RISING

鳳 鷹弥

伸ばした腕は描いた未来へ



揺らめく様に流れた黒煙が、晴れて行くと共に、その景色に紅き血を垂れ流し、息を荒くさせた二人が映る。

だが、その光景は、本当に反目し合い、対立の一途を辿って来た両者なのか、疑うような光景であった。


「.....貴公...何故....?」


崩れ去り、足場を失った岩場から投げ出されたデュークは全身の痛みから身動きすら取れず、成すがまま、瓦礫と化したその場所から更に下部へと落下する状態であった。

しかし、落ちて行くその手を掴んだのは、敵であるガルダ。

ガルダは、右腕一本でデュークの右腕を掴み、歯を食いしばり、引き上げようとする。

そして、最後のひと踏ん張りと共に、デュークを自らの居た岩場へと引き上げると、力を使い果たし、自身も、引き上げられた勢いで転がったデュークと同じ様に仰向けに大の字で寝転がる。



「....はぁ....はぁ....あァ!?何故だと?当たり前ェだろ?こんなハクくてマブい野郎を見殺しにして...明日食う飯がウマい訳ァ...無ェだろがッ!!」



「....ハクくてマブい....?フッ...良くは解らぬが、こんな血まみれで、威勢の良い男だな....」


ガルダの横顔を眺めて疑問を口にしたデュークだったが、ガルダと同じ様に、雲ひとつ無い青空を見上げて小さく笑みを浮かべる。

二人の覚醒は解け、ボロボロになった黒白、二色の団服が風に誘われる様に揺れる。



「....迷いは無ェ!!だけどよ、エルヴィス様も、ノアも何でこんな戦い始めちまったんだろうな...」



「....その答えは、私の様な若輩が推し量るには、無理がある...」



「畜生がッ!!俺様もだよ...」


二人は神妙な顔つきを浮かべながら、この戦いの結末を想像する。



「願わくば....誰一人命を絶たずに、終わりを迎え...この国の為に共に歩める未来が、訪れたりはしない物か....フッ...とんだ夢物語だな...」



「あァ!?んな事ァ無ェよ。馬鹿見てェに真っすぐ信じて見りゃ、ゼロにはなんねェだろッ!!....信じる....言葉にするにャあ簡単で、難しいモンだけどよ....」



二人は言葉を交わしながら、ゆっくりと瞳を閉じる。

真っすぐにぶつかったからこそ、口から言の葉として溢れ出た本音。

透き通った空が視界から消え、暗闇に包まれるように、言葉が途切れて行った。





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