RISING

鳳 鷹弥

風が止む戦場

「最後の悪足掻きと言えど、見事な炎だった。お前の真っ直ぐな想いは昔のヤツにある意味では、似ていたな…」


意味深な言葉を呟き、ガラス付近にいる2人に、ウィルフィンは近付こうと地面を蹴ろうとする。


その瞬間、ウィルフィンの肩を掴む1人の男の姿が突如、その場に現れる。


「ちょっとちょっとォ…こんな所でこんなドンパチ起こしたらご近所迷惑でしょうが…ウィルフィン・フィンドール」


驚いた様に、跳躍を止め振り返るウィルフィンは、その男を視界に入れる。


「U・J・ブラッド…」


そこには、始まりの街の守護者。ブラッドの姿があった。


「刀…納めてくんねぇか…?レザノフ隊長もあの姫様庇ってちゃ力使えんで、不利だろうよ」


「貴様、何故ここに…?」


「そんなことはどうでもいいだろ。姫様に向けて“ギフト”なんておっかねぇもん…解放すんなよな…」


その言葉を聞き、舌打ちと共にウィルフィンは、そのギフトと呼ばれた力を封じる、刀を鞘に収める。


「貴様には1つ貸しがある。千載一遇のチャンスだったが…ここは退いてやろう」


「貸しだァ…?」


ちんぷんかんぷんという様な表情を浮かべると、ウィルフィンはその横を抜けて行く。


本当に解らないのか?


何とも掴み所の無い…


ウィルフィンが思い浮かべていたのは、ロードも乱入したコミンチャーレの港町での事件だった。


連戦も連戦、あの時お前以外の将校なら、アドラスは捕らえられていただろう。


見逃した理由はわからんがな…


ウィルフィンは心の中で、そう呟くと口を再び開いた。


「あの男…此処で死なすのは惜しい…手当てを頼む…」


そう言い残すと、ウィルフィンは部隊に撤退の合図をして、闇夜に消えて行った。


「手当てか…ふっ…俺には無理だぞ?ウィルフィン」


ドヤ顔で、月を見上げるブラッドに、月の灯りが照らされていた。







「…ん…。イテッ…ッッッ…」


何時間経っただろう。目を覚ましたロードは直ぐ様身体の何処かの激痛で、上半身を起こす。


ウトウトしながら、椅子に腰掛けていたシェリーがその声で目を覚まし、ロードと目を合わせると、大粒の涙を流しながら声を上げる。


「ロード…様…良かったーー!」


抱きついてくるシェリーに身体を掴まれ、ロードは嬉しさと共に案の定の傷みがはしる。


「い…っ…てぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


ロードの叫び声が医務室どころか、公使館中に木霊していた。

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