RISING
戦禍の傷跡と新たな胸騒ぎ
水の街アリアアクア郊外、とある酒場の地下にある革命軍、水の街支部のアジトー。
手当を施され、ベッドに横たわる未だ意識を取り戻さないデュークの傍らで椅子に腰かけ、足を組むルナは煙草を吹かすと呟く。
「無茶したね。デューク。ゆっくり寝て早く意識取り戻しておくれよ。ウチの総長....安心させてやんな」
一つ壁を挟んだ隣の部屋では対照的に包帯を巻かれたレザノフは意識を取り戻していたが、眠っていたレザノフの脚に身体を寄せ椅子に座りながら寝付くシェリーの姿があった。
一夜、泣きはらしたのであろう頬に涙の跡を残すシェリーの姿を眺め、レザノフは唇を噛む。
「姫様....御心配を掛けてしまいましたね。申訳御座いません、姫様...」
二部屋の寝室の横では、ノア、フロウ、ロードの三人が重苦しい雰囲気の中、会話をしていた。
「ロード殿。革命軍参謀のフロウと申します。此度もご助力感謝致します」
「いや、いいんだ。俺もシェリーを助けたくて無我夢中だったから」
「命が残ってます。その方面の流れは良かったが....」
一つの安堵と共に現れる任務失敗の現実が、フロウの言葉を塞き止める。
「ああ。バルモアからの武器の輸入。今回の任務に関しては、帝国軍にしてやられたな。各地で起こる戦争の為には今回は重要な仕事。俺が出張って失敗したのだ。フロウよ、お前が気に病むことはない」
ノアの言葉で、フロウの自身に向けての憤りは切なさを増していく。
その沈黙の中、ロードが口を開く。
「話は変わるけどよ、幻魔団のあの女が退却していった時に言われていた“あの男”って気になんねぇか?」
「ガスタの事だろうな」
「ガスタ...って?」
目星が付いているとばかりに、名を発したノアにロードが問う。
「ガスタの詳しくは情報が無いのだが、政府直下裏帝機関幻魔団から秘密裏にランス、レイドと共に指名手配を掛けられている重要人物らしい。先日、ランスという男も15年という沈黙を破り、表舞台で姿を捉えられた。ランスが動き出し、時を同じくしてそのガスタという男すらも姿を現すのならば、何か別の意思がこの戦乱に乗じて動いているのかもな」
ランス.....
あんたも関係してるのか?
だとしたらアンタは一体....
脳裏に浮かぶ育ての親、ランスの姿に妙な胸騒ぎをロードは感じていた。
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