天空の妖界

水乃谷 アゲハ

雪女と提案

「え!? キララちゃんを倒す!?」
 雪撫が驚いたように声を出す。もちろん今の体の主導権は雪撫にあるので、私の部屋にいる全員に聞こえる。
「は?」
「え?」
「ん~?」
 それぞれがこっちを向く。若干私だけ知っている空気になり、気分が良かった。それと同時に、失敗が怖くなる。
「たぶんだよ? 確証はないんだよ?」
「たぶんって……そういう問題じゃないよ!」
 そう反応する雪撫に慧人も続いて言う。
「お前だって、戦う能力ないだろ?」
「ちょっと一回、男に戻るよ?」
「あ、うん」
 そう断って男に一度戻る。
「一応言っておくぞ? 失敗するかもしれないからな?」
「絶対失敗するの間違いだろ?」
 慧人君がひどいです。しかし俺は、キララの前に立って確信する。これは出来る。
「……ん?」
 それと同時に、俺は少し疑問に思ったことがあった。
「どうしたの? 真」
 メグが俺の顔を不思議そうに覗き込んでくる。そこで俺は考えるのをやめた。
「あぁ、いやなんでもない。キララ、ちょっと下向いて?」
「え~? あ、はい~」
 下を向いた彼女の頭に、俺は軽く触れる。金色の髪はとても柔らかい。
「出来る……のか?」
 と、慧人が聞いてくるが、無視をして集中する。
 数分後、彼女は頭を抑えて苦しみだした。
「……出来た」
「う……い、痛い……」
「しばらく横になってじっとしていなくちゃダメだ」
「あ、はい」
 そんな俺たちのやり取りを呆然と見ていた三人は、すぐに正気に戻り俺に詰め寄ってきた。
「お、お前今何したの!?」
「真ってまだ他にも能力があったの!? 今のはなに!? 念力」
「真君!? キララちゃんに何したの!?」
 なんか、一人だけ違う気がするけど、まぁいいや。
「これも、コミュニケーションだよ」
「コミュニ……ケーション?」
 と、いぶかしむ顔でメグがつぶやく。
「コミュニケーション、つまり会話能力っていうのはなにも交渉術だけじゃなく、嘘を付くこともそうだし、テレパシーだって出来る。今キララにやったのはそのテレパシーの応用だよ」
「テレパシーの応用?」
「痛かったです~」
 慧人が不思議そうにしている後ろで、キララが頭をあげた。
「さすがに回復力はすごいな」
「そんなことはいい。それより説明の続きをしろ」
「テレパシーの応用って言うのはつまり、周りの会話が耳に入ってくるようにしたんだよ。テレパシーって言うのは本来、聞こえないはずの声が頭に入ってくることを言うだろ? だから、この学校にいる全員の声を頭に直接聞かせたら、脳がオーバーヒートするんだ。これは別に耳が聞こえると、脳は認識するからダメージと認識されないんだよ」
 それを聞くと、慧人とメグは感心したように俺の顔を見る。雪撫は、キララの方を心配している。
 キララはといえば、まだ少し痛そうにしているが、笑ってこっちを見ていた。
「今日で私達、いろんなこと知ったね……」
「そうだな」
 と、慧人とメグは立ち上がる。
「お? もう帰るのか?」
「あぁ、それともなんだ? まだあるのか? 秘密が」
「いや、ないけど……」
「なら、もう遅いし俺等は帰るよ。あぁ、安心しろ。ここで聞いたことは全部秘密にするから」
「当たり前だ」
 言われたら最悪なことになる。ってか言われたら俺多分もうここいれないよな。
「それじゃあ、私たちはこれで。じゃね? 真」
 そういって二人は手をつないで帰っていった。うらやましい……。
「それじゃ~、わたしも~」
「ちょいまち」
 帰ると言おうとしたキララを押しとどめて彼女に言った。
「キララちゃんさ、ユニオン組まない?」

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