高校生である私が請け負うには重過ぎる

吾田文弱

第2話 黒

——転校生?

 小学や中学で転校生は珍しいことではない。しかし、高校で転校生とはかなり珍しい。

「サプライズとして皆には言わずにおこうと思っていたが、委員長である君には知らせておかなければと思ったのだ」

「……え? それは何故ですか?」

「転校生の世話——という言い方はおかしいか? まあ、その役目は君に任せたかったからな。お願いしてもいいか?」

「光栄でございます。寡聞浅学な私でよろしければ、誠心誠意、謹んで務めさせていただきます」

「相変わらず謙虚だな君は。だが引き受けてくれて何よりだ。あと、転校生については今のところ我がクラスにやって来る、とだけ言っておこう。君も転校生のことは気になるだろう? 全て喋ってしまっては楽しみがなくなるからな」

 それだけ話すと私は教室へ戻るよう促された。時計を見るともう予鈴前だった。

 私は朝職員室へ向かって行った時よりも早く教室へ戻った。一時間目の授業の用意もしないといけないし、こんなに慌ただしい朝は初めての経験である。




 ほどなくしてホームルームの時間が始まった。開始のチャイムと同時に渡部先生が教室へ入ってきた。何か良いことがあったのだろうと一目で分かるほどの満面の笑みを浮かべながら。

「おう! みんなおはよう! 早速ホームルームを始めようと思うが、今日は朝から良い知らせだ。なんと我がクラスに、転校生がやってくるぞ!」

「「「おおお!」」」

 クラス全員(私は除く)が気持ちいいくらいのリアクションをした。

 私は先生からその事を事前に聞いているので、楽しみは半分半分な訳なのだけれど、容姿などは詳しく話されていないので、まだ楽しみが無くなった訳ではない。

「実はもうあの扉の向こうに彼は待っている。早速入ってもらおうじゃないか」

 先生のある言葉を聞いたクラスの男子たちのほとんどがガクリと肩を落とした。

——『彼』か……。転校生は男子なんだ。

「よし、じゃあ入ってこい!」

 という先生の呼びかけから、一呼吸くらいおいて教室の扉が開かれた。

 私の目に飛び込んで来たのは——塗りつぶしたような『黒』だった。
  

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