RISING
伝えられた兄の言葉
「ウチらもまだやれるで!」
「妾達は、絶望などしている暇は無いのでおじゃる!」
「しゃらくせぇ。もっと、違う形でモテたかったな」
レイドは瞬時に二人との距離を詰め、峰打ちで二閃、身体に叩き込み、二人の背後に立つと、ゆっくりと刀を鞘に収める。
「ぐっ..峰打ちやと..」
「妾達が、まるで赤子でおじゃる...」
レイドの背後から黝色の氷を解いて、短剣を構えて迫ったソフィアの腹部にも、振り返りざまに手刀を喰らわせ、岩場へと沈める。
「何だ..この圧倒的な力の差は...」
三人が崩れ落ちた岩場からゆっくりと離れ様にレイドは口を開く。
「儂を獲る。それが嬢ちゃん達の役目だろう。向かってくるなら何度でも相手してやる。だがな....」
足を止めたレイドは半身分、身体を三人に向けて、口を開く。
「相手に怖れを抱いて振るう刃に、斬れる物は無い。差し詰め、鞘に収めたまま振るうのと同義だろう、強くなって出直して来い」
レイドの言葉に唇を噛んだ三人だったが、反論の余地なく俯く。
それ程までに、レイドとの力量の差は天と地ほどに開ききっていた。
「伝言があったんだろ?ロード」
「ああ..」
ロードは、レイドの言葉に反応して、ソフィアの元へと駆け寄る。
「ソフィア..」
「兄からの伝言か?..少し今は傷心中なんだがな」
ソフィアはゆっくりと身体を起こすと、ロードと視線を併せる。
「でも、悪ィ。次いつ会えるかなんて解らないんだ。だから此れだけは伝えさせてくれ..」
ロードは、氷の街でのサバネとの約束を果たすため、サバネの言葉をゆっくりと一つずつ伝えて行く。
その言葉が、ソフィアの耳に入って行く中で、冷たい眼をした変わらぬ表情で有る筈のソフィアの表情がほんの少し、和らぎ緩むのにロードも気がついた。
そして、ロードからサバネの言葉が全て伝えられると、ソフィアは拳を握りしめて、視線を落とす。
「....それを伝えて私にどうしろ...と?」
振り絞るように呟いたソフィアの言葉に、ロードは首を傾げる。
「言ったろ?伝言だけだって。それ以上は俺が口を出すことじゃ無ェよ」
ロードの言葉に、ソフィアは唇を噛み、またも絞り出すように、消え入りそうな声で呟く。
「....ありがとう...」
「..おう!」
ロードは満面の笑みで返事をすると、次はとばかりに、エマへと視線を移し、近づいて行く。
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