RISING

鳳 鷹弥

少年の宝物

そんな探りと事実検証の会話を繰り返す一行は、風の街ヴェントのとある地域へと入っていく。


風の街ヴェントの外れにある酒町“ストックアード”の檜の門を目前に、ある光景をロードが見つける。


「返せよッ!コンニャロ…!」


怒気の含まれた少年の声に気付いたロードは、そちらに目を向ける。


そこには、少年を取り囲んで数人の盗賊のような身なりの大人が何かを仲間内で投げ合い、それをひたすら少年が追っているという光景だった。


「やなこーった。この巾着の中の宝石は、オメェみたいなガキが持ってても意味ねーよ」


「そーだそーだ。俺たちが有効活用してやるから大人達は言っちゃダメよー?僕?ギャハハ…」


1人の盗賊の笑い声に呼応するように、少年を囲んだ盗賊達が一斉に笑い声を上げる。


「それは…母さんの形見で俺の宝物なんだ…返せよ…コンニャロ…」


少年は俯き、帽子を深く被ると涙ながらに、右手の拳をキツく握る。


そして、1人の盗賊が対面にいる仲間に宝石の入った巾着を放り投げた瞬間だった。


紅い閃光が、その円の中に降り立ち、少年の頭を手で押さえ、宝石入りの巾着を少年に翳す。


「え…?」


少年は驚き、サッと顔を上げた先に映ったのは、赤髪靡く侍の姿だった。


「情けねぇなお前等…子供1人相手にこの人数で…これ以上恥晒すんなら相手になるぜ?」


少年の元に降り立ったのは、その様子をたまたま見ていたロードだった。


「なっ…何だこいつ…」


その圧のこもった剣幕にたじろぐ盗賊の背後から大きな人影が1つ近づいて来る。


「なァにしてんだァ?お前等…まだガキと遊んでんのかァ?」


「マスタングさん!」


「御頭ァ!」


どうやら現れたのはこの盗賊団の頭らしい。


「ガキの援護にまたガキ1人。舐めてんのかァ?オラァ…消えな」


白いタンクトップを着たその筋骨隆々のマスタングと呼ばれた男がロードを威嚇する。


「御頭ァ!あんたならやれるぜ!このわけわからんガキも始末してやって下さいよォ」


身内の歓声がマスタングに送られると、ニヤリと微笑むマスタングを尻目にロードは、少年の頭に再度ポンと手を置き、巾着を渡す。


「見ろやァ!この筋肉ッ!恐れをなしてこの場から立ち去れィ!」


騒音とも言うべき大声を発して、マッスルポーズを決めたマスタングを見てロードが背中の剣に手を添える。


「うるせぇよ。近所迷惑だ。さぁ…やろうか?」

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