RISING
時の街 ジュードオークス
ノスト・ビル・ゲート駅の改札を潜ると、そこはヨーロッパ風の煉瓦の建築物が並ぶ西洋の風景が広がっていた。
大きな時計台のあるこの街のシンボル、スターシア・タワー。通称。フロル・ベンや、オークス・アイと呼ばれるこの街の中心部を一望できる観覧車など、この街のシンボルが視界に入る。
そして、ストリートには屋台が並び立ち、賑わいとレンガ調の優しさが醸し出すジュードオークスの街並みに目を奪われる。
「へぇ。ホントこの国、行く街によって文化的な物が違うよな」
「氷の街にいたので、より感じますね」
普段は、風景を見ると大騒ぎするロードであったが、今回はこの後の事もあってだろう。
中々、そういう風には行かない所もある様だ。
三人が、取り敢えず、街に入ろうとすると、三人の横で、煉瓦の壁に寄りかかっていた黒髪の男が声を掛ける。
「来たか..」
その声にいち早く反応したのは、護衛隊長レザノフ・スタールマンであった。
「ウィルフィン....」
振り返りざまに静かに名を呼んだレザノフと視線を合わせながら、ウィルフィンは背中を壁から離し三人にゆっくりと近づいてくる。
「レザノフ・スタールマン....久しいな。光の街以来か..」
「ええ..」
その顔を見て、シェリーは恐怖心を蘇らせ、気持ちレザノフの背後へと身を寄せる。
「よう。ウィルフィン..」
「..恋の騎士....ふっ....」
その空気を察したか、前に出たロードの顔を見て呟いたウィルフィンは、顔を逸らし、隠れるように笑みを溢す。
「だっァァァ!!お前らホント、意外と笑うよなァ!アンタも..アドリーも!!」
突き出した人差し指をブンブンと上下に振りながら、ロードが抗議をしているが、ウィルフィンは笑い終わったのか我関せずを貫く。
「..まあ、いい。積もる話もある..」
「..華麗に無視ってか..テメェ....」
ロードのイラつきもどこ吹く風か、ウィルフィンはフロル・ベンの真横のホテルの鍵をそれぞれに一つずつ、手渡す。
そして、その奥のホテルの最上階である15階のエンペラー・ルームにて夕刻、会談を行うと伝え、人目を気にしながらその場を離れて行く。
「最後まで、話聞きやがらなかった....」
「でも、ホテルの部屋も一人、一部屋取って下さってましたね....」
三人は化かされた様に、突然、吹いて行った一陣の黒い風に呆然としていた。
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