RISING

鳳 鷹弥

一宿一飯一命の恩返し

「ふぇ…?」

眠気まなこを叩き起こすように、目を見開くと、刀を持って斬りかかってくるウィルフィンの姿を視界に入れる。


「姫様!やめろぉぉ!!!」


レザノフが必死に叫ぶものの拳銃は撃てない。何故なら射撃方向にシェリーがいるからである。


「もらった…!」


シェリーは声も出せぬまま、蹲り、レザノフも目を閉じ諦めたその一瞬だった。


扉の壊れた部屋から飛び出して来た男の刀とウィルフィンの刀が交錯し高い金属音を奏でる。


ウィルフィンは多少、目を丸くし驚くも、バックステップでその男との距離を取る。


「ケガはねぇか?シェリー…それにレザノフさん…。恩返しのつもりで此処は俺に任せてもらうぜ?」


「ロード様ッ!」


2人の声が歓喜のように木霊し、ロードの存在をウィルフィンに知らしめる。


「さあ…恩返しの時間だ。一宿一飯一命・・のな」


ニヤリと笑みを浮かべたロードに対し、ウィルフィンもニヤリと笑みを浮かべる。


それを横目にロードが上の空で考え事を始める。


そーいや…二回飯食わせてもらったなあ…


一宿ニ飯・・一命が正解だった…


まあムード的なのを考えて…


言い直すのはやめておこう…


「まさか…辻斬り事件の冤罪者が此処にいようとはな。帝国軍への誤報送信は無意味だったわけだ」


ウィルフィンは、今夜帝国軍少将ニッキー・ドーマンの邪魔が入らぬ様、浸入前に辻斬り再発生の誤報を送っていた。


「つまり帝国軍は助けには来ちゃあくれないってことか。まあ…アンタは、冤罪って解って貰ってる訳だが、アイツは、そうはいかねぇだろ。俺としても好都合だ」


ただ…何故コイツは、俺が冤罪の罪を
被ってるって知ってんだ…?


まさかコイツが…


いや仲間の線もあり得るが…
先ずは…コイツを撃退してからだ…


ロードは、刀を下段に構えると一気にウィルフィンとの距離を詰めて行く。


「ほう…その刀…最上大業物7工の一振り…鳳炎おおとりのほむらか…」


ウィルフィンは真っ直ぐ対抗する様に柄も唾も刀身までもが漆黒の一振り、宵闇を振り下ろす。

またも、鍔迫り合いと成るかと思われたが、両者激しく引きと、攻めを交互に転じ激しく連撃での打ち合いを行う。


だが、次第に防戦一方になって行ったのは、ロードの方だった。


「惜しいな…貴様のはまだ剣術止まりだ…」


ロードは一瞬の隙を見抜かれ、ウィルフィンに蹴りを腹に叩き込まれると、浸入の際に割れた窓から外へと叩き落される。


「手始めに貴様から消してやろう…」



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