救世主になんてなりたくなかった……
第14主:一騎打ちのルールを説明するね
コウスターはその場を去った。
「それにしても急よね」
ビルルはそう言いながらも怒っている気配がない。むしろ、楽しんでいそうな気がする。
「楽しそうですね」
シュウは皮肉げに言う。それでも、ビルルは彼の言葉を気にしていないようだ。
「そりゃあ、楽しいよ。だって、シュウくんの今の実力がわかる、またとない機会だよ」
「ただの見せしめにされるだけだと思いますよ」
「そうだとしたら、わたしはあなたに特訓をつけることになるね。楽しみだなぁ」
「そうとは限りませんよ。あまりにも弱すぎて見捨てたくなると思いますよ」
「わたしがシュウくんを見捨てる? バカなことを言わないでよ。わたしはいつだってシュウくんの味方だから」
「でしたら、どうして二人にはあのような仕打ちを?」
「だって壁だもん」
彼女の言葉を聞いて少しイラッとしたが、本人たちが言ったようにこんな彼女でもマシな方なのだから、怒りはすぐに収まった。
「それではシュウくん。あなたにコウスターが言ってきた一騎打ちのルールを説明するね」
「お、お願いします」
彼女は彼の返事を聞いて、近い席に座る。シュウは立ったままでいる。
「なんか立ったままだと話しにくいから座って」
「わ、わかりました!」
彼は慌てて彼女の机を挟んで向かい側にある席に座る。そのため彼女と向き合うことになるが、相変わらず目線は合わせない。さすがに向き合う時は目線を合わせてくれると思っていた彼女は苦笑を漏らす。
「それじゃあ説明するね」
「お、お願いします」
「まずは制限時間の方だけど無制限」
「なら、いくらでも殺せるということですか?」
「それは違うよ。この血統の勝利条件は相手を一度殺した方が勝ち」
「降参はどうなるのですか?」
「降参は禁止。降参すると、決闘に来なかったことになるよ」
戦いが始まった瞬間に降参という術を考えていた彼からは降参や逃走の二文字が消えた。
「次は武器についてだけど、自分のを持っている人は自前でいいよ。持ってない人は決闘場で多種多様な武器を貸してもらえる」
「ということは自前を持っていない人の方が不利と」
「それはないよ。断言できる」
「どうしてですか?」
「ここは国立の学校よ。貸し出し用の武器も一流が作っているわ。それに基本、決闘場は学生同士の揉め事でしか使われないから。戦う学生の親も来るから、例え死なないとは言え、武器が脆かったら、それだけでその武器を作った鍛冶屋は倒産及び国外追放。個人なら鍛冶師が国外追放。この世界ではほとんどが魔物がいることによっての未開の地だから、国外追放は永遠の死よ」
「それだったら、難癖つける人がいたら」
「それも問題ないよ。一発や二発で壊れるなら、確実アウトだけど、五発で壊れなければセーフよ」
「そうなのですね。となると自分たちの命がかかっているため本気で作るから、借りた方が有利なのですね」
「ところがそうでもないのよね」
「というと?」
「わたしは一流が作っていると言った。でも、自前のものは大体オーダーメイドで超一流が作ったものよ」
「なるほど。ありがとうございます。勉強になりました」
「あれ? 他にも色々あったのに」
「例えばどんなことが?」
「決闘場で一番壊れやすい場所とか、決闘場の広さとか」
「さすがにそこまで教えてもらうとフェアではないので」
「逆に教えない方がフェアじゃないのだけど」
「わかりました。それでしたら教えてください」
「そうね。まずは一番壊れやすいところだけど、完全なる中央。ほとんど中央で戦わないから、そこが脆くなっているよ。次に大きさだけど円状で半径が六百メトラールよ」
「め、メトラール?」
「この世界での大きさの単位よ。うーん。あなたの世界ではなんていうんだろう?」
「わ、わかりません」
ーーメトラール。メトラール。メートラル。メートル。はっ! メートルか。でも、半径六百メートルって、広くないか? いや、こんなものなのか?
