天空の妖界

水乃谷 アゲハ

雪女の疑問

「もう一人……へぇ?」
 どんな人? と目で聞いてくる真君に、私は別の質問をしました。
「その人の話をする前にさ、さっきの教えてほしいんだけど」
「さっきの?」
「キララちゃんの頭を触る前に、何かに気が付いてなかった?」
「あぁ、あれは……不思議に思うところがあってさ」
「不思議に思うところ?」
 キララちゃんに不思議なところはなかったと思いますが……?
「キララってあの妙な名前のハーフに憑りついてるじゃん?」
「朝野ペルラさんだね」
 確かに不思議な名前ですけど……妙な名前とは失礼です。
「あいつはどうやって憑りついたんだろうな? やっぱりペルラってやつに許可を取ったのかな?」
「い、いや~……キララちゃんはそんな性格じゃないと思うんだよね。たぶん、気絶しているときに憑りついたんじゃないかな?」
「気絶している人?」
「うん。私たち妖怪は、人に憑りつく時は、まず私と真君みたいに許可をもらう方法が1つだよね。イタコみたいな。それともう一つは、意識がない状態、それか死後硬直が終わった死体に憑りつく方法があるんだよ」
 そう教えると、真君は顎に手をやり考えるそぶりを見せました。
「気絶の時か……でも、それなら問題があるんだよね。二つ」
「二つ?」
 一つは思いつきます。それはもちろん、
「性格の変化が一つだよね」
「あぁ、あんな性格の奴がほかにいるとは思えないからな。それともうひとつは、憑りつくまでの問題」
「憑りつくまでの……問題?」
 ははぁ、言いたいことがわかりました。
「姿が見られる可能性ってことだね?」
「そうそう。見られたら場所が場所だから、殺され……って死なないのかあいつ」
「う~ん、それ以前の問題だよ。キララちゃんじゃなくても、妖怪って消えることが出来るんだよ?」
「でたな、なんでも妖力……」
 なんでもってわけじゃありませんけどね……。それをいうなら真君の言っていた魔法だって何でも出来そうですが?
「まぁ、消えることが出来るってのは分かった。じゃあ問題は性格か……。気付かないのかね?」
「た、確かに……」
 私が言うのは変かもしれませんが、キララちゃんは性格もしゃべり方も変わっていると思います。なんで気付かなかったのでしょう。
「調べるか……」
「ど、どうやって? キララちゃんに聞くの?」
「いや、キリアって人に聞く」
「え、でも連絡先は分からないんでしょ?」
「別になくても出来るさ。そのための能力だし」
 なるほど、コミュニケーションを使えば確かに出来ましたね。でも、ひとつ問題が……。
「え、えっと~真君? 時間的にもう遅いからきょ、今日じゃなくてもいいんじゃないかな?」
「あぁ、キリアさん? 今日の対戦で会った真です」
「もう遅かった!」
 なんという行動の早さでしょう……。
「あぁ、そうですそうです。女になってた奴です。今日暇ですか? ……あぁ、そうですか。それなら食堂で八時でどうですか?」
 八時? 今はまだ六時ですから二時間後です。えっと……ナンパみたいですが大丈夫でしょうか?
「よし。ってことでその話は後程。次は雪撫の番だな」
「う、うん」
 そうして私は、また昔の話を始めました。

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