RISING

鳳 鷹弥

天に昇る炎壁

仮面の女が、再び地面を蹴るとロードも同じ様に、仮面の女に向けて地面を蹴る。


クナイと刀が再びぶつかり、高い金属音を奏でると、ロードがニヤリと笑みを浮かべる。


「行くぜ…イメージを体現…ここだッ!」


ロードの刀が一気に燃え上がる様に炎を帯びる。


仮面の女はその炎に一瞬、腰を引きそのままの勢いでバックステップをするも束の間、綺麗に刀に纏われていた炎が空に向けて大きく暴発し火柱を描く。


ロードが舌打ちをして、炎を収めようとすると、その一瞬の隙を見逃さず仮面の女がクナイで襲いかかる。


クナイを持つ方の手を片手で弾くも体勢を崩した所に、仮面の女の左足の蹴りがロードの脇腹にヒットする。


「見掛け倒しだな。赤髪…おまえによく似合っているぞ」


仮面の女の挑発も聞こえないかの様に、脇腹を抑えながら立ち上がるロードは刀をただ見つめていた。


違うな…


今のじゃない…


纏わせる事に必死過ぎだ…


このまま試していってミスしたら


シェリーにまた危険が…



ロードは馬車を囲む赤い蜘蛛の仮面の一団を一瞥して回ると、刀を横に構え、目を閉じる。


大きい炎を圧縮するのはまだだ…


だが、それを放出まではさっき出来た…


あの時とは違う…


力を使い果たさなかったんだ。


ならその炎で円を描く…!


ロードの刀から一気に真紅の炎が放出されると、その炎が馬車を囲む様にみるみる円を描いて行く。


「行くぜッ!」


ロードがその刀を天に振り翳すと、円を描いた炎が馬車の周りに炎壁を作り出す様に天に昇っていく。


その炎と共に、赤い蜘蛛の集団が悲鳴を上げて倒れて行く。


「これは…」


レザノフが驚く程、ロードのその一撃は解放から数日、それもコツを伝え聞いただけの者が使うには想像以上に凄まじかった。


仮面の女は、部下達の失態を見て冷たく言い放つ。


「貴様らには赤い蜘蛛の仮面を着けるのは重たかった様だな。消え失せろ…貴様らはいらん」


その言葉を聞いた部下達は足を引きずりながら、林の中へと逃げる様に引いていく。


すると、仮面の女が耳につけたイヤホンから音声が流れたのか応答する様に耳に手をやる。


「ええ…仰っていた通り…赤髪の侍に壊滅間近…残りは私だけです。ターゲットの削除は私に一任してもらえますか…?」


仮面の女はさっきまでの冷静な声とは別人の様に、声を震わせながらイヤホンから流れる音声に応答していく。


「フフフ…もういい。カズラ…退くぞ」

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