天空の妖界

水乃谷 アゲハ

雪女と抜けている女

 ようやく二人で席に着くと、早速俺は本題を切り出した。
「ふむ、ペルの様子か……。いや、彼女があぁなったのは私のせいなんだ」
「ん? どういうことです?」
 少しつらそうな顔をして彼女は一言、
「すまない」
 と、一言だけ言った。だから俺はあえて触れずに話題を変えた。
「朝野ペルラの能力はなんですか? ゾンビ?」
「その前に待ってくれ。私は君に負けたわけだし、こういうお願いをできる立場ではないのだが、できれば敬語を控えてはくれないか? 勿論年上なのも重々承知しているから、話しにくいなら変えてもらわなくても結構だ」
「了解。んじゃ敬語はなしで」
「助かる。それで彼女の能力だが、彼女の能力は火炎のBだ。手のひらに小さな火を出せる能力だよ。……それよりも、君のうどんがのびてしまうから食べてからでもいいぞ?」
 そういわれて、ようやく天ぷらうどんに手を出す。食べてる最中、雪撫が何か真剣に見つめていたが取りあえず食べ終わる。
「君が聞きたかったのはそれだけか?」
「もうひとつある。文田の話だ」
 文田とは俺がまだ授業を受けていた時の先生だった人であり、先程の雪撫にいったなぜか雪撫の過去を知る先生だ。
「君、先生は付けなければ失礼に当たるから気をつけた方がいい。それより、文田先生か。彼のことは色々噂は聞くな」
「そうなのか?」
「あぁ、あの先生は少し生徒の話を聞くだけですべてのプロフィールが分かるという特技を持っていてな。そこに私たちの学年だった生徒全員が疑問を抱いてなんとか調べられる範囲で調べたんだ」
「そうか……。じゃあひとつ聞きたいんだが、あいつは妖怪なのか?」
「ふむ、その質問ができるということは少し確信があるのか? まぁ、それは置いておいて答えるならば、彼が妖怪であるという断定は今のところ不可能に近い。何も証拠がないからな。しかし、可能性でいうなら非常に高いと思う。彼はほとんど食事はせず、本ばかり読んでいたからね」
 本当に細かいところまで調べたんだな……。
 俺はその特徴を聞きながら、妖怪の正体をなんとなくつかんでいた。同時に、雪撫の方向を見ると、彼女もなにか考えていた。
「ありがとうございました。おかげでようやく疑問が解けたかもしれません」
「そうか、それならよかった。では私もそろそろこのカレーに手を出すとしよう」
「食べてなかったんですか……んじゃ、先出ますよ」
 ──やっぱキリアは抜けている。
 そんなことを思いながら食堂を後にした。

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