国一のお嬢様は僕のストーカー
現状
姫井百合に関して説明すべきことは主に三つに分岐する。
一つ目は、何を隠そう彼女は、国で最大規模を誇る姫井コーポレーションの総括、姫井秀逸の一人娘であるということだ。
秀逸個人で立ち上げられたこの企業組合は、いまや日本のほとんどの企業を囲い込み、世界経済にまで多大な影響力を持つといわれている。
まぁ早い話が、姫井百合は国一のお嬢様なのだ。
そして二つ目。
姫井百合という少女は、国一の金持ちの娘、という壮大な肩書きにすら遅れをとらないほどの才覚と品格の持ち主だった。
学問、スポーツ、楽器、等々。その才能は多岐のわたり、むしろ彼女に出来ないことを数えるほうが難しいと断言できる。
さらに彼女の容姿は、これまた飛びぬけて美しく、肌も抜けるように白い。
僕が始めて彼女を見たときは、思わず妖精か精霊だかが異界から迷い込んだのではないかと思ってしまったほどだ。
最後に三つ目。
そんな現実味のない雲の上である存在の姫井百合お嬢様は、あろうことか、この僕東雲圭一のストーカーだった。
国一のお嬢様にストーカーされるとどのようなことになるか、皆さんはご存知だろうか?
ご存じないだろうと思うので、僕が教えて差し上げようと思う。
まず、個人情報に関してはその一切をあきらめてしまったほうがいい。
百合が護衛を駆使して僕のありとあらゆる個人情報を集めるのにかかった時間は僅か二日。
住所やメールアドレス、ケータイのパスワード、身長、体重、などの基本的な部分はもちろんのこと、女の子の好み、性癖、エロ本の隠し場所、会話した女の子の顔ぶれ、といった細かい部分まで余すことなく知られてしまっている。
最早百合は僕以上に僕自身について知っているといっても過言ではないだろう。
唯一便利な点といえば、テストの点数や席次を誰よりも早く知ることが出来る。
百合に聞けばすべて知っているから。
学校はもう少し厳重に戸締りをしたほうがいいのではなかろうか。
百合に使わされて深夜の学校に忍び込まされている護衛の苦労が、ひしひしと伝わってくる。
まぁこの時点で彼女が普通のストーカーとは比べ物にならないくらいにヤバ目であることはご理解いただけただろうが、国一のお嬢様の本領はこんなものではない。
あろうことか出会って一種間も経たないうちに、勝手に合鍵を作って済ました顔で家に侵入している。
学校から帰ってきて自室に入ったときに、ベットの上にエロ本のコレクションが並べられていたときの絶望といったらもうね・・・
ドアを開けたら「お帰りなさい、圭一。ご飯はとっくに出来てますよ?」とかさも当たり前といった風で抜かしやがる。
まぁ百合のご飯はおいしいからそれはいいんだけどさ。
エロ本を探し出すのは本当に勘弁してほしい。
そして最大の問題が、彼女が僕のために開催する勉強会だ。
いや、最早勉強会と呼べるものかすら怪しい。
僕が一方的に教えてもらってるだけだし、ちょっと居眠りしようものなら百合の手に握られた鞭がうなりをあげて飛んでくるし。
なにやら僕が彼女の父親が設定する、最低限結婚相手に求める基準、とやらを全く満たしていないらしく、なんとか僕と一緒になるために必至なのだ。
そもそも僕は百合と結婚するなんて一言も同意した覚えなどないが、逆らうことは出来ない。
