RISING

鳳 鷹弥

蛇に睨まれた熊

「いやはや…相も変わらず見事な気迫。ですが、表舞台から姿を消したブランクは…そう簡単に拭えるのでしょうか…?」


鉄の鞭を手に取ったスネイクは、睨みを利かすランスに向けて、ニヤリと笑う。


「はっ…そんなことはどうでもいい。そんな事より15年も掛けて漸くたァ…裏帝機関も大した事ないのォ…」


裏帝機関とは、国王直下帝国軍の裏の顔で、実態は政府に属し、政府にとっての悩みの種を裏で処理してきた表には出ない裏の処刑人達である。

仕事内容は、殺しが多く政府も実態や存在を認めない影の組織として裏帝として君臨している。


「ならば、さっさと終わらせましょう。今まで時間を掛けてきた分ね…」


スネイクの身体から、大幅なギフトの力の増幅が見て取れる。


「いやはや…覚醒というのも…何年振りか…」



こ…これは…


ロードは目の前で起こるスネイクの身体の変化を目にし、目を丸くする。


右肩に大きな紫苑色のコブラの頭が現れ、臀部からは、棘の付いた尻尾が生えて行く。

肌に、浮き出るように緑色の蛇の刺青が増長し、持っていた鞭は、紫苑色と緑色が混色し、コブラの尻尾の様に変化した。


「樹木のギフト…覚醒…渓森のギフト。これが私めの“毒睨豪蛇ポイズンコブラ”その姿です…」


これが…覚醒…


化け物じゃねぇか…


ロードは、その圧倒的な威圧感に圧倒され、声も出せないでいた。


「ほう…見事…。相手にとって不足ねぇ…。ランス…参るぞ?」


ランスは三叉槍を手に取るとそれを構え、スネイクに槍先を向ける。

スネイクは、鞭を構え、低い姿勢で蛇が地を這う様に、素早くランスとの距離を詰めて行く。


「“熊鎗ゆうそう”と呼ばれる貴方でも、“豪蛇ごうじゃ”の呼び名を頂いた私から見れば…蛇に睨まれた熊…という所でしょうか?」


「逃げられねェとでも言ってるつもりかァ…?」


襲いかかるスネイクの鞭を槍で弾くも、尻尾でランスの脇腹を急襲する。


「ぐっ…」


ランスはその勢いのまま、廃墟の壁に衝突する。


「こりゃあ…」


急襲された脇腹から毒蛇の毒がまわり、ランスの身体を蝕んでいるのがわかる。


「手の内を隠していては、一瞬であの世ですよ?」


「わかっとるわァ…蛇野郎…」


ランスが立ち上がると、スネイクもゆるりと近付いてくる。

ロードはその戦いに目を奪われていた。

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