天空の妖界

水乃谷 アゲハ

曇りのち雪女

 人は、きっかけとの出会いによって変わるといわれている。それはどこにいっても同じであるし、これはよろずの生物に言えることである。ソースは生物の進化。
 進化というものは、環境によって起こる変化のことである。つまり、環境が変わればどんな人も変われるのである。
 この話は、そんな突然の出会いによって変わっていく話である。



 夏休み最終日、暑さもようやく抜けた頃、今にも降り出しそうな暗い空を見上げながら、俺は考え事をしていた。周囲には誰もいない。
 しばらくそうしていたが、結局いつものように答えには行き着かず、空を見上げ歩き出した。が、
「ん……?」
 そこで俺は、はたと足を止めた。
「何だ?あれ……」
 俺の目に映っていたものは、雪でも雨でもない、黒い塊を映していた。なんだありゃ……。
「……ん!?」
「ぁぁぁ!!!」
 そして、黒い塊の正体が女の子だと気づいた時には、もう彼女の顔は目の前にあった。ゴッという骨と骨がぶつかったような鈍い音が響き、俺は目の前が真っ暗になった。

「……のー。も、もしもーし……」
 そんな声が聞こえ、俺は目を開けた。
「やっと気づいた! だ、大丈夫ですか?」
 黒く長いツインテールに青い瞳、背丈は俺ぐらいの女の子がそこには立っていた。
「えーっと……?」
 俺はすぐにさっきのことを思い出す。すぐにぶつけた額のところを確認するが、特に何もなっていないようだ。よかった……。
「こっちは大丈夫。そっちはだいじょうぶですか?」
 そう聞くと、目の前の少女は笑顔で、
「大丈夫です。わざわざありがとうございます」
 そう言って立ち上がると、ホットパンツについた砂をパッパッと払う。そして、
「す、すいませんでしたぁ」
 といって立ち去ろうとする。何かコレで終わるのもなんだかなぁ~……と思い、
「あ、あのちょっと!」
 と、彼女を引き止める。
「はい?」
 立ち止まって聞き返されるが、何をいうかを全く考えていなかった。だから俺は、一番この場にふさわしいかつ、妥当な質問をした。
「な、何で空から降ってきたの……?」
「……」
 あれ……黙り込んじゃった……もしかして俺、変な質問した?
「わ、私は上の住人なので……」
「上……?」
 思わす、ピクッと俺の体が反応する。
「は、はい。私、コレでも妖怪なので、住処は上にあるんですよ……っていっても信じませんよね? こんな話」
「信じるに決まってるじゃん」
「そうですよね、信じるに決まって……決まってる?」
「うん。だって、俺らの学校はそういうところだから」
「え、えぇぇぇぇぇ!? じゃ、じゃあ陰陽……」
「師じゃないんだなぁ~。それとやる事は変わらないけどね」
「え?」
「いやさ、確かに俺らは妖怪を倒すための学校だけど、高校生の俺らにそんなしごとはやらしてもらえないからさ。一応、一人ひとり能力はあるよ?あるけど妖怪と戦えるのはその中の代表生徒だけなんだ」
「ってことは……敵じゃないですか! え、じゃあもしかして私逃げなきゃ……?」
「? ……何で?」
「あなたに滅されるから」
 もっともな意見だった。しかし俺は首を振る。
「あぁ、安心して。俺は滅さないし滅せない」
 それが俺のさっき悩んでいた理由だ。今の学校で俺の能力は使えない。しかしながら、どうしても妖界に行きたいのだ。
「え……?」 
「俺の能力は『 会話能力コミュニケーション 』と『 変身能力トランス 』しかもトランスの方は女になることしか出来ないからさ」
「ト、トランス? コミュニケーション?」
「ん……。そっか、そういっても分からないね。まぁ、簡単に言うと、今この場で君を倒せる力はないってこと」
「な、なるほど……」
「でも……」
「でも?」
 その言葉に雪女は半歩下がる。
「俺は君を助けよう」
「……え?」

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