RISING

鳳 鷹弥

銀狼 駆ける

「解りました、ただレザノフ様にお願いが…」


多少の間を置き答えたノアの言葉に、痛みを堪えながらレザノフが応答する。


「私に出来ることであれば…」


「バルモア商船の一時撤退を願いたい。デュークが食い止めているとはいえ、未だバレット中将を止まっていません…」


「解りました。では、連絡を入れます…ですから、姫様を…」


ぐっと、握られたノアの袖からレザノフの嘆願の意味を深く知ったノアは、レザノフをそっと寝かせると立ち上がり、林道へと駆け出す。


「レザノフ様、貴方の想いは、必ず…」


傷付いたレザノフを捨て置く事は、ノアの性格には辛い判断であったが、その願いの重さを理解し、足を早めて行った。









「妾の事を舐めきったその態度、頭に来るでおじゃる…!」


一方、林道内で戦闘を繰り広げるライアとロードの状況は多少、異質な物となっていた。

ライアの攻撃をただ弾くのみで、攻勢に転じる事はしなかったロード。

傷すら負っていないライアもそうだが、防御に徹したロードにも異変が起きていた。



そうそう…上手い話は無ェな…


こんなチートじみた強化法…


限界も近いか…


シェリーの閃光のギフトによって得た瞬間強化、付加エンチャントの能力には、タイムリミットも設けられる。

荒くなった息を押し殺すように、表情を浮かべるロードの姿が其れを顕著に体現する。

そして、その背後で不安な表情で願うシェリーの視線を感じ取ったロードは、一歩踏み出しその足で進もうとする。

だが、限界も近く、倒れこもうとする身体を一人の男が支えた。


「……チッ…助けられちまったか…」


抱えられたロードは、ニヤリと笑いそのまま地面に膝を折る。


「上出来だ。姫様をよく護ってくれた。感謝するぞ、ロード」


「ノア様ッ!」


二人の声と視線を浴びて馳せ参じしは、レザノフの嘆願を、胸に駆け付けた革命軍総長、ノアだった。


「其方まで来たでおじゃるか…。この任は呪われているでおじゃる…」


ライアの絶望感を横目にノアは、腰の刀を抜刀する。


「政府直下裏帝機関…幻魔団四眷属、ライア・ガガルディン。お前達も、姫を狙うのか?」


冷たい眼差しで睨みつけるノアの威圧に圧されながら一歩退いたライア。

そして、刀を突き付けライアへと詰め寄るノアとの間に密偵が一人、参上した。


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