RISING

鳳 鷹弥

動き出す暗雲

笑顔で2人が話を続けている最中、村外れのこの公使館の柵の向こう、茂みの奥で、数人のマントを羽織った男達が、隠密に会話をしていた。


「公使はいるか?」


リーダー格の男が、発言すると1人が双眼鏡で公使館の窓を覗き込む。


「ええ、しっかりと。死角で見えませんが誰かと会話をしているようですね」


「まあ、護衛隊の誰かだろう。近いところを見ればマクスヴェル戦線も、ストナードの戦いもフェイク…奴等がバラけるこの時を待っていた…作戦は今夜だ」


リーダー格の男が周りに宣言すると、部下達は、無言で頷いて見せた。


「ノアに一泡吹かせ、我等が長に良い報告をせねばな…」


この場所ではリーダー格でも、この男の裏には誰かがいる。


そして、革命軍総長ノアを敵対視しているその男は、影のように茂みの奥の更に光が届かない場所へと消え失せて行った。


公使でありバルモアの姫、シェリーを眺めた後、作戦は今夜だ。と意味深な発言を残して。







場所は変わって、ここは始まりの街、コミンチャーレ。


「少将、ちょっとお耳に入れたいことが…」


支部室の一間で椅子に座り込んでいた男に部下が駆け寄る。が、部下はいつもの風景を目にする。


「って、またですか。…すぅー…少将!ブラッド少将ォ!!起きてくださぁぁぁい!!!!!」


耳をつんざくような叫び声が、耳の鼓膜に伝わり、ブラッドは起き上がる。


「ぅおっ…たっ…たい焼きっ!」


ふざけた言葉と共に。


「全くどんな夢見てるんですか。少将。あ、言わなくていいですよ。興味ないので。あ、これとりあえず目を通して下さい」


「つめてぇな…オイ…俺のたい焼きが泣いてるぞオメェ…。ん…こいつァ…」


写真付きの資料に目を通した、ブラッドは突然鋭い目つきで内容に目を通す。


「俺のバギーを、用意しろ。直ぐ立つぞ…お隣さん、光の街セイントピアへな」







大分夜も更けた公使館では、風呂上りのシェリーとロードが話していた。


「色々お話聞いて下さり、ありがとうございました。ロード様」


「いや…俺こそ。色々聞けて楽しかったよ」


風呂上りの女性は、一味違った綺麗さを持つと言われるが、少し髪の濡れ、パジャマ姿のシェリーをロードは直視できないでいた。


「では今日はゆっくり寝て下さい。おやすみなさいませ。ロード様っ」


「ああ…おやすみ。シェリー」


2人はそれぞれ部屋に入ると直ぐ様、布団へと潜って行くのだった。


意味深なあの言葉を知らぬまま。

コメント

  • 鳳 鷹弥

    いえいえ、読んで頂き
    ありがとうございます。

    はい、是非楽しんで頂けるように盛り上げていきます!

    0
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