RISING

鳳 鷹弥

戦場の鬼と呼ばれた男



アルマの迫る一撃の直撃を覚悟したロードだったが、突如、地面から発生した黒き黝色の氷がアルマの片腕を凍結させ、動きを封じる。


「..今更、横槍..。..レイドさん..貴方って人は本当にズルい人ですよ..」


ロードが距離を取った後、アルマは氷を砕くと、レイドに向けて視線を向ける。


「出て来る覚悟が出てくれたなら良かったですよ..レイドさん..」


「ロード。しゃらくせぇが、まだ対覚醒状態にその通常状態で臨めるほど、お前は達して無い様だ」


「ぐっ..」


レイドは腰の刀を抜刀すると、その黒く輝く刀身にロードとアルマは目を奪われる。


「流石は”鬼輝夜おにのかぐや”..最上大業物の一振り。..僕には勿体ない代物だ..見る事さえ..」


レイドは、その刀の切先をアルマに向けると、ものの一瞬でアルマの近くの空間が凍結される。

だが、アルマはそれを声とヌンチャクで砕いて見せるが、レイドの姿を見失う。


「なっ..何処へ..」


すると、アルマの背後に背中を向けたレイドが立っており、手に持った刀をゆっくりと鞘に納めながら、歩き出して行く。


「儂の通り名は”戦鬼せんき”現役のころに潜り抜けて来た修羅場の数が違うんだよ。しゃらくせぇ..」


レイドの刀が鞘に収まるのと同時に、アルマは自身の肩口、そして胸部から舞い上がった鮮血に呆気に取られる。

そして、レイドの斬り掛かりも目に映すことなく、そのまま黝色の氷で凍結する場所へとうつ伏せに倒れ込む。

その圧倒的な一閃を目撃したロードは、身震いと共に驚嘆の表情を浮かべる。



何だこの人..


剛さ、迅さ、共に格が違う....


しかも覚醒状態相手に、これほど何もさせないなんて


まるで大人と赤子だ..


これが、元・大将のレベル....



息を呑んだロードの元へ、歩みを進めたレイドは、背後に蠢く波動を察知する。


「アルマも死んじゃいない。しゃらくせぇから此処から離れるぞ」


「..あ..ああ..」


ロードは呆気に取られたまま、声を振り絞って返事をすると活火山の麓の岩場を歩き始めたレイドの背中に付いて行く。


そして、その背を追って幾つもの影が迫っている事を知るレイドは、此処に差し迫る刺客から離れるように歩を進める。

そんな事を知る由もないロードは、ただ、その背中を追ってただ歩いて行く。



「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く