天空の妖界

水乃谷 アゲハ

雪撫の調べ事(壱)

 どうも皆さんお久しぶりです。雪撫と申します。今私は、影に隠れ、天井に隠れ壁に隠れを繰り返しながら、食堂からようやく図書館に付きました。
 扉をすり抜け静かに中に入ると、
「そんなびくびくしないでもトラップなんかしかけてないわよ?」
 文車妖妃が気付いて声をかけてくれました。
 そこでようやく警戒を解いて中に入ると、キララちゃんと文車妖妃が席に座って待っていました。
「あ~雪撫ちゃんだ~。やっほ~?」
「キララちゃんやっほ!」
 とりあえず手ごろな椅子に座り、ようやく一息つきます。
「ここならばれることはないから安心していいわ。彼が戻るのをここで待ちましょう」
 落ち着いた態度の文車妖妃に凄い安心感を覚えます。性格は悪いけど!
「あら、あなたよりはいい性格だと思うけどね?」
「勝手に頭の中を読む時点でいい性格とは言わないし……そんなことより」
 ここでようやく私の本題へ入ります。
「色々気になっている事があるの。もしよければ協力してもらえないかな?」
「私はどうせここで本を読んでいるだけだからいいわよ?」
「ん~? 私も別にいいよ~?」
「あれ? キララちゃん、キリアさんは?」
 彼女は一応浅野さんという人格でキリアさんと一緒にいる設定だから、ずっといないのはまずい気がしますが……。
「キリちゃんは自分を鍛えるって言って~スポーツエリアに行ったよ~?」
「そっか、それならよかった。それじゃあちょっと色々知りたいことを聞いていくね?」
「うん~」
「どうぞ?」
「二人は、どうやって他の人にとりついたの?」
 私みたいに真君と頭をぶつけたってわけじゃないでしょうし……。
「私は、この学校に来た時、図書室で文田先生とあったのよ。彼はかなり本に集中していたから、首裏をたたいて気絶させるのはとても簡単だったわ」
 なるほど、それなら確実に憑りつけます。キララちゃんは……?
 そこでふと、食堂でのキリアさんと真君の会話を思い出しました。辛そうに目を伏せて、すまないって言ってた……。
「私は~この子が頼んできてそれに憑りついたよ~なんかね~」
 と、いつもの口調で説明をしてくれますが、簡単に私がまとめると、朝野さんとキリアさんはひょんな事から喧嘩になってしまい、思わずキリアさんが朝野さんを弱いと言ってしまったのが理由で朝野さんは強くなるためにキララちゃんを受け入れたそうです。
「でもそれじゃあ、キララちゃんの存在をキリアさんは分かっているって事?」
「うん~」
「彼女があなたたちと食堂に行って話したときペルと呼んでいたのは、あなたの存在にキリアさんは気が付いてないからよ。キララの事を滅すかもしれないと思われたのね」
「な、なるほど……あ、あとそれも聞きたかったの!」
「というと?」
「あのね、キリアさんとトリプレットの三人は私の存在が分からなかったの。だけど、千宮司先輩は私の事が認識できていた。この差は何だと思う?」
「ん~? ただただ強さの違いじゃないの~?」
「いや、多分違うと思うんだよね。ていうのも、千宮司先輩と同じくらい強い慧人さんもメグさんもあの暗い人さえ多分私の事が見えてなかった」
 それよりもあの人は真君しか見てないって可能性がなくもないけど……。あの人、真君の事すごい好きだしね。
「暗い人じゃなくて御社さんね。まぁ、妖怪は基本、どんなに霊感がある人でも見ることはできないわよ。死んで生まれる幽霊と違って、私たちは見えない生物として生きているから」
「そう。だから妖怪同士でしか見ることはできないはずなんだよ。でも、真君と千宮司先輩には見られている……」
「能力の強さが関係ないとすると、二人の共通点が答えってことになるわね」
「ん~影弥真に関わる~とかが~一番可能性あるよね~?」
「そうね、それが一番納得のいく答えだと思うわ」
「え? え?」
 二人だけで納得されても困ります! 真君と関わるって言うなら全員が見えるはずです。
「これはあくまで推測よ? けど、あなたの記憶を覗く限りこれが正しいはず。彼、影弥真は彼の持つどちらかの能力で妖怪を見ることができる。だから降ってくるあなたに気付いた。それから、彼はトランスの能力の発動条件が整った相手にもその能力を共有する力がある」
 な、なるほど……それは確かに正しい推測な気がする……。
 言われた事を少し考えていると、突然図書室の扉が開く音がしました。思わず三人が警戒して壁で影となってちょうど見えない扉の方向を睨みます。
「どうもどうも~♪」
 壁に手をかけ、ゆっくりと姿を現したその姿は……
「に、人……間……?」

コメント

コメントを書く

「現代アクション」の人気作品

書籍化作品