RISING

鳳 鷹弥

猪進 vs 酒呑

「別に手を抜いている訳じゃ…ヒック…ないよォ?」


オーズの周りに土煙が旋回し始めると、大地のギフトが力の上昇を帯びていく。


「だがねぇ…そう言われたら…ヒック…やるしかないじゃないのォ…?」


枯葉色の角が二本、天に目掛けて伸びて行き、袖が緩い着物の様な物を羽織る。

身体が赤みを帯びて行き、血の涙の様なペイントが顔面に施され、腰に赤と枯葉色の二色の腰巻が揺れている。


「覚醒…震脈のギフト…ヒック…震呑童子クエイクオーガ…うぃ〜…さあ久しぶりの覚醒だ…」


巨大化したメイスを振りかざし、震脈のギフトを纏ったオーズの一撃がフロウに向けて振り下ろされると方天戟で受け止めたフロウの足元からコンクリートの地面に亀裂が走る。


「ぐっ…」


「ほおら…ヒック…そんなもんかい…?」


ニヤリと笑ったオーズは、更にギフトを込めて行くが、力を一気に解放し、フロウがそれを押し返す。

すると、フロウは、オーズの首元を掴むと、そのまま加速しオーズをその勢いのままコンテナに投げ付ける。

オーズは、その勢いに体勢も受け身も取れないままコンテナに叩き込まれた。


「うむ。流れを引き戻させてもらう」


コンテナに叩き込まれたオーズは、うめき声をあげながら、破損したコンテナを退けてゆるりと立ち上がった。


「ヒック…中々やるねぇ…8年前に国中を沸かせた…新進気鋭のプロレスラー…フロウ・ダルバイン…孤児院出身のレスラーに…プロレスファンが…胸を躍らせたんだよねェ…」


「?何だ昔話の流れか?」


「あっしもねェ…格闘技に目が無くてねェ…ファンだったんだよ…ヒック…だから残念さ…」


15でハングロッカーを出た、フロウはその後プロレス団体に加入。

18の若さにしてプロデビュー、其処から3年間負け無しのプロ生活を過ごしていたが、突如引退。

そして行方不明となり、次に世間に名前が流れたのが革命軍幹部としての名前だった。


「うむ。そうか。それは有難く申し訳ないな。ファンには何も言わずに俺は今此処にいる。だが、俺が漢として決めた事だ。ノアを男にする事はな」


ニヤリと笑い、決意を改めて表明したフロウの姿をオーズは眺め、そして口を開く。


「義理堅く真っ直ぐ…ヒック…そして頭もキレる…良い参謀、そして戦力を持ってるねぇ…あの狼小僧は…おっと、また怒らせちゃうかなァ?」


「もう力で語る流れだ」


方天戟を構え、フロウはまた力を込めて行く。

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