RISING

鳳 鷹弥

盗賊撃退と立派な名前

「ブフッ…ビビってねぇのか?この筋肉を見て」


マスタングは驚いて、目をパチクリさせながらロードを見て後ずさる。


「随分、綺麗な身体してんだな?なんの死線も潜り抜けてねぇだろ。アンタ…これ見よがしに筋肉だけ見せつけてお山の大将気取りか?」


そうロードは、マスタングが口先だけの威嚇を繰り返していると気づき、恐れる様子すら見せなかった。


「やるんだろ?俺と…いつでもいいぜ?小物野郎…!」


ロードの剣幕に、尻餅をついたマスタングは、慌てて立ち上がり、部下に指示を出す。


「撤収だー!覚えとけよー!」


「あっ!御頭ぁ!待ってくださいよー!」


声とともに消えていった盗賊達を見送ると、ロードは深い溜息をつき、苦笑いを見せる。


「今時、あんな捨て台詞吐くやつ、まだ居るんだな…」


すると、ロードは振り返り泣いていた少年に目をやると笑顔で口を開く。


「怪我ねぇか?ガキ」


「俺はガキじゃねぇ!!ロニーって立派な名前があるんだよ!」


ロニー・ドーク
12歳 146cm 36kg

黄色のバケットハットを被り、紺のサスペンダー付きのデニムパンツを着用している。

中は白のティーシャツで、膝下まであるブーツの様な靴を履いている。


「おっ?…おぉ…すまん」


威勢のいい声に気圧されたか、感謝が帰って来ると思っての不意打ちか、素直にロードは謝る。


「でっ…でも。ありがとう…赤髪の兄ちゃん…これ大切なものだったんだ…」


また声を震わせるロニーに、ロードはまた笑みを浮かべると、膝を折って視線を合わせる。


「赤髪の兄ちゃんじゃねぇ。俺にはロードって立派な名前がある」


その言葉に晴れた様な笑顔を浮かべたロニーは満面の笑みで口を開く。


「ありがとう!ロード兄ちゃん!」


「おう!もう誰にも盗られねぇ様にしっかり握りしめとけ!ロニー」


ロードは立ち上がると、護衛隊に合流する為、馬車の方へ歩き出す。


「本当にありがとう!しっかり持っておくよ!」


「おう!気をつけろよ。じゃあな、ロニー」


お互い手を振って別れると、サバネがロードに近づいて来る。


「本当に君は、真っ直ぐだねぇ」


「見て見ぬ振りできねぇよ。あんなの見せられたら」


「本当に君のそう言うところ、シンプルに尊敬するよ。じゃあ僕もここで…また何処かで」


「おう!」


ロードは、2人の背中を見送る様に背を向け護衛隊と共に風の街ヴェントの酒町“ストックアード”へと足を踏み入れる。

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