引きこもりと探偵の事件簿

ノベルバユーザー149190

引きこもりと探偵の殺人事件 0

 街の路地裏、隅の方でひっそりと営まれているバー『永蔵』で、私はマスターにダーティ・マティーニを頼み、飲んでいた。
 この永蔵の2階は私の探偵事務所になっており、基本的に仕事の話はここでするようにしている。ここなら少ないながらも人目に触れるし、後から話した事をなかったことにもできない。
 そして、このバーを営んでいるのは、私の相棒の『永蔵俊之』。昼は良き相棒として、夜はいい酒を提供してくれるマスターとして、とても頼りになる男だ。今回の依頼ではかなり無茶をさせてしまった為、その分酒を飲む事を約束してしまった。酒は推理の時以外あまり飲まないようにしている(ただし接待の時は違う)が、今回は仕方ないだろう。下手すれば彼も、私も死んでいたのかもしれないのだから。
 ダーティ・マティーニを3杯飲み、酔いがまわり始めた頃。バーの扉が開かれる音がする。どうやら客が来たらしい。
 
 「お前が件の『探偵』か?」
 
 低い、威圧感のある声が背後から聞こえる。どうやら、今回の客はかなり強気の男らしい。やれやれ、こういうタイプの相手は苦手なんだがな。
 4杯目のマティーニを飲み干すと、男の方を向き、話しかける。
 
 「ああ、私があんたの探していた『探偵』だと思うよ」
 「ならば、話は早い」
 
 男は言うが早いか、懐から拳銃を取り出し、私の方に向ける。
 
 「この展開は予想していなかった。まさか、その道の人だとは思わなかったな」
 
 なんて、法螺を吹きつつ、目の前の男を観察する。白のスーツにハットと、清楚な格好した男は、この場所には合わない。それに、手に持つ銃もだ。静かで落ち着くバーに物騒な物を持ち込んで欲しくないな。
 銃に関してはド素人のため、男の持っている銃がなんなのかは分からないが、胸のバッチを見る限り、男は彩里さんところの者らしい。
 
 「彩里さんは元気かい?」
 「ああ、元気だ。貴様が死ねば、だが」
 「まだ私の仕業だと思っているのかい?この件に関してはしっかりと彩里組の事務所で話した筈だけど」
 「貴様が法螺を吹いただけだろう。そういうのが得意な奴だろう貴様は」
 「はぁ……」
 
 やれやれ、この人はまだ私がやったと思っているらしい。面倒だが、1から説明するか。
 
 「全く。全然話を聞いてなかったみたいだね。1から、じっくりと話してあげようじゃないか」
 「……」
 
 しかし、男は聞かず未だ銃を私に向ける。
 
 「まぁ、座りなさいな、殺すのは話してからでもいいでしょ?」
 「……いいだろう」
 
 男はそう言うと、私の隣に座る。と、私の脇腹に硬いものが押し付けられる。
 
 「……やれやれ、興奮すると節操がなくなる犬じゃあるまいし。そんな硬いものを押し付けられたら酒が不味くなるじゃないか」
 「貴様は信用出来んからな。話すと見せかけて不意打ちかけるかもしれん」
 「信用されてないなぁ……」
 
 やれやれ、全く。しょうがない、話し終わるまでは酒は飲まないでおこう。

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