大金の前には僕なんかの意見など簡単に捻りつぶされる。
僕がちょっとでも百合の機嫌を損なおうものなら、たちまち田舎でせっせと働く僕の両親の職が奪われてしまうに相違ない。
ともかく彼女の勉強会は本当にしゃれにならない。
最早ただの監禁と拷問だ。
ある休日、僕が何時ものように宿題などをほっぽりだして、ベットに寝転がりゲームにいそしんでいると、突然部屋のドアを蹴破って映画で見るような完全武装の人たちが次々になだれ込んできた。
抵抗する暇も与えられず即座に拘束された僕は、気づけば机と椅子が用意された個室で百合と二人きりだった。
ちょっとだけエロい期待をしてしまった僕に、百合の死刑宣告が下された。
「このままだとお父様に結婚を許してもらえないので、成績が良くなるまでここで勉強してもらいます。」
いったい何の冗談かと思ったら、彼女は本気の大真面目だった。
それから一切の休憩を許されぬまま、僕は百合の監視の下で勉強させられ、少しでも居眠りしたり、手を休めたりしようものなら鞭で背中を打たれた。
十数時間が経過して、流石に肉体的にも精神的にも限界が来た僕は、トイレに行かせてほしいと嘯いて、何とか百合邸から逃げ出したんだけど。
馬鹿でかい門をくぐって、何とか百合邸の敷地から出たところで、辺り一帯に響き渡るほどの大音量でこんなアナウンスが流れてきた。
「全部隊に告げる。目標が逃亡した。速やかに捕縛せよ。繰り替えす。目標が逃亡した。速やかに捕縛せよ。」
空襲警報かよ!と突っ込みつつその場から一目散に逃げたのもつかの間。
空には何十期ものヘリ。
陸からは何千人もの軍隊が僕を捕らえんと迫ってきた。
なんとか策をろうして逃げおおせようとがんばったが多勢に無勢。
あえなくつかまり、すぐに百合邸に逆戻り。
部屋では、頬を引くつかせ、マジギレの百合お嬢様がお出迎え。
鋼鉄製の首輪をつけられ、上着を無理やり剥がれて半裸になり、ノートに書く手が止まれば、地肌に容赦なく鞭の後が刻み込まれた。
もちろん警察に助けを求めたこともある。
両親宛に手紙を書いたこともある。
そしてそのことごとくが、買収と権力によって握りつぶされた。
切実に思う。
この現状にすら耐えられるタフな方。
是非僕と代わって下さい。
一つ目は、何を隠そう彼女は、国で最大規模を誇る姫井コーポレーションの総括、姫井秀逸の一人娘であるということだ。
秀逸個人で立ち上げられたこの企業組合は、いまや日本のほとんどの企業を囲い込み、世界経済にまで多大な影響力を持つといわれている。
まぁ早い話が、姫井百合は国一のお嬢様なのだ。
そして二つ目。
姫井百合という少女は、国一の金持ちの娘、という壮大な肩書きにすら遅れをとらないほどの才覚と品格の持ち主だった。
学問、スポーツ、楽器、等々。その才能は多岐のわたり、むしろ彼女に出来ないことを数えるほうが難しいと断言できる。
さらに彼女の容姿は、これまた飛びぬけて美しく、肌も抜けるように白い。
僕が始めて彼女を見たときは、思わず妖精か精霊だかが異界から迷い込んだのではないかと思ってしまったほどだ。
最後に三つ目。
そんな現実味のない雲の上である存在の姫井百合お嬢様は、あろうことか、この僕東雲圭一のストーカーだった。
国一のお嬢様にストーカーされるとどのようなことになるか、皆さんはご存知だろうか?
ご存じないだろうと思うので、僕が教えて差し上げようと思う。
まず、個人情報に関してはその一切をあきらめてしまったほうがいい。
百合が護衛を駆使して僕のありとあらゆる個人情報を集めるのにかかった時間は僅か二日。
住所やメールアドレス、ケータイのパスワード、身長、体重、などの基本的な部分はもちろんのこと、女の子の好み、性癖、エロ本の隠し場所、会話した女の子の顔ぶれ、といった細かい部分まで余すことなく知られてしまっている。
最早百合は僕以上に僕自身について知っているといっても過言ではないだろう。
唯一便利な点といえば、テストの点数や席次を誰よりも早く知ることが出来る。
百合に聞けばすべて知っているから。
学校はもう少し厳重に戸締りをしたほうがいいのではなかろうか。
百合に使わされて深夜の学校に忍び込まされている護衛の苦労が、ひしひしと伝わってくる。
まぁこの時点で彼女が普通のストーカーとは比べ物にならないくらいにヤバ目であることはご理解いただけただろうが、国一のお嬢様の本領はこんなものではない。
あろうことか出会って一種間も経たないうちに、勝手に合鍵を作って済ました顔で家に侵入している。
学校から帰ってきて自室に入ったときに、ベットの上にエロ本のコレクションが並べられていたときの絶望といったらもうね・・・
ドアを開けたら「お帰りなさい、圭一。ご飯はとっくに出来てますよ?」とかさも当たり前といった風で抜かしやがる。
まぁ百合のご飯はおいしいからそれはいいんだけどさ。
エロ本を探し出すのは本当に勘弁してほしい。
そして最大の問題が、彼女が僕のために開催する勉強会だ。
いや、最早勉強会と呼べるものかすら怪しい。
僕が一方的に教えてもらってるだけだし、ちょっと居眠りしようものなら百合の手に握られた鞭がうなりをあげて飛んでくるし。
なにやら僕が彼女の父親が設定する、最低限結婚相手に求める基準、とやらを全く満たしていないらしく、なんとか僕と一緒になるために必至なのだ。
そもそも僕は百合と結婚するなんて一言も同意した覚えなどないが、逆らうことは出来ない。
大金の前には僕なんかの意見など簡単に捻りつぶされる。
僕がちょっとでも百合の機嫌を損なおうものなら、たちまち田舎でせっせと働く僕の両親の職が奪われてしまうに相違ない。
ともかく彼女の勉強会は本当にしゃれにならない。
最早ただの監禁と拷問だ。
ある休日、僕が何時ものように宿題などをほっぽりだして、ベットに寝転がりゲームにいそしんでいると、突然部屋のドアを蹴破って映画で見るような完全武装の人たちが次々になだれ込んできた。
抵抗する暇も与えられず即座に拘束された僕は、気づけば机と椅子が用意された個室で百合と二人きりだった。
ちょっとだけエロい期待をしてしまった僕に、百合の死刑宣告が下された。
「このままだとお父様に結婚を許してもらえないので、成績が良くなるまでここで勉強してもらいます。」
いったい何の冗談かと思ったら、彼女は本気の大真面目だった。
それから一切の休憩を許されぬまま、僕は百合の監視の下で勉強させられ、少しでも居眠りしたり、手を休めたりしようものなら鞭で背中を打たれた。
十数時間が経過して、流石に肉体的にも精神的にも限界が来た僕は、トイレに行かせてほしいと嘯いて、何とか百合邸から逃げ出したんだけど。
馬鹿でかい門をくぐって、何とか百合邸の敷地から出たところで、辺り一帯に響き渡るほどの大音量でこんなアナウンスが流れてきた。
「全部隊に告げる。目標が逃亡した。速やかに捕縛せよ。繰り替えす。目標が逃亡した。速やかに捕縛せよ。」
空襲警報かよ!と突っ込みつつその場から一目散に逃げたのもつかの間。
空には何十期ものヘリ。
陸からは何千人もの軍隊が僕を捕らえんと迫ってきた。
なんとか策をろうして逃げおおせようとがんばったが多勢に無勢。
あえなくつかまり、すぐに百合邸に逆戻り。
部屋では、頬を引くつかせ、マジギレの百合お嬢様がお出迎え。
鋼鉄製の首輪をつけられ、上着を無理やり剥がれて半裸になり、ノートに書く手が止まれば、地肌に容赦なく鞭の後が刻み込まれた。
もちろん警察に助けを求めたこともある。
両親宛に手紙を書いたこともある。
そしてそのことごとくが、買収と権力によって握りつぶされた。
切実に思う。
この現状にすら耐えられるタフな方。
是非僕と代わって下さい。
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