天空の妖界
雪女の過去
私が飢々娘々という目の前の子に憑いている妖怪にはじめて会ったのは、森の中でした。
当時私は母につれられ、森に散歩に行ったのですが、恥ずかしながら初めての散歩に思わず浮かれてしまった私は迷子になり、ひとりでひたすら森の中を歩き回っていたのです。
そのとき出会ったのが飢々娘々でした。はぐれることの恐怖に勝るほど好奇心旺盛な私は、思わず声をかけました。
「こんにちわ! 私は雪女の雪撫っていうんだ! あなたは?」
彼女のほうは、少し驚いた顔をしていましたが、でもすぐに笑顔になって、
「私は飢々娘々のキララっていうんだ~」
と、答えてくれました。
「飢々娘々?」
「あれ? 知らない~?」
「えっと……」
失礼な気がして、知っている振りをしようかと思いました。
「大丈夫だよ~? あんまり知られてないから~。飢々娘々っていうのは、災害によって親を亡くした女の子が、飢えにで死んじゃったことによって生まれる妖怪だよ~」
「え!? ってことは……恨みを持ってってこと?」
「違うよ~? 食べ物を食べたいという強い思いで生まれたんだよ~。」
「そ、そっか……。で、なんでこんなところに?」
一瞬、自分を棚に上げて、変なのと言いそうになりました。
「ん~? 散歩~」
「親は……いないんだよね」
「うん~。それよりそっちは何でここに~?」
「あ、えっと……」
「迷子さん~?」
「あ……う、うん」
「教えるよ~。雪女ってことは北でしょ~?」
「あ、うん。……多分」
「こっち~」
そうしてキララちゃんに案内された私は、十分も経たないうちに母に会うことができました。母は、驚いた顔をしてキララちゃんを見ていたけれど、すぐに、「ありがとう」と笑顔になりました。
それから私は、暇があると(とはいっても、大体暇なんだけど)森に行くようになりました。当然、いつもじゃないけど、キララちゃんがいたからですが。
そして、私たちは、キララちゃん、雪撫ちゃんと呼び合うようになりました。
そんなある日、いつものように私が森に行くと、キララちゃんが立っていました。でも、様子がおかしいと思いました。全身血だらけで立っていたから……。
「キ、キララちゃん!? どうしたのその格好!?」
心配して近寄ると、キララちゃんがとても興奮して嬉しそうな顔で、
「食事!」
と言うのです。
「え?」
「食事をしてたんだよ!」
「食事?」
「うん。とってもおいしいやつ!」
何を食べたのか、その答えは今日ようやくわかりました。
「その血は……?」
「返り血もあるし私のもあるよ!」
「え!? じゃ、じゃあキララちゃん怪我してるの?」
「してないよ! まず、しないんだよ!」
……じゃあ何でキララちゃんの血が……。若干怖くなりました。
「へ、へぇ……。便利だね?」
「え? 雪撫ちゃんは違うの?」
「私は……ん~骨折は3日くらいかかるかも……。」
「へ~……、骨折って何~?」
「そ、そこから?」
ただひとまず、この語尾を延ばすしゃべり方こそキララちゃんだと私は安心した。
「いいな~……。私もそんな体だとよかったかな?」
「そうかもね~」
「キララちゃん、ちょっといい?」
「ん~?」
「手、出して?」
「何~?リストカット?」
「何でそんなに発想がグロテスクなの……。違うよ」
しかも、リストカットを知っているなら、骨折も知っているような気がしますが……。
「ん~?じゃあ何~?」
「目をつぶってて!」
「ん~……わかった~」
私は彼女の腕をまくり、そこに氷を吹きかけた。やっぱりこれは怪我としてとられないようです。
「冷たいよ~」
「も、もうちょっと!」
「ん~……。きもちよくて寝そ~……」
「はい、終わった!」
「ん~? え~? なにこれ~?」
私が彼女の腕にかけた氷は珍しいもので、皮膚につくと、すぐに解けて色だけつけるというものだった。
「amico intimo?」
「うん。人間界のイタリア語っていうので親友って意味なんだって!」
昔、母親に教えてもらった言葉です。
「親友~?」
「うん!」
「私が~? 雪撫ちゃんと~?」
「そうだよ!」
すると、キララちゃんは意地悪そうな顔で笑った。
「これでもし~、私がイヤだって言ったら~、雪撫ちゃん面白いほどの勘違いって事だよね~」
「あ……。そ、そしたらそれを消すよ!」
「でもまぁ~、私は雪撫ちゃん好きだし、いいよ~?」
「本当に!? よ、よかった……」
そして私たちは親友となった。
