やがて枯れる花たちへ

こむぎ子

口紅

数日、自分の体から口紅の匂いがした。塗ったことも無く、近くにいる人が塗っているわけでもなく、しかし不思議と時々ふわりと鼻腔を弄んでは消えていた。分からないまま数日を過ごし、気まぐれに仏壇で線香に火をつけた時、思い出したのだ。祖母の好きな口紅の匂いだと。曇った空から一滴落ちた。線香よりも強いその匂いは、今も時々訪れる。

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