RISING

鳳 鷹弥

予想外の共闘

ロードは、アレンの背中を見送るとゆっくりと立ち上がり、歩き出す。

戦いの最中で気付かなかったが、此処に来るまで感じていた各所での激突が終わりを告げている。

ゆっくりとアジトから抜け出すと、ロードは真っ直ぐの方向に、まだ一つ大きな力がぶつかる場所を察知する。


何だ…まだ…一箇所だけ戦闘中…か?


ロードは思案もままならないまま、その場所に駆けていく。








「反乱軍副長といえど。この程度…つまらぬ時間を浪した訳か…」


ヨハネの冷たい視線の先には、血だらけの右腕を抱えたウィルフィンの姿があった。

腕だけでなく、額等からも流血の痕があり、完全にヨハネ優勢が一目でわかる。


「チッ…此処までとは…」


「で、どうだ?闇蝙蝠…突破口は…あァ…無かったみてぇだな…」


ヨハネがゆるりと迫るのを見てウィルフィンは、唇を噛む。


ここまでか…?


エルヴィス…済まぬ…


死を覚悟したウィルフィンはゆっくりと瞳閉じようとするも、閉じる寸前。


燃え盛る炎がヨハネとウィルフィンの間に、颯爽と降り立つ。


ウィルフィンはその炎とその姿に、見覚えがあったものの、まさかと言わんばかりに目を見開く。


「貴様…!」


「何者だ…?」


ウィルフィンとは対照的にヨハネは訝しげにその揺らめく炎を纏った男を、眺める。


「随分、ボロボロじゃねぇか。ウィルフィン…」


「ロード・ヘヴンリー…」


助けに来たとロードが、ヨハネに向けて鋒を突きつける。


「何故お前が俺を助ける…?生き恥を…晒させやがって…」


ウィルフィンは唇を噛みながらロードに問い掛ける。


「生きて無けりゃ…恥も掛けねぇし。理想も叶えられない…そして、護るべき物も護れねぇぜ?ウィルフィン…それでも恥なんかに拘るのか?」


ロードの言葉に、目が覚めたかの様にハッとしたウィルフィンは笑みをこぼす。


「それもそうだな…これまで幾つも恥も外聞も流して来た…足掻いて来たんだ護るべきものの為に…」


「ならさっさとコイツ撃退して、生きる為に進まねぇとな?」


ふらりと立ち上がったウィルフィンも蹌踉めきながら刀を構え、ロードの隣に立つ。


その問答に痺れを切らす事なく、平然と聞き終えたヨハネが口を開く。


「茶番は終えたか?名も知らぬ不届き者よ…カスが増えても結果は変わらんぞ?」


ヨハネの鋭い眼光が二人を襲う。


生きる為の抗いが、予想外の共闘を呼んだ。



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