RISING
警備展開の理由
一行は、視界に入っていたフロル・ベンという大きな時計台を目印に鍵に書かれた名称のホテルを探して、歩いて行く。
そして、フロル・ベンの真下に位置する場所に辿り着くと、ロードらに背後から歩み寄る人影がおもむろに声を掛ける。
「姫様に。....貴公は....」
その声に振り返ったロードらだったが、数秒の沈黙を破って、ロードが表情を変える。
「テメェ...あん時の....」
ロードが、思い出していたのは光の街セイントピアでも辻斬り冤罪の件。
その時、追い回されたニッキー・ドーマンが目の前に居た。
ロードは何となく身構えるが、ドーマンがおろおろとした表情で静止する。
「ちょっと待って欲しい...あの時は済まなかった..拙者の早とちりであったようだ」
「なんだ。誤解解けてんのか....」
息を吐いたドーマンに対して、ロードが問う。
「てか、そういや帝国軍の軍兵がちらちらいやがんな。何かあんのか?」
ロードの問いに答えようとしたドーマンを遮る様に別の男の声が入ってくる。
「明日ガズナ・ペティットって宰相の演説があんだよ。その為に雁首揃えてんだ」
その姿を見たロードは声を発する。
「U・Jじゃねぇか。アンタまでいんのか」
「ブラッド少将...ガズナ様に対して、口が過ぎるのでは無いか?」
呆れた表情のドーマンの横にブラッドが着くと、チラッとサングラス越しにドーマンの表情を伺う。
「んん?お堅過ぎると肩凝るぞ?ドーマン」
勢いよくドーマンの肩を叩くと、ドーマンはため息を吐く。
「はあ...貴公という男は....。つまりその演説があるので、拙者らは先乗りで此方に来ているという訳だ」
「明日には宰相とその取り巻きが来んだけどよ。それに加えて大将の一人も来るみたいだぜ?オメー、今回はおとなしくしといた方がいいぞ?」
あっけらかんとした表情で言うブラッドにロードは指を突き付ける。
「何で俺が問題起こすみてぇな言い方しやがんだ!」
「だって良く巻き込まれってからよ」
反論の余地なし、という訳でロードは唇を噛んで唸りながら黙り込む。
「それでは姫様方もお気をつけて。拙者らはここで」
ドーマンが頭を丁寧に下げるとブラッドと共にその場を去る。
そして、辿り着いたホテルに荷物を置き、一呼吸すると間もなく、時は夕刻を刻む。
三人は行く。
エルヴィスらの待つ場所へ。
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