RISING

鳳 鷹弥

金獅子の目覚め ー覚悟ー



「....え....でも....」


状況的に何か変だと感じたエルヴィスが言葉に詰まっていると、レイナが俯き、ふと顔を上げると声を荒げる。


「何してんの!早く行きなさいっ!お姉ちゃんの言う事聞けないの!?」


急に怒鳴った姉を初めて見たエルヴィスは驚き、後ずさりすると、その恐怖で踵を返す。

そして、一目散に指が差された道を駆けて行く。


その背中を悲しそうな目で見送るレイナはふと、瞳を閉じる。


「この姉ちゃん。俺ら無視して何やってんの?」


「んな事より、漂流して辿り着いてからまだ、何も食ってねェ....」


「....それと、女も..久しぶりだァ....」


下品に笑う男たちを背後に置いて、レイナはエルヴィスの影が見えなくなったのを確認し、振り返る。


「気色悪いのよ。子供には悪影響だわ。アンタたち....」


挑発を捨て台詞に、レイナは買い物袋を抱え、一気に街の方へと駆け出す。


「待て女ァ....」


野盗が一斉に追撃を開始する中、レイナは想いを巡らす。


取り敢えず....


街の方まで行ければ....


背中から追われる恐怖を感じ取り、目に先ほどとは違う涙をため込み、ただ、必死に走る。







そして、一人、先にその場から逃げ出したエルヴィスは理由が解らぬ不安に襲われながら、顔を引きつらせ、ただ言われるがまま道を走っていた。


姉ちゃんが怒鳴るなんて....


怖い....


怖い....



その時、ふとあの野盗連中の顔が頭の中にフラッシュバックする。



アイツら...イカれた目してやがった....


怖い....


....え....?


そんな所に姉ちゃんを一人で....?


俺、何してんだ....



エルヴィスはゆっくりと走るスピードを落とし、山道の真ん中で立ち尽くす。



守るって....言ったばっかじゃん....


守るんだろ?姉ちゃんの笑顔を....


俺が逃げてどうすんだ....


口だけでなんなんだ...俺は....


"護る”俺が!!



覚悟を決めたように、エルヴィスは踵を返し、先ほど、レイナと別れた場所へと脚をただ進める。



姉ちゃん....今行くよ....


無事でいて!!



エルヴィスに必死に振る両手の拳を力強く握り、精一杯、その場所を目指していく。







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