救世主になんてなりたくなかった……
第49主:人は何か縛りがないと生きていけませんから
シュウは正直言って、驚きが治らない。理由は簡単。昨日は字の勉強といえば半死亡状態でしていた。ビルルに集中力と吸収力が増すと言われて、やってみたら実際に言った通りだったので、文句はない。だというのに今日はどういうわけか普通だ。普通の勉強法。
椅子に座り、文字を書き写す。ボソボソと書いた文字を読む。それらを繰り返しているだけだ。
別におかしくはないが、シュウは驚きを隠せないでいる。恐らくこの世界に来て、思考がおかしくなったのだろう。死が当たり前の世界。そんな世界だからこそだろう。
「さて、今日はここで終わりね」
「えっ? あっ、はい。わかりました」
勉強はおしまいらしい。少し早く感じる。
「今は何時ですか?」
「んーと、七時半ね」
「えっ? もうそんな時間なのですか?」
授業が始まるのは八時五十分。でも、八時半までに教室にいないと欠席扱いになる。クラウダー学園はどういうわけか遅刻という概念がないのだ。八時半を過ぎると、どんな事情があれど欠席扱いになる。頭おかしいと思うだろうが、事実なのだから仕方がない。
彼は自分の部屋へ帰った。
「シュウッ!」
「は、はい! ……って、あれ? どうしてサルファさんが俺の部屋に?」
「どうしてって、オレはお前を探し回っていたんだぞ。なのに見つからない。そりゃあ、この部屋に来るだろう」
「えっ? ど、どうして探して……?」
「はっ? 何言ってんだ? どこに行ったかもわからないんだぞ」
「ん?」
「なんだよ。その反応は」
「い、いえ、俺はさっきまで特訓前の特訓と字の勉強をしてました。ですが、ビルルさんからは二人にも場所を教えたって聞きましたけど……」
「クソッ! そういうことか! まんまとはめられたっ!」
「そ、それでヒカミーヤは?」
「あぁ…………どういうことかお前の部屋のベッドで寝ている。それは今も同じだ」
「そうですか。よかった……」
「よかったということはいることを知っていたのか?」
「はい」
「まさか連れ込ん」
「あながち間違いではありません」
「マジかよ……。オレはお前がそんなに手が早いとは思わなかったぞ」
「あっ! へ、変な意味じゃないからな! いやでも、ある意味変な意味だな……。ううん……。そうだ! サルファさんが想像しているようなことは一切ありませんから。いやでも……」
「もういいから。これ以上、墓穴を掘るな。とりあえずオレが想像しているようなことはなかったんだな」
「そうですよ!」
「でも、何があったか教えてくれないか」
「簡単に言うと彼女に力を使って助けてもらいました」
「いや待て待て待て! それじゃあわかんないから! というかヒカミーヤが力を使うって、かなり危機的状況だぞ! もっと、詳しく!」
説明を求められたので、今朝あったことを話した。どうして力を使うことになったのか理解できたようでサルファはコクコクと頷いている。
「だから、こんなにも死んでいるように寝てんだな。今日は動けなさそうだな」
「うご……ける……!」
「「っ!?」」
突然ヒカミーヤの声が聞こえたので、二人は慌ててベッドを見る。いつもも白いが、いつもよりも顔を青白くさせて起き上がっている。そして、確実に違うところがある。
瞳の色だ。いつもの彼女は宝石のような赤紫色。でも、今は赤黒い。まるで血に染められているかのようだ。
「起き上がって大丈夫なのか?」
「大丈夫です。むしろ、いつもよりも元気ですよ。ただ、少し吸血衝動がヒドいだけです」
「そ、それってだ、大丈夫なのですか?」
「少し辛い程度です」
「全然大丈夫じゃないですよ!?」
「シュウの言う通りだ。ヒカミーヤ。お前は休め。シュウと出会ってから少し頑張りすぎだ」
「で、ですが!」
「いいから休め! これは命令だ!」
「わ、わかりました。そこまで言うのでしたら今日は休ませていただきます」
「そうしてくれ。その方が俺も落ち着ける」
シュウの言い方が少しキツかったせいか彼女は半泣き状態になっている。どうしようかと彼は考えたが、何も言わないことに決めた。こうまでしないと彼女はまた無茶をしてしまう。もう無茶はさせたくない。無茶や罰を受けるのは自分だけでいいとシュウは考えているのだ。
「シュウ。お前も休めとオレは言いたいんだけどな」
「そ、そんなわけにはいかないですよ。お、俺はやれることをやらないといけないですから。それにこれは必要ないことです」
「妹を殺したからか?」
「はい。そうしないと妹に示しがつきませんし、報われません」
「報いか……。立派だな。シュウを見ていると、この世界のモノたちが狂っていることがよくわかる」
「死のない世界ですから仕方ないですよ。どんなことをしても死ねないのですから、狂っていなくても狂い始めます。人間は何か縛りがないと生きていけませんから。どんなに自由に暮らしているという人でも寿命という縛りがあります。この世界ではその寿命がないのですから」
「そうだな」
どうやら納得をしてもらえたようだ。
「それではお風呂に入って来ますね」
「一緒に入ってやろうか」
「結構です」
「残念。自分で言うのはどうかと思うけど、理想的な体型をしていると思うんだけどな」
シュウは苦笑を浮かべながら、風呂へ向かった。
椅子に座り、文字を書き写す。ボソボソと書いた文字を読む。それらを繰り返しているだけだ。
別におかしくはないが、シュウは驚きを隠せないでいる。恐らくこの世界に来て、思考がおかしくなったのだろう。死が当たり前の世界。そんな世界だからこそだろう。
「さて、今日はここで終わりね」
「えっ? あっ、はい。わかりました」
勉強はおしまいらしい。少し早く感じる。
「今は何時ですか?」
「んーと、七時半ね」
「えっ? もうそんな時間なのですか?」
授業が始まるのは八時五十分。でも、八時半までに教室にいないと欠席扱いになる。クラウダー学園はどういうわけか遅刻という概念がないのだ。八時半を過ぎると、どんな事情があれど欠席扱いになる。頭おかしいと思うだろうが、事実なのだから仕方がない。
彼は自分の部屋へ帰った。
「シュウッ!」
「は、はい! ……って、あれ? どうしてサルファさんが俺の部屋に?」
「どうしてって、オレはお前を探し回っていたんだぞ。なのに見つからない。そりゃあ、この部屋に来るだろう」
「えっ? ど、どうして探して……?」
「はっ? 何言ってんだ? どこに行ったかもわからないんだぞ」
「ん?」
「なんだよ。その反応は」
「い、いえ、俺はさっきまで特訓前の特訓と字の勉強をしてました。ですが、ビルルさんからは二人にも場所を教えたって聞きましたけど……」
「クソッ! そういうことか! まんまとはめられたっ!」
「そ、それでヒカミーヤは?」
「あぁ…………どういうことかお前の部屋のベッドで寝ている。それは今も同じだ」
「そうですか。よかった……」
「よかったということはいることを知っていたのか?」
「はい」
「まさか連れ込ん」
「あながち間違いではありません」
「マジかよ……。オレはお前がそんなに手が早いとは思わなかったぞ」
「あっ! へ、変な意味じゃないからな! いやでも、ある意味変な意味だな……。ううん……。そうだ! サルファさんが想像しているようなことは一切ありませんから。いやでも……」
「もういいから。これ以上、墓穴を掘るな。とりあえずオレが想像しているようなことはなかったんだな」
「そうですよ!」
「でも、何があったか教えてくれないか」
「簡単に言うと彼女に力を使って助けてもらいました」
「いや待て待て待て! それじゃあわかんないから! というかヒカミーヤが力を使うって、かなり危機的状況だぞ! もっと、詳しく!」
説明を求められたので、今朝あったことを話した。どうして力を使うことになったのか理解できたようでサルファはコクコクと頷いている。
「だから、こんなにも死んでいるように寝てんだな。今日は動けなさそうだな」
「うご……ける……!」
「「っ!?」」
突然ヒカミーヤの声が聞こえたので、二人は慌ててベッドを見る。いつもも白いが、いつもよりも顔を青白くさせて起き上がっている。そして、確実に違うところがある。
瞳の色だ。いつもの彼女は宝石のような赤紫色。でも、今は赤黒い。まるで血に染められているかのようだ。
「起き上がって大丈夫なのか?」
「大丈夫です。むしろ、いつもよりも元気ですよ。ただ、少し吸血衝動がヒドいだけです」
「そ、それってだ、大丈夫なのですか?」
「少し辛い程度です」
「全然大丈夫じゃないですよ!?」
「シュウの言う通りだ。ヒカミーヤ。お前は休め。シュウと出会ってから少し頑張りすぎだ」
「で、ですが!」
「いいから休め! これは命令だ!」
「わ、わかりました。そこまで言うのでしたら今日は休ませていただきます」
「そうしてくれ。その方が俺も落ち着ける」
シュウの言い方が少しキツかったせいか彼女は半泣き状態になっている。どうしようかと彼は考えたが、何も言わないことに決めた。こうまでしないと彼女はまた無茶をしてしまう。もう無茶はさせたくない。無茶や罰を受けるのは自分だけでいいとシュウは考えているのだ。
「シュウ。お前も休めとオレは言いたいんだけどな」
「そ、そんなわけにはいかないですよ。お、俺はやれることをやらないといけないですから。それにこれは必要ないことです」
「妹を殺したからか?」
「はい。そうしないと妹に示しがつきませんし、報われません」
「報いか……。立派だな。シュウを見ていると、この世界のモノたちが狂っていることがよくわかる」
「死のない世界ですから仕方ないですよ。どんなことをしても死ねないのですから、狂っていなくても狂い始めます。人間は何か縛りがないと生きていけませんから。どんなに自由に暮らしているという人でも寿命という縛りがあります。この世界ではその寿命がないのですから」
「そうだな」
どうやら納得をしてもらえたようだ。
「それではお風呂に入って来ますね」
「一緒に入ってやろうか」
「結構です」
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シュウは苦笑を浮かべながら、風呂へ向かった。
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