まったように世界が生まれる。
 ごめんなさい。私はあなたを護れなかった。せっかく助けてくれたのに出しゃばって、結局あなたを助けられなくて私は死ぬ。
 イリスの頬に涙な伝う。
 あなたは許してくれないかもしれない。いや、絶対に許してくれないと思う。けど仕方ないの、だって私。あなたに恋しちゃったから。あなたのものになりたいと思っちゃったから。初めての恋なのに。
 これが終わったら、この気持ちを伝えたかったのに。
 私は本当に無力。無力でごめんなさい。
 こんなこと勝手だって分かってる。私の我儘だってことも分かってる。
 ズドォオオオオオンッ!
 けどお願い。あなたが死ぬときは、私もご一緒させてください。
 
 イリスはコータの前で正座する。
 ズドォオオオオオンッ!
 イリスの涙がコータの頬に伝う。
 ズドォオオオオオンッ!
 もう一度。もう一度伝えたい。
 ズドォオオオオオンッ!
「私はあなたを愛しています」
 イリスは唇をコータの唇と結ぶ。
 そっと顔を離す。イリスの顔には微笑が浮かんでいる。
 
 イリスの背後から、魔熊の手が伸びてきている。
 復習はできなくなるけど。気持ちは悪くない。嬉しいくらい。
 
魔熊の手がイリスに触れる直前
「えっ………………………………」
 そこには、倒れているはずの起き上がることはないはずの黒髪の少年が立っていた。
「生きることを……明日を……諦めんじゃねえよ!!」
 あ、あり得ない。だ、だって、あなたは………。
「なにイリスに触れようとしてんだ!!ユニークスキル:《アブニールアイ》!!!!」
 
 
それは、怒声が混じった愛の雄叫び。
膨張した身体は、元の小さな美少女とは思えないような容姿になっており、一本一本が武器に思える体毛、使用人統一の綺麗な姿勢は背中が丸く曲がっている。
キラリと光を反射して輝く牙、人の身ならば容易く二つに割れそうな、長く鋭利な爪。生半可な攻撃では効かない高い防御力を持った硬い皮膚。
三メートルにも及ぶ巨体で、圧倒的強者の貫禄が肌で感じられる。
”やはり満足な変身はできませんか。ですが、魔物たちを始末するには十分です!”
この変身は持って、数分。普段なら獣人の血によって意識を失い、血の本能のみに身を任せるが、コータがいるということもそうだが、体力や血を消耗しすぎて、本来の五分の一の実力すら満足に出すことがいかない。
だけど、それで十分。
負けるかもしれない、けど勝てる。根拠のない自信が心の中から湧き出てくる。一体どこからでているのかは、考えなくとも解るが。
グゥオオオオオオオッ!!
”死ねぇえええええええ!!”
魔獣の一匹は下段からの攻撃によって、肉塊へと姿を変える。
一匹は顔をつぶされるが、身体は自分の死に気付かずビクビクと痙攣のする。
一匹は死ぬギリギリのダメージを与えられ、苦しみながら絶命する。
数匹はまとめてプレスのようにプチっという効果音をたてて藻屑となる。
 魔獣たちはなにもすることができない。逃げ道を塞いで追い詰めたつもりが逆に逃げ場を失い、せめて自棄になって突撃して断末魔をあげることのみ。
 グゥオオオオオオオオッ!!
 ほとんどの魔獣たちが逃げ出しているが、イリスはそれを追撃はしない。
 ”くっ!もう、限界ですか。あとは魔熊のみ!さっさと終わらせて殺ります!”
 グゥオオオオオオオオッ!!
 身体は既に悲鳴をあげている状態で魔熊に突進する。最初のと比べて動きが悪くなっているのは一目瞭然だ。だが、イリスは自信があった。魔熊位ならば、半獣化で手加減しても勝てる。    
 はずだった…………
 ベァアアアアアアアッ!!!!
 今出せる力を振り絞った渾身の下段からの拳は、魔熊のレベルを遥かに越える拳によって粉砕される。イリスは驚きのあまり何泊か目をパチパチさせる。
 グゥオオオオオオオオッ!!
 悲鳴にも似た鳴き声が森に響き渡る。
「はぁ…………はぁ…………はぁ…………………」
 気付けば獣化は解けていて、魔熊の目の前にいるのは今にも倒れそうなズタボロの人の状態になっていた。頭からは血が流れ、粉砕された右腕は腕なのかと疑ってしまうほどに原型を留めていなかった。
「………し…しぜんち……」
 ベァアアアアアアアッ!!!!
 スキル:自然治癒を使おうとした瞬間。それを憚るかのように魔熊が攻撃を仕掛ける。それにはっと気づいたイリスは目を見開く。
「固有スキル:『部分獣化』!!」
 腕を獣化させ、腕をクロスして魔熊の攻撃をガードする。が、そんな抗いは雀の涙だった。
 ガードした腕は無事なものの、腕を伝って脳にダメージが入り、イリスの視界が震盪する。そして攻撃の勢いに耐えきれず身体は後ろに大きく飛ばされ地面を豪快に転がる。
 やっと、止まったと思えば獣化後よりも酷い有り様だった。口から大量の血を吐き出し、全身からは血が吹き出ている。視界は赤くなり意識が遠退いていく。
 ズドォオオオオオンッ!
 魔熊が一歩イリスに近づく。
 …や、やばい、です、ね。……なにか、手段を…探らない、と。
 イリスは何か使えるものがないか脳をフル回転させて辺りを見回す。
 その時、自然と目に留まったモノがあった。
「……………コ、コータ…さん………」
「…………………………………」
 二人の周りだけ時間が止まったように世界が生まれる。
 ごめんなさい。私はあなたを護れなかった。せっかく助けてくれたのに出しゃばって、結局あなたを助けられなくて私は死ぬ。
 イリスの頬に涙な伝う。
 あなたは許してくれないかもしれない。いや、絶対に許してくれないと思う。けど仕方ないの、だって私。あなたに恋しちゃったから。あなたのものになりたいと思っちゃったから。初めての恋なのに。
 これが終わったら、この気持ちを伝えたかったのに。
 私は本当に無力。無力でごめんなさい。
 こんなこと勝手だって分かってる。私の我儘だってことも分かってる。
 ズドォオオオオオンッ!
 けどお願い。あなたが死ぬときは、私もご一緒させてください。
 
 イリスはコータの前で正座する。
 ズドォオオオオオンッ!
 イリスの涙がコータの頬に伝う。
 ズドォオオオオオンッ!
 もう一度。もう一度伝えたい。
 ズドォオオオオオンッ!
「私はあなたを愛しています」
 イリスは唇をコータの唇と結ぶ。
 そっと顔を離す。イリスの顔には微笑が浮かんでいる。
 
 イリスの背後から、魔熊の手が伸びてきている。
 復習はできなくなるけど。気持ちは悪くない。嬉しいくらい。
 
魔熊の手がイリスに触れる直前
「えっ………………………………」
 そこには、倒れているはずの起き上がることはないはずの黒髪の少年が立っていた。
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