RISING
氷の街 ケベルアイス
運河を超え、ヴェクトルユース港へと降り立った二人の前には広大な雪原と雪と氷が織りなす寒冷地、ケベルアイスの風景が荘厳と広がっていた。
「着いたな!.....てか、寒ッ!!」
身体を身震いさせながら肩を丸めて、自分を抱くようにしたロードは、その寒さをまさに体感していた。
「シェリー.....だ、大丈夫か?」
「ええ、私は元々着込んでましたから。ロード様は元々薄着ですからね」
口に手を当てて、ほんの少しの声を出して笑みを零したシェリーは、首に巻いていたマフラーをロードの首にかける。
「え...お...?」
一瞬、体を硬直させたロードを横目に、シェリーは、二枚巻いていたようで、下に巻いていたマフラーを正す。
「マフラー巻くだけでかなり変わりますよ。暖かさ」
ニコッと笑顔をロードに向けたシェリーを見て、ロードは瞬間的に顔を紅潮させていき、頭の中で何かがボンっと破裂したと思えば、踵を返す。
「あ、あっ、ああ!かなり変わるな!マフラも、ガスターがあれば、すぐ発見できるぜ!」
「ふふ。逆ですよ。マフラー巻いてガスタさんを探しましょう」
「く、唇がはにかんでただけだ。い、いこうぜ」
「かじかんでいた。の間違いでは?」
ほのぼのとした会話で盛りあがる寒さを忘れたロードと、にこやかに笑うシェリーの前に頭にハンチング帽をかぶった男が声を掛けてきた。
「君、こんな雪原で何を騒いでいるんだい?」
「お、お前!マフネ!」
「サバネだよ。どれだけマフラー姫様に巻いてもらって興奮してるの。新婚旅行じゃあるまいし...」
たまたま居合わせた情報屋サバネは、呆れかえった表情でため息をつくが、ロードだけではなく、シェリーの様子も変化が見られた。
し、しんこん.....
シンコン......新婚!!!
心がシンクロした二人の頭の中で恥じらいが同時に爆発したようで、顔をまっかにしていた。
この二人、ウブな所、そっくりだなあ.....
心の中で呟いていたサバネにロードが息を整え声を掛ける。
「因みに、マフ....サバネもガスタってヤツ、探しに来たのか?」
「え....ガスタ?ガスタって......成る程。そういうことか。繋がった....」
尻すぼみするように、声が小さくなっていくサバネの言葉が聞き取れず、ロードは困惑していた。
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