RISING

鳳 鷹弥

不運の灯台下暗し

先程の、男の事を思い返しながらもロードは、とりあえず教えてもらった2つのルートの内、宿屋などもある中心地の方へと向かっていた。


さっきの男の台詞…


揺れそうだ…。って…何がだ?


全く訳のわかんねぇこと言いやがって


考えるのは得意じゃねぇんだよ!


心の中でフードの男への苛立ちを浮かべながら、山道に沿って中心地へと向かって行く。


小一時間歩くと、先程の村よりも活気のある場所が見えて来た。


人通りも多く、宿屋や飲み屋などが多く立ち並んでいた。


「おー。こんなとこもあったんだな。前に素通りした時は、田んぼと畑しかねぇもんだと思ってた」


驚きながら通りに出ようとすると、奥の通りを帝国軍の軍服に身を包んだ集団が走り去って行く。


「あれは…帝国軍…?」


「通報があった通りなら背中に刀を差した赤髪の男がこちらに来る可能性は高い!とにかく探せ!」


小隊の隊長と思しき人物が声をあげると、それが聞こえた街の民達の中でパニックが起こる。


「一般の方は焦らず、退避してください!奴は辻斬り…世闇に紛れてしか犯行を犯していない!暴れはしないでしょう!さあ、落ち着いて!」


民を先導する帝国軍の小隊も別に行動しているようで、パニックは最小限に抑えられて行く。


それを物陰で見ていたロードは、先程の男を思い返していた。


やはり…アイツが…?


でもアイツ、逆に向かって行ったよな


引き返した所を通報されたのか?


腕を組んで考えていたロードは、ふと風が吹いていた時のことと先程の隊士の言葉が頭の中でリンクする。


『背中に刀を差した赤髪の男が…』


アイツ、刀腰に差してたなあ…


突如、灯台下暗しの様に忘れていた事を思い出し、ロードは驚嘆する。


背中に刀を差した赤髪の男…


それ俺の事じゃねぇ!!?


何故ここまで気が付かなかったかも、甚だ疑問だが、ロードの中で全てがハマっていく。


「これ…。俺見つかったらどうなるんだ…?いや、待てよ。俺って確証はねぇじゃねぇか。そもそもやってねぇから無実な訳だし!ここは堂々と…」


ロードは思い切って通りに出ようとするが、躊躇いの末、足を元に戻す。


「ちくしょう…何も悪い事してねぇのに…。確証はねぇが可能性は高ェ!」


泣きながらロードは裏道を抜けてその場所から走り去ろうとしていた。


無念というか運が悪いというか。


その走り去っていくロードを視界に入れた男が1人だけいた。


「捕縛対象者は彼奴か。参る!」


軍服をはためかせその男は、ロードの背を単独で追っていく。

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