RISING
水の街を背に
一方、水の街アリアアクアの国内運河港であるサロピレウス港に停泊させていた船に乗ろうとしている男女を見送りに、ノアが訪れていた。
「今回の事後処理もある。付いては行けないが、一人手練れを向こうで合流させよう。それまでは二人になるからな。姫様を頼むぞ?ロード」
想いを託されたロードは、満面の笑みで返答しシェリーと共に船に乗り込む。
船が運河へと漕ぎ出すのを確認してノアは踵を返し、サロピレウス港のコンテナの影へと姿を消していった。
甲板から小さくなっていくサロピレウス港を眺めていたロードとシェリーは、振り返るとこれから向かう新たな街へと目線を送る。
「次は、氷の街ケベルアイスですわね。あ.....そうだロード様これ!」
思い出したようにシェリーは、手に持っていた袋から二枚の服を取り出す。
寒冷地へ向かうために、防寒用のアウターを差し出されたロードはそれを手に取ると、笑顔でそのアウターに袖を通す。
「俺の髪の色と同じ、レッドカラー。サンキューな?シェリー」
ロードとシェリーはアウターに袖を通すと、シェリーが口を開く。
「レザノフも治療を終え次第、此方に合流しますので。それまで二人ですわね」
不意に頬を赤らめたシェリーを見てしまい、ロードも反射的に顔を赤らめる。
「そ....そうだな。レザノフさんもだし、向こうでノアの言っていた手練れが合流するまでは...そ...その...ふ..二人きりだな」
「は....はい...!」
しどろもどろな言葉を交わすたびに目線も泳ぎ切っていた二人だったが、頬を赤らめた二人の視線が同時に合うと、逆に固まり目が離せなくなってしまっていた。
「不安か?」
突然のまっすぐな言葉に固まってしまうシェリーだったが、その沈黙を破るようにロードがシェリーの右手を左手で握る。
「え、、え、、、ろ.....ロード様ッ!?」
「大丈夫だ。俺から離れんな。絶対に守る」
両者、真っ赤な表情で向かい合う若者同士の拙いラブコメ模様を送りながら、静かにシェリーが頷くのを確認してロードが満面の笑みを見せる。
二人の髪が運河を突き進む船によって起こる風で揺れる。
育ての親、ランス・テラモーノと共に秘密裏に指名手配されたガスタという男の出現によって決められた次の目的地、氷の街ケベルアイス。
シェリーの命を狙った幻魔団の参戦も予想される中、新たな戦場の雰囲気漂う氷の街で二人を待ち受けるものとは果たしてー。
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