RISING

鳳 鷹弥

幻魔団四眷属 アノン・ヴィルヘルム


「此処は私が引き受けましょう。此の場を離れろ....頼むぞ」


シルヴァの”頼む”はシェリーの事だろう。ロードは罰が悪そうに頭を掻くが、シルヴァがこちらに向けた眼からは、”早く行け”と言われた様な気になり、ロードは茂みの中へと飛び込む。


「先ずは君を壊せ....という事かな?シルヴァ」


「追いたければな。勿論、そう易々とは行かぬと思え」


シルヴァが改めて構えると、アノンは部下に持たせていたのか、雪の上に無造作に転がった身の丈程もある大刀を手に取る。

その大刀は峰がなく両刃共に、切れ味を誇り、鍔をも形成せず手に持つ柄の後端まで切っ先から細長い三角形に刃が付いていて、大きさはアノンの身の丈程もある大刀だった。

名刀大業物二十一工の一振りに数えられる、大鷺包平おおさぎかねひらである。


「では、さっさと壊れる努力をなさい。私の部下もこの様、仕置きも含め暇ではないのですよ」


アノンが一気に地面を蹴って、空中から大刀を振り下ろす。

が、一瞬にして、シルヴァは地面を蹴って低い体勢で、アノンの背後へと回り、一撃をかわすと、三振り同時に片手で手裏剣を投げ込む。

雪を裁いた大刀を背後へ振り回し、アノンは手裏剣を同時に弾いて見せる。



「其の様な大振りでは、影を捉える事は叶わぬ」



シルヴァはそう言いながら羽織の下の腰元に真横に差していた鞘から、脇差よりも小さく映る、こちらも鍔のない刀を逆手に構えると、顔の前で構える。


「ほう、忍刀とも言うのかな?」


「短くて小さい物だけが忍刀では無い。如何にしても詰まらぬ問答には変わり無い」


そう言うと、一気に地面を音もなく蹴り、アノンの懐へと潜り込み、逆手に取った刀で真横に斬りかかる。

動くことの出来ないアノンはそのまま腹部に刀の一撃を受けるが、血は舞わず、逆に刀を弾かれ、シルヴァは後ろに傾いた重心を捻りながら間合いを取る。

切り裂いた筈のアノンの腹部は紫色に色を変えていて、その色がゆるりと収まっていく。


「流石は鰐鎧がくがいの異名を取る男だ。鉄鏡のギフトの硬さは随一と云う訳か」


「クハハハ、君が僕を抑え込むのも容易では無いという訳だ」


アノンはゆっくりとまた間合いを詰めると、大刀を振り下ろし、シルヴァを襲撃するがシルヴァは持ち前のスピードで其れを躱す。


あの大刀の大振りは恐れるに足りぬ....


問題は、あのギフトの硬化....


さて、如何した物か....






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