当時私は母につれられ、森に散歩に行ったのですが、恥ずかしながら初めての散歩に思わず浮かれてしまった私は迷子になり、ひとりでひたすら森の中を歩き回っていたのです。
そのとき出会ったのが飢々娘々でした。はぐれることの恐怖に勝るほど好奇心旺盛な私は、思わず声をかけました。
「こんにちわ! 私は雪女の雪撫っていうんだ! あなたは?」
彼女のほうは、少し驚いた顔をしていましたが、でもすぐに笑顔になって、
「私は飢々娘々のキララっていうんだ~」
と、答えてくれました。
「飢々娘々?」
「あれ? 知らない~?」
「えっと……」
失礼な気がして、知っている振りをしようかと思いました。
「大丈夫だよ~? あんまり知られてないから~。飢々娘々っていうのは、災害によって親を亡くした女の子が、飢えにで死んじゃったことによって生まれる妖怪だよ~」
「え!? ってことは……恨みを持ってってこと?」
「違うよ~? 食べ物を食べたいという強い思いで生まれたんだよ~。」
「そ、そっか……。で、なんでこんなところに?」
一瞬、自分を棚に上げて、変なのと言いそうになりました。
「ん~? 散歩~」
「親は……いないんだよね」
「うん~。それよりそっちは何でここに~?」
「あ、えっと……」
「迷子さん~?」
「あ……う、うん」
「教えるよ~。雪女ってことは北でしょ~?」
「あ、うん。……多分」
「こっち~」
そうしてキララちゃんに案内された私は、十分も経たないうちに母に会うことができました。母は、驚いた顔をしてキララちゃんを見ていたけれど、すぐに、「ありがとう」と笑顔になりました。
それから私は、暇があると(とはいっても、大体暇なんだけど)森に行くようになりました。当然、いつもじゃないけど、キララちゃんがいたからですが。
そして、私たちは、キララちゃん、雪撫ちゃんと呼び合うようになりました。
そんなある日、いつものように私が森に行くと、キララちゃんが立っていました。でも、様子がおかしいと思いました。全身血だらけで立っていたから……。
「キ、キララちゃん!? どうしたのその格好!?」
心配して近寄ると、キララちゃんがとても興奮して嬉しそうな顔で、
「食事!」
と言うのです。
「え?」
「食事をしてたんだよ!」
「食事?」
「うん。とってもおいしいやつ!」
何を食べたのか、その答えは今日ようやくわかりました。
「その血は……?」
「返り血もあるし私のもあるよ!」
「え!? じゃ、じゃあキララちゃん怪我してるの?」
「してないよ! まず、しないんだよ!」
……じゃあ何でキララちゃんの血が……。若干怖くなりました。
「へ、へぇ……。便利だね?」
「え? 雪撫ちゃんは違うの?」
「私は……ん~骨折は3日くらいかかるかも……。」
「へ~……、骨折って何~?」
「そ、そこから?」
ただひとまず、この語尾を延ばすしゃべり方こそキララちゃんだと私は安心した。
「いいな~……。私もそんな体だとよかったかな?」
「そうかもね~」
「キララちゃん、ちょっといい?」
「ん~?」
「手、出して?」
「何~?リストカット?」
「何でそんなに発想がグロテスクなの……。違うよ」
しかも、リストカットを知っているなら、骨折も知っているような気がしますが……。
「ん~?じゃあ何~?」
「目をつぶってて!」
「ん~……わかった~」
私は彼女の腕をまくり、そこに氷を吹きかけた。やっぱりこれは怪我としてとられないようです。
「冷たいよ~」
「も、もうちょっと!」
「ん~……。きもちよくて寝そ~……」
「はい、終わった!」
「ん~? え~? なにこれ~?」
私が彼女の腕にかけた氷は珍しいもので、皮膚につくと、すぐに解けて色だけつけるというものだった。
「amico intimo?」
「うん。人間界のイタリア語っていうので親友って意味なんだって!」
昔、母親に教えてもらった言葉です。
「親友~?」
「うん!」
「私が~? 雪撫ちゃんと~?」
「そうだよ!」
すると、キララちゃんは意地悪そうな顔で笑った。
「これでもし~、私がイヤだって言ったら~、雪撫ちゃん面白いほどの勘違いって事だよね~」
「あ……。そ、そしたらそれを消すよ!」
「でもまぁ~、私は雪撫ちゃん好きだし、いいよ~?」
「本当に!? よ、よかった……」
そして私たちは親友となった。
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