RISING

鳳 鷹弥

君臨するは遥か高み

「オイ、何黙ってんだロード」


痺れを切らしたエルヴィスがイライラを募らせる。


「あ…悪い悪い。ロード・ヘヴンリーだ。よろしく」


「おう…よろしく。随分姫に関して邪魔してくれた恋の騎士ナイト


握手を解いたエルヴィスはニヤリと笑ってロードを茶化す。


「誰が恋の騎士ナイトだ…」


「話を聞いてる限りだが、姫に恋した騎士ナイトに邪魔されたとそこの俺の懐刀から報告がな」


「ウィルフィン…テメェ…」


ニヤニヤしながら茶化し続けるエルヴィスから怒りの矛先はウィルフィンへと向くロード。

そのウィルフィンは、顔を背け手で口を覆い、笑いを堪えていた。


あの野郎…


つか、なんだこの和やかな雰囲気…


思ってたのと違ェ…


総長つーからもっとヤベェのが


出てくるかと思ってたが…


再びソファに腰掛けたエルヴィスは、対面のソファにロードを座らせる。

そして、本題に入る様に仕切り直したエルヴィスはロードの眼を見て真っ直ぐ言葉を放つ。


「まあ…恋とか好きとかは一旦置いておいて。ロード、お前の口から聞かせてくれ。反乱軍幹部との数戦は、俺らへの別の恨みがある訳じゃなく、シェリー姫単独の件だけか?」


「ああ…もちろんだ。反乱軍への特別な敵対意識はねェよ」


「なら…当然の如く、シェリー姫をまた狙えば阻止しに来るって訳か」


「当たり前だ…!」


幾つかの言葉の掛け合いで、エルヴィスは納得した様に頷く。


「ふん…隠し事出来るタイプでも無さそうだ。嘘偽りなく本音だろう。ウィルフィン…お前が評価した通りだな」


エルヴィスの横でウィルフィンは無言のまま頷いて見せた。


「で、ロード。別の話だがノアとも会ったらしいじゃねぇか?」


「ああ…」


「アイツは、いい男だったろ?」


ロードにとって眼を丸くする驚きの発言だった。

元は親友と言えど、敵対する組織のトップを平気で肯定するエルヴィスの発言にだ。


「アイツがあんなに信念を曲げねェタイプだなんて、孤児院で別れるまで知らなかったぜ、俺ァ」


何故か懐かしみながら、嬉しそうに話すエルヴィスの表情、発言から何故かエルヴィスという男の器量を思い知った。

護国師団反乱軍の総長として、ウィルフィンという歳上から全幅の信頼を寄せられるカリスマ。

ノアもそうだったが、若くして組織の頂点に立ち国をすら動かそうとする2人の背中は、ロードにとって決して届かないとまで錯覚させるほど高みにあった。

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