RISING

鳳 鷹弥

不思議な呑みの席

ロードとサバネは、ノリノリのブラッドの背を追って、和風な出で立ちの育鶴という飲み屋に入る。


暖簾をくぐって奥にある座敷の席に腰を下ろすと、ロードは刀を横に置く。


木目調のテーブルに置かれたおしぼりで一斉に3人が顔を拭うと、誘い主のマオがひょこっと現れる。


「お飲物は、どうしますか?」


「ビール」


「あ、じゃあ僕も」


ブラッドが即答し、サバネもそれに乗っかると視線が一気にロードに集まる。


あとはお前だと言わんばかりの視線は痛いほど、ロードには突き刺さっていた。


「…俺も、ビール…」


「かしこまりましたー。お待ちくださいね」


ノリで言ってしまったが、ロードはお酒をあまり呑んだ経験がなく、正直自分が上戸なのか下戸なのかもわかっていない。


沈黙を破るように、ビールが運ばれてくると、3人はグラスを持って中央に寄せる。


「じゃあよくわからない飲み会だけど、乾杯!」


サバネが音頭を取ると勢いよく3つのグラスがぶつかる。


「ぷっ……はぁ〜。これこれ生き返ったぁ…」


「うん。まだ時間は早いけど美味しいね」


「うっ……あっ…ああ。美味いな……」



ーービールってこんなに苦いのかぁ…?


初めてのビールにロードは悶絶気味だったが、サバネとブラッドは、一気に飲み干して行った。


「姉ちゃん!つまみで、梅水晶とガツポンくれー。あ、あと日本酒一合もな」


「日本酒って…世界観…ぶっ壊すなよな」


「しょうがねぇだろ。プレジア酒なんて言いづらいもん作る脳はなかったんだよ。酒の席だ。設定やら何やらは無視!呑むぞーっ?」


つまみが運ばれてくると、箸を伸ばしながらそんな会話を続けていく。


追加した料理も平らげると、ひと段落ムードが流れ出す中で、サバネが気遣って口を開く。


「因みに、ブラッド少将?さっきロード君の言った質問の答え、聞かせて貰えるかな?」


「なんだ。取材みてぇだな。記者さんよ」


「オフレコだから安心して」


「あー…なんだったかな?」


はぐらかそうとしたブラッドに対して、ロードがゆっくりと口を開く。


「なんで、反乱軍を見逃したかって話だ。捕まえる気はねぇと…帝国軍の将校クラスの発言には聞こえなかったぜ?」


ブラッドが口を開くのを躊躇い、沈黙が流れる。


が、沈黙に耐え切れずゆっくりと口を開く。


「…俺がそういうタイプじゃねぇってのもあるが…。んー…何から話すかな…」

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