「次に観客動員数だけど……」
「は、はい!」
「千人と少しだよ」
「次に相手の弱みだけど」
「ちょっ! ちょっと待ってください! それを知っているとフェアになるのですか?」
「いや、こちらが有利になるけど」
「それでしたら、いらないです」
「えっ? でも……」
「さすがに相手の弱みを握って戦うと同情心が出てしまうので」
「なるほどね。だったら、教えないでおくよ」
「助かります。そ、そういえば決闘場ってどこなのですか?」
「それは安心して。わたしが付き添いするから」
「す、すみません。ご迷惑をおかけします」
「ううん。気にしないで。挑んできたコウスターが悪いのだから」
「そう言っていただけると助かります」
「さて、一旦部屋に戻ろう」
「そうですね。わかりました」
今度こそ部屋へと戻るビルルの後を少し離れた場所からついていき、食堂を出た。食堂で色々ありすぎて思わずシュウはため息を出してしまう。でも、仕方ない。慣れない異世界生活でさらに食事も食べれていない。
誰にも気づかれていないが、異世界の食事は彼には合わなかった。実際に少し立ちくらみがしてしまっている。でも、バレないようになんとか隠している。
十数分間それに耐えて、部屋にたどり着いた。
「それじゃあ、決闘までゆっくり休んでいて」
「わかりました。ありがとうございます」
気づかれていないが、顔が少し青白い。完全に体調が悪い証拠だ。ビルルが自室に戻るために進んでいく足音が聞こえなくなってから、彼は一人では大きすぎるベットに倒れこんだ。
次の瞬間にまるで気絶でもするかのように一瞬にして意識を失った。
「それにしても急よね」
ビルルはそう言いながらも怒っている気配がない。むしろ、楽しんでいそうな気がする。
「楽しそうですね」
シュウは皮肉げに言う。それでも、ビルルは彼の言葉を気にしていないようだ。
「そりゃあ、楽しいよ。だって、シュウくんの今の実力がわかる、またとない機会だよ」
「ただの見せしめにされるだけだと思いますよ」
「そうだとしたら、わたしはあなたに特訓をつけることになるね。楽しみだなぁ」
「そうとは限りませんよ。あまりにも弱すぎて見捨てたくなると思いますよ」
「わたしがシュウくんを見捨てる? バカなことを言わないでよ。わたしはいつだってシュウくんの味方だから」
「でしたら、どうして二人にはあのような仕打ちを?」
「だって壁だもん」
彼女の言葉を聞いて少しイラッとしたが、本人たちが言ったようにこんな彼女でもマシな方なのだから、怒りはすぐに収まった。
「それではシュウくん。あなたにコウスターが言ってきた一騎打ちのルールを説明するね」
「お、お願いします」
彼女は彼の返事を聞いて、近い席に座る。シュウは立ったままでいる。
「なんか立ったままだと話しにくいから座って」
「わ、わかりました!」
彼は慌てて彼女の机を挟んで向かい側にある席に座る。そのため彼女と向き合うことになるが、相変わらず目線は合わせない。さすがに向き合う時は目線を合わせてくれると思っていた彼女は苦笑を漏らす。
「それじゃあ説明するね」
「お、お願いします」
「まずは制限時間の方だけど無制限」
「なら、いくらでも殺せるということですか?」
「それは違うよ。この血統の勝利条件は相手を一度殺した方が勝ち」
「降参はどうなるのですか?」
「降参は禁止。降参すると、決闘に来なかったことになるよ」
戦いが始まった瞬間に降参という術を考えていた彼からは降参や逃走の二文字が消えた。
「次は武器についてだけど、自分のを持っている人は自前でいいよ。持ってない人は決闘場で多種多様な武器を貸してもらえる」
「ということは自前を持っていない人の方が不利と」
「それはないよ。断言できる」
「どうしてですか?」
「ここは国立の学校よ。貸し出し用の武器も一流が作っているわ。それに基本、決闘場は学生同士の揉め事でしか使われないから。戦う学生の親も来るから、例え死なないとは言え、武器が脆かったら、それだけでその武器を作った鍛冶屋は倒産及び国外追放。個人なら鍛冶師が国外追放。この世界ではほとんどが魔物がいることによっての未開の地だから、国外追放は永遠の死よ」
「それだったら、難癖つける人がいたら」
「それも問題ないよ。一発や二発で壊れるなら、確実アウトだけど、五発で壊れなければセーフよ」
「そうなのですね。となると自分たちの命がかかっているため本気で作るから、借りた方が有利なのですね」
「ところがそうでもないのよね」
「というと?」
「わたしは一流が作っていると言った。でも、自前のものは大体オーダーメイドで超一流が作ったものよ」
「なるほど。ありがとうございます。勉強になりました」
「あれ? 他にも色々あったのに」
「例えばどんなことが?」
「決闘場で一番壊れやすい場所とか、決闘場の広さとか」
「さすがにそこまで教えてもらうとフェアではないので」
「逆に教えない方がフェアじゃないのだけど」
「わかりました。それでしたら教えてください」
「そうね。まずは一番壊れやすいところだけど、完全なる中央。ほとんど中央で戦わないから、そこが脆くなっているよ。次に大きさだけど円状で半径が六百メトラールよ」
「め、メトラール?」
「この世界での大きさの単位よ。うーん。あなたの世界ではなんていうんだろう?」
「わ、わかりません」
ーーメトラール。メトラール。メートラル。メートル。はっ! メートルか。でも、半径六百メートルって、広くないか? いや、こんなものなのか?
「次に観客動員数だけど……」
「は、はい!」
「千人と少しだよ」
「次に相手の弱みだけど」
「ちょっ! ちょっと待ってください! それを知っているとフェアになるのですか?」
「いや、こちらが有利になるけど」
「それでしたら、いらないです」
「えっ? でも……」
「さすがに相手の弱みを握って戦うと同情心が出てしまうので」
「なるほどね。だったら、教えないでおくよ」
「助かります。そ、そういえば決闘場ってどこなのですか?」
「それは安心して。わたしが付き添いするから」
「す、すみません。ご迷惑をおかけします」
「ううん。気にしないで。挑んできたコウスターが悪いのだから」
「そう言っていただけると助かります」
「さて、一旦部屋に戻ろう」
「そうですね。わかりました」
今度こそ部屋へと戻るビルルの後を少し離れた場所からついていき、食堂を出た。食堂で色々ありすぎて思わずシュウはため息を出してしまう。でも、仕方ない。慣れない異世界生活でさらに食事も食べれていない。
誰にも気づかれていないが、異世界の食事は彼には合わなかった。実際に少し立ちくらみがしてしまっている。でも、バレないようになんとか隠している。
十数分間それに耐えて、部屋にたどり着いた。
「それじゃあ、決闘までゆっくり休んでいて」
「わかりました。ありがとうございます」
気づかれていないが、顔が少し青白い。完全に体調が悪い証拠だ。ビルルが自室に戻るために進んでいく足音が聞こえなくなってから、彼は一人では大きすぎるベットに倒れこんだ。
次の瞬間にまるで気絶でもするかのように一瞬にして意識を失った。
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