救世主になんてなりたくなかった……
第78主:ビルル救出作戦(2)
「こ、ここがビルルさんの家なのですか?」
シュウは頰を引きつらせている。シュウたちの目の前には大きな屋敷があった。
貴族であろうことはわかっていたので、大きな屋敷は覚悟していた。だから、大きさに驚きはなかった。
目の前にある屋敷は家の外壁にツルが巻き付いていて、周囲もほぼ森と化している。空もどういうわけかどんよりと曇っている。
「こ、これって人が住んでいるのですか?」
明らかに人が住んでいそうにない。だからこそ、シュウはヒカミーヤやサルファに聞く。しかし、どういうわけか二人とも首を傾げている。だが、サルファは何か思い至ったかのように納得した表情を浮かべた。
「そっか。シュウは初めて見るな。この世界では幻術が働いていない場所は、大体こんなものだ。いや、もっとヒドイ。ここはかなりマシな方だ。外観がしっかりしているということは外観に気を配ることができるほど人間も多いということだ」
「マジで?」
あまりの衝撃にシュウはそんな反応をしてしまう。二人はシュウの反応を見ても、真剣な表情で頷くだけだ。冗談を言っている雰囲気はない。
「だから、シュウ。気をつけろよ。ここには相当な数の敵がいるぞ」
「ま、まあ、やれるだけはやってみます」
シュウはそう意気込む。
「あ、あの!」
おずおずと言った感じだが、確実にヒカミーヤは声を上げた。
「ど、どうしましたか?」
シュウはヒカミーヤの方を見る。どういうわけかヒカミーヤはそんなシュウの目線から逃げた。ヒカミーヤはそれからずっと下を向いている。
思わずシュウを苦笑を浮かべた。サルファも彼女が何を言いたいのか、わからずに首を傾げる。
だが、数秒後にヒカミーヤは意を決したのか顔を上げ、ジッとシュウのことを見た。しかし、それも一瞬で、ヒカミーヤは口を開く。
「シュウ様の血をください!」
「わかりました」
了承をした瞬間、シュウは腰に隠してある鞘から短剣を取り出すと、すぐに自分の首に当てた。
「えっ……あっ……」
あまりにも急だったので、ヒカミーヤは上手いこと言葉を発せれなかった。
「早く何か容器を持ってきてください。血を貯めることができませんよ」
「えっ? ど、どうして貯めることを?」
「吸うのでしたら、ヒカミーヤさんは吸わせてくださいと言いますよね?」
「それは……」
シュウの意見にヒカミーヤは何も言わない。彼女自身、実際に言うと考えたようだ。
「試験管くらいしかないけど、大丈夫か?」
「えっ? ど、どうして試験管を?」
「オレの血をここに入れて、ヒカミーヤがとても渇いているときに、血を飲ませているからな」
「ほ、他の人の血が入っていた試験管に、お、俺の血を入れたら、異常は起きませんか?」
「起きる」
「やっぱり……」
「でも、これは新しい試験管だ。問題はない」
「しょ、証明はどうやって」
「難しいな。だが、そうだな。入れてみたらわかる」
サルファは笑う。だが、それ以外、証明のしようなどない。シュウは呆れたように「はぁ」とため息をついた。
「わかりました。思いっきり、首を落としてください」
「任せろ」
シュウはサルファに短剣を渡す、サルファの短剣の持ち方はとても様になっていた。
さすがは勇者だと思い、苦笑を浮かべた。そこでシュウはあることを思い出す。
「首を切ると血はスゴく出ますけど、その試験管に入りませんよね」
「その心配はない。首を切った瞬間、魔法を使い、血を空中で静止させる。そして、一本ずつ入れていく。慣れてるから、シュウが復活する前に終わると思う」
「そんなこともできるんですね。力を制限されているって、本当なのですか?」
決まった答えが返ってくる。シュウはそう思っていた。しかし、サルファは曖昧に笑うだけだ。
力が制限されているか否か確証がない。
「ま、まぁ、今は置いておきます。ゆっくりしている場合じゃありませんし。それでは、お願いします」
シュウは首を差し出す。
「苦しまずに終わらせてやる!」
次の瞬間、短剣がシュウの首を落とした。
︎
シュウの血を飲んだヒカミーヤの血とサルファの血が混ざり合い、生み出された五芒星の魔法陣。
五芒星が回り出す。
「なに……これ……?」
ビルルは見たことがない五芒星に声を漏らす。しかし、二人は何も答えない。
「失礼します」
サルファが言うと、ビルルを担ぐ。そのまま魔法陣の中に入る。それを見たヒカミーヤは魔法陣の外に出た。
「ヒカミーヤ頼んだ。だけど、無理はするな」
「わかってますよ。サルファさんも彼女が逃げないようにお願いします」
「ああ。任せろ」
『血の魔法陣に起動!』
ヒカミーヤが言うと、魔法陣が眩い光を発し始める。
次の瞬間、サルファとビルルはその場から消えた。
「ん?」
二人が消えた瞬間、魔法陣に少し電気が走る。だが、すぐに問題なく魔法陣が消えたので、ヒカミーヤは気にしないことにした。そんなことよりも今はシュウの元に急いで行かないといけない。
「多分、気のせいでしょう」
ヒカミーヤはそう考えて、部屋を出た。
シュウは頰を引きつらせている。シュウたちの目の前には大きな屋敷があった。
貴族であろうことはわかっていたので、大きな屋敷は覚悟していた。だから、大きさに驚きはなかった。
目の前にある屋敷は家の外壁にツルが巻き付いていて、周囲もほぼ森と化している。空もどういうわけかどんよりと曇っている。
「こ、これって人が住んでいるのですか?」
明らかに人が住んでいそうにない。だからこそ、シュウはヒカミーヤやサルファに聞く。しかし、どういうわけか二人とも首を傾げている。だが、サルファは何か思い至ったかのように納得した表情を浮かべた。
「そっか。シュウは初めて見るな。この世界では幻術が働いていない場所は、大体こんなものだ。いや、もっとヒドイ。ここはかなりマシな方だ。外観がしっかりしているということは外観に気を配ることができるほど人間も多いということだ」
「マジで?」
あまりの衝撃にシュウはそんな反応をしてしまう。二人はシュウの反応を見ても、真剣な表情で頷くだけだ。冗談を言っている雰囲気はない。
「だから、シュウ。気をつけろよ。ここには相当な数の敵がいるぞ」
「ま、まあ、やれるだけはやってみます」
シュウはそう意気込む。
「あ、あの!」
おずおずと言った感じだが、確実にヒカミーヤは声を上げた。
「ど、どうしましたか?」
シュウはヒカミーヤの方を見る。どういうわけかヒカミーヤはそんなシュウの目線から逃げた。ヒカミーヤはそれからずっと下を向いている。
思わずシュウを苦笑を浮かべた。サルファも彼女が何を言いたいのか、わからずに首を傾げる。
だが、数秒後にヒカミーヤは意を決したのか顔を上げ、ジッとシュウのことを見た。しかし、それも一瞬で、ヒカミーヤは口を開く。
「シュウ様の血をください!」
「わかりました」
了承をした瞬間、シュウは腰に隠してある鞘から短剣を取り出すと、すぐに自分の首に当てた。
「えっ……あっ……」
あまりにも急だったので、ヒカミーヤは上手いこと言葉を発せれなかった。
「早く何か容器を持ってきてください。血を貯めることができませんよ」
「えっ? ど、どうして貯めることを?」
「吸うのでしたら、ヒカミーヤさんは吸わせてくださいと言いますよね?」
「それは……」
シュウの意見にヒカミーヤは何も言わない。彼女自身、実際に言うと考えたようだ。
「試験管くらいしかないけど、大丈夫か?」
「えっ? ど、どうして試験管を?」
「オレの血をここに入れて、ヒカミーヤがとても渇いているときに、血を飲ませているからな」
「ほ、他の人の血が入っていた試験管に、お、俺の血を入れたら、異常は起きませんか?」
「起きる」
「やっぱり……」
「でも、これは新しい試験管だ。問題はない」
「しょ、証明はどうやって」
「難しいな。だが、そうだな。入れてみたらわかる」
サルファは笑う。だが、それ以外、証明のしようなどない。シュウは呆れたように「はぁ」とため息をついた。
「わかりました。思いっきり、首を落としてください」
「任せろ」
シュウはサルファに短剣を渡す、サルファの短剣の持ち方はとても様になっていた。
さすがは勇者だと思い、苦笑を浮かべた。そこでシュウはあることを思い出す。
「首を切ると血はスゴく出ますけど、その試験管に入りませんよね」
「その心配はない。首を切った瞬間、魔法を使い、血を空中で静止させる。そして、一本ずつ入れていく。慣れてるから、シュウが復活する前に終わると思う」
「そんなこともできるんですね。力を制限されているって、本当なのですか?」
決まった答えが返ってくる。シュウはそう思っていた。しかし、サルファは曖昧に笑うだけだ。
力が制限されているか否か確証がない。
「ま、まぁ、今は置いておきます。ゆっくりしている場合じゃありませんし。それでは、お願いします」
シュウは首を差し出す。
「苦しまずに終わらせてやる!」
次の瞬間、短剣がシュウの首を落とした。
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五芒星が回り出す。
「なに……これ……?」
ビルルは見たことがない五芒星に声を漏らす。しかし、二人は何も答えない。
「失礼します」
サルファが言うと、ビルルを担ぐ。そのまま魔法陣の中に入る。それを見たヒカミーヤは魔法陣の外に出た。
「ヒカミーヤ頼んだ。だけど、無理はするな」
「わかってますよ。サルファさんも彼女が逃げないようにお願いします」
「ああ。任せろ」
『血の魔法陣に起動!』
ヒカミーヤが言うと、魔法陣が眩い光を発し始める。
次の瞬間、サルファとビルルはその場から消えた。
「ん?」
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