RISING

鳳 鷹弥

風車技師の親とその倅

「おう?そうか。お前が言っとった侍とはコイツじゃったのか。ロニー」


何かを思い出した様に目をパチクリさせたゲイツがロニーを見ながら言う。


「うん!お父さんこの人だよ!宝物を取り返してくれた侍って!」


ロニーが嬉しそうに言うと、ゲイツがロードに向き直り、深々と頭を下げる。


「倅の恩人とは知らず、拳骨をかまして申し訳無かった。その節はどうも…」


「いやいや…頭上げてくれよ。ロニーの親父さんだったんだな」


手を振って頭を上げさせたロードは二人を見て微笑む。


「ロード兄ちゃんっ!聞いてくれよ!今からお父さんと一緒に“ロジャーズグリフ”って街の外れに風車を直しに行くんだ。あの風車もお父さんが作ったんだぜ?お父さんは風車技師だからな」


ロニーが、ロードの凄いと感嘆した風車を指差して意気揚々と声を上げる。

ロニーが父親を、敬愛しているのが伝わって来る。


「ロニーも一緒にか。偉いじゃねぇか。じゃあゲイツさん…また何処かで」


ロードは、ロニーとゲイツの親子と手を振って別れると、また風の吹く海の方へ歩き始めた。








両側を木々で挟まれ、道が整備された林道をゆっくりと歩いていくと、視線の先に海が少しだけ見え始めた。


すると、林道にある岩に腰掛けた男が目に入る。


桜吹雪の羽織…


派手な野郎だなぁ…


目を合わせない様にと、真っ直ぐ前を向いてその男の横を通り抜けようとする。


「引き返しな…」


ロードはその男の言葉に立ち止まる。


「この先は、行き止まりだ。ただの入り江があるだけ。そこに向かう道もこの道しかねぇ…何処かに向かってるなら海まで行っても引き返すだけさ、結局な」


「そうか…ありがとな。じゃあアンタはここで何を?」


ロードが聞き返すとニヤリと笑った男は、口を開く。


「俺か?俺はな…行く場所を忘れて入り江まで行っちまって困ってるだけさ…」


「は…?」


ロードは苦笑いしながら、その男に目をやる。


お前が迷子かよ…!


呆れた様子を見せたロードは、苦笑いをしながら引き返そうとする。


「だが、困り事も風によっては幸運を呼ぶ材料となる。俺はツイてるぜェ…」


その男がゆらりと立ち上がると桜吹雪の羽織から見覚えのある黒い軍服が、ロードの視界に入る。


「お前は…反乱軍か…」


「ん?そんなことはどうでもいいなあ。俺はツイてる。お前の背にあるそれが俺の目の前に現れてくれたんだからなあ…」


その男は、また不敵な笑みを浮かべた。



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