RISING
金獅子の目覚め ー運命ー
「そんじゃ、俺も包み隠さず話すが、ザックから孤児院時代から独立までの経緯は聞いたんだよな?」
エルヴィスの言葉に三人は、頷くと少しの沈黙を挟んで、エルヴィスが口を開く。
「そんじゃあ、ちょっと昔話になるぜ」
20年前に時計は巻き戻るー。
森の街フォレストールのとある森の中に、小さな山小屋があった。
その山小屋では二人の子供が暮らしていた。
その二人は、姉弟。
姉は、レイナ・ハワード。
細身の身体に、長い金髪を頭の後ろで結った若干、15歳の少女。
そして、弟、エルヴィス・ハワード。
後に、護国師団反乱軍総長を名乗る男の名だが、この時は5歳である。
レイナは、エルヴィスが生まれて直ぐ、母親が自殺し、とある富豪の家から弟を抱えて逃げ出し、森の街へと逃げ込み、近隣の人の支えを受けて、何とか今は二人で暮らせるようになっていた。
「姉ちゃん!この皿はこっちに運んどくぞ!」
「はーい。ありがとエル」
エプロン姿で料理をする姉の横を元気よく笑顔で手伝いをするエルヴィスを見て、姉はにっこりと笑う。
そして、運び終わって、エルヴィスは木造の椅子に腰かけ、レイナが座るのを待ちながら、床に付いていない足をバタつかせる。
「お待たせ。さあ、食べよっか?エル」
「腹減ったあ..いっただきまーすっ!」
二人で慎ましくも楽しく暮らす二人の姿は、近隣の人にも評判だった。
この年で親と離れて暮らす、または親がいない姉弟の姿を最初は皆、不憫に思い心配をしていた。
だが、この生活が始まり、3年ぐらいするとその心配は徐々に減り、最近はそれは全く無くなった。
理由は簡単、二人は良く挨拶もするし、常に笑顔でいる。
そして、姉は弟を、弟は姉を、心の中から好きだと言う事。
誰よりも幸せそうに見える二人を不憫に思う者などいなくなっても不思議では無い。
しかし、エルヴィスは生まれたばかりで親の顔も自分が生まれた家も、親が自殺し、その流れを食いそうになったレイナが自分を抱えて、逃げ出した事。
何も知らない。
だけど、村でも評判の優しくて美人で料理が上手くて強い姉がいる。
それだけで当時のエルヴィスは、心の底から幸せだった。
それは、どの方面から見ても、揺るがすことの出来ない事実であった事は間違いでは無かった。
そして、運命の一日を迎える事となるー